スペイン、日本を抜いて世界一の長寿国へ ── その理由は?

スペインの老人

若い頃の写真を持つ102歳のマクシミヌス・サン・ミゲル。80歳でアマチュア演劇に目覚め、地元の劇に多数出演している。スペイン北部レオンの自宅近くの公園にて。

Andrea Comas/Reuters

スペインの平均寿命は2040年までに85.8歳となり、日本を抜いて世界一の長寿国となる見込み。

2007年にビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の支援を得て設立された保健指標評価研究所(IHME:Institute for Health Metrics and Evaluation)のレポートによると、日本2位に後退する。平均寿命は85.7歳。

レポートは各国の順位の理由は示していないが、250の要因に基づいてランキングを作成。研究者は、高血圧、喫煙率、水の安全性と下水処理、大気汚染、子どもの栄養失調などを調査した。

スペインは2040年までに平均寿命が85歳を超える4カ国の1つとなった。

海外駐在員向けサイトのエクスパティカ(Expatica)によると、スペインはGDPの約10%をヘルスケアに投じている。また、世界のヘルスケア・システムのランキングでも高く評価されている。例えば、世界経済フォーラムの2018年世界競争力レポートでは、スペインは世界で最も健康な国とされた

スペインの人々が長生きする理由を見てみよう。

スペインは地中海料理(Mediterranean diet)で有名、長寿の主な理由に食事をあげる人もいる。

スペインの鮮魚店

スペイン・バルセロナの鮮魚店。客に渡す魚を切る。

Emilio Morenatti/AP

マドリードの市場で47年間、果物や野菜を売る店を開いているフェルナンド・デ・ラ・フエンテは、研究者がスペイン人の食生活と長寿を結び付けたとしても驚かないとガーディアンに語った。

彼は、スペインの人々は果物、野菜、魚などを一年中食べており、良い食生活を送っていると述べた。果物と野菜はどちらもスペイン全土で手に入れやすく、価格も手頃。

「果物と野菜のないスペイン料理は考えられない」

野菜、魚、オリーブオイル、ナッツ、全粒穀物を多く取り、加工食品と肉をあまり食べない地中海料理は、アンチエイジングに有効というエビデンスが次々と出てきている。

心臓病、糖尿病、ある種のがんのリスクは、地中海料理を食べていると減らすことができることを複数の研究は示した。また地中海料理は、認知能力を高め、認知症のリスクを減らす効果があると見られている健康に良い脂肪分を豊富に含んでいる。

素晴らしいヘルスケア・システムも整備されている。

病院の入り口に集まった人々

病院の妊婦用救急センターの入り口に集まった人々。スペイン・バルセロナ、2016年7月25日。

Albert Gea/Reuters

スペインのヘルスケア・システムは、世界でも最高のものとされている。

すべてのスペイン人は、国のヘルスケア・システムを利用できることが憲法で保証されており、民間の健康保険に加入している人は20%以下に留まる。

家族を大切にする結び付きの強い国でもある。

バルセロナの年金生活者

銀行の窓枠に座る年金生活者。スペイン・マラガの繁華街、2018年6月7日。

Jon Nazca/Reuters

老化の研究を行っているスペイン国立研究評議会のアントニオ・アベラン氏は、社会的な関係が強いことはスペイン人の長寿に大きな役割を果たしているとガーディアンに語った。

家族を重視する地中海の国はスペインだけではないが、アベラン氏は親族と近しいことが健康に大きく関わっていると述べた。

「それだけが重要なわけではなく、最重要項目でもないが、スペインと他の国々の違いの一部を説明できると考えている」とアベラン氏。

「ボーナス。良い人生を送れば、長生きできる」

アメリカなど他国に比べて飲酒量は多い。だが長寿ランキングに影響しなかった。

ワインを手に取る男性

ワインショップでワインを手に取る男性。スペイン・マドリード、2017年6月20日。

Juan Medina/Reuters

日刊紙エル・パイスによると、スペイン人の1年間の飲酒量は平均2.96ガロン(約11.2リットル)。世界平均の1.64ガロン(約6.2リットル)のほぼ2倍で、ヨーロッパ平均の2.88ガロン(約10.9リットル)も上回っている。

平均飲酒量は多いが、まったくお酒を飲まない人は人口の31%にのぼる。

適度に飲酒する人は、まったく飲まない