BTSのMステ出演中止決まったのは「前日」。「反日制裁」「バカにされた」ファンたちは…

世界的な人気を誇る韓国のヒップホップボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」が、今日2018年11月9日に出演予定だったテレビ朝日「ミュージックステーション」の出演を見送られた。

テレビ朝日は、メンバーが過去に着用していた原爆の写真がプリントされたTシャツを問題視したという。

BTSの出演中止問題は国内だけでなく、CNN、BBCなど海外のメディアでも大きく報じられ、Tシャツのデザイナーが謝罪するなど波紋を呼んでいる。背景には、Twitterなどで拡散された彼らの出演への抗議があると見られるが、一方でBTSのファンたちからも……。

キャンセル連絡は前日、テレビ局に届く「様々なご意見」

BTS

BTSは11月7日に日本で新曲をリリースしており、オリコンデイリーランキングで1位を獲得。東京・渋谷のマルイには大きなポスターが。

撮影:西山里緒

テレビ朝日は今回の「出演見送り」の経緯について、ミュージックステーションのウェブサイトで、「以前にメンバーが着用されていたTシャツのデザインが波紋を呼んでいると一部で報道されており、番組としてその着用の意図をお尋ねするなど、 所属レコード会社と協議を進めてまいりました」と説明。

Business Insider Japanの取材に対して同社広報部は、「問題を把握したのは10月下旬」だという。協議の詳細については明らかにしなかったが、出演見送りの決定をしたのはテレビ朝日側だと回答した。

BTSの出演に関しては電話やメールで「様々なご意見が寄せられている」が、詳細については「従来お答えしておりません」との回答だった。

テレビ朝日と協議を進めていたユニバーサルミュージック広報によると、番組の出演中止について同社から連絡があったのは「前日の11月8日」だという。

Tシャツに関しては「音楽作品について取り扱いをしているため、アーティストに関するコメントはする立場にない」(ユニバーサルミュージック広報)。

今後の日本でのプロモーションについては「コンサートは主催者の判断なので、こちらから申し上げることはできないが、握手会は予定通り開催する予定。また、今後のイベントがキャンセルになる情報は特に入っていない」とのことだった。

「Mステ終わった」「テレ朝の反日制裁」

BTS

テレビ朝日が問題視したというBTSメンバーが着用したTシャツ。

出典:ourhistoryウェブサイト

BTSの出演見送りがミュージックステーションの番組ホームページで公表されると、Twitterには賛否両論が巻き起こった。まずはテレビ朝日の対応について。

映画・音楽ジャーナリストの宇野維正さんは「Mステ終わったな。マジで。さよなら」と一言。

「いや問題の種作ったのBTSだろ?w」というリプライに「この国のメインストリーム文化を取り巻くダサすぎる状況を変えてください。もう自分はお手上げです」と返信した。

「日本のテレビ局は、世界やネットの中で変わりゆく自分たちの立ち位置を考えた方がいいと思う」(脳科学者・茂木健一郎さん)

「そりゃ炎上する要素はあるとは思うけど、政治とマスコミの反応するトーンが1つしかないのがマジで恐ろしいね」(ジャーナリスト・津田大介さん)

そもそもの騒動の発端となったTシャツには、「PATRIOTISM(愛国)」「LIBERATION(解放)」「KOREA(韓国)」などの言葉と、原爆投下後のキノコ雲の写真があしらわれていた。

販売するウェブサイトには、日本統治からの解放を祝う韓国の記念日「光復節」を表現したものだという説明があったが、BTSの出演中止を受けて、デザイン事務所の代表が「原爆が投下され日本が無条件降伏したために韓国は解放されたという、歴史の順序を表現するものだった。反日感情と日本に対する報復などの意図はなかった」と謝罪する事態に(WoW!Korea・11月9日)。

『さよなら、韓流』などの著書がありK-POPなど韓国の文化に詳しい作家の北原みのりさんは、今回のテレビ朝日の決定を「安易な反日制裁」だと言う。

「大手メディアが一部の偏った声に過剰に反応し、判断基準の前例をつくってしまったことに危機感を感じます。そもそも光復節は韓国にとって帝国主義からの解放の象徴で民主主義の根幹なんです。原爆で亡くなった朝鮮人もたくさんいますし、あの写真は日本人への揶揄ではない。韓国サイドの歴史認識を知ろうともせず、すぐに反日だと反応するのは残念です」

ファンの声、届いてる?

BTS

BTSはアメリカの週間アルバムチャート「ビルボード200」で韓国人アーティストとして初めて1位を獲得した。

写真:Frazer Harrison/Getty Images

一方で、Tシャツに対しては批判の声も多い。

「広島出身です。怒りを覚えます」「長崎や広島をバカにされたような気がして残念です」

「先日広島へ行った、原爆ドーム見るときに、あの歴史の重さ一瞬で僕を襲いかかった。これはアメリカや日本や朝鮮のことだけではありません、全人類に関わることです。決してTシャツで冗談することではありません」(原文ママ)

日本のBTSファンたちも複雑だ。

多くのファンたちが心配していた、9月中旬から始まる東京、大阪、名古屋など4大ドームツアーについて、BTSの事務所側は韓国メディアに対し「ドームツアーは予定通りおこなう」と伝えている(WoW!Korea・11月9日)。

しかし問題が解決したわけではない。BTSのファン、通称「ARMY」たちに話を聞いた。日本のファンクラブ会員の40代の女性は言う。

「韓流ブームの浮き沈みを知っている世代としては日韓の歴史観の違いはすぐに埋められないのは織り込み済み。相手のすべてに賛同するわけではないけど、ヨン様が政治家が100年かかってもできないことを成し遂げたと言われているように、エンタメを通じて違いの距離が縮まってきたのは絶対的な事実です。瞬間的に煽ることに意味を見出している右寄りの人たちとは相容れないですね」

他のメディアが忖度し始めることを心配している人も多かった。

2011年にはフジテレビが韓流ドラマやK-POPを重視しすぎていると批判するデモが起きている。

「韓国のアイドルが『独島は我が領土』という歌を歌った後、テレビやラジオからK-POPが消えた時期もありました。同じようにBTSもテレビに出なくなったら悲しいです。女性アイドルグループTWICEは9人中3人が日本人。やっぱり日本人が入っていないと生き残れないのかな……」(女性・30代)

「ネットで騒いでいる人の声ばかりがメディアで強調されて、ファンの思いが伝わらないままテレビ出演キャンセルにまで発展してしまったのが悲しい」(女性・20代)

「アイドルと政治」について、思いを巡らせるファンも多かった。

「もう日本市場なんて価値がなくなってきてるはずだから、BTSが来なくなったらどうしてくれるのか!とヒヤヒヤです。アイドルが政治的な主張をできない日本の方がおかしいですよ」(女性・20代)

「少し前に、他の韓国アイドルが日本の“嫌韓”タレントの画像をSNSに投稿したと言われ炎上しました。どちらのウヨも水を差さないでほしい。こちらは日々の癒しがほしいだけなのに」(女性・30代)

若者、子ども、元慰安婦の女性たち……BTSのメッセージ

BTS

国連でスピーチするBTS。「どこから来て、どんな肌の色で、どんなジェンダーであってもあなた自身を語ってください」と呼びかけた。

Reuters/Caitlin Ochs

この出演中止問題は瞬く間に海を超えた。韓国のファンたちがつくった「#光復Tシャツ」のハッシュタグは、一時、韓国のTwitterでトレンド入りした。

「誇らしい。君のおかげで(私は光復節の)Tシャツを買うことに決めたし、多くの人が(このことを)知るきっかけになってすごく良かったと思う」

「品のない相手にはしっかり線引きをして後ろも振り返らないようにしなきゃ」

韓国のARMYは物言うファンとして知られる。9月に秋元康氏がBTSの歌詞を書き下ろすことに対してファンが猛反対し、撤回したことは日本でも話題になった。

アイドルが政治や社会を語ることがタブー視される韓国で、その閉塞感を打ち破り自身を愛することの大切さを歌ってきたのがBTSだ。

「防弾少年団」というグループ名の由来は、「10代・20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」という意味。

9月にアメリカの国連本部で「あなたの声を聞かせてください」と訴えたスピーチは世界で大きな話題を呼んだ。ユニセフとともに子どもに対する暴力の撲滅を目指して展開しているキャンペーン「Love Myself」は、この1年間で約1億5000万円の寄付を集めている。

メンバーは「マリーモンド」という元慰安婦の女性たちを支援するために若者が立ち上げた韓国ブランドの服やスマホケースを使っており、ファンクラブも同じような支援活動を行う市民団体に寄付を行っている。しかし、この取り組みも日本では批判を集めた。

前出の北原さんは言う。

「BTSはアメリカのビルボード・アルバムチャートでK-POPで初めて1位になったり世界的な人気がありますが、ファンが惹かれているのは彼らが与えてくれる『自己肯定感』や『哲学』です。『反日』という枠で雑に括らずに、彼らが何を大切にしているのかも、もっと知ってほしい」

(文・竹下郁子、西山里緒、取材協力・稲葉結衣)

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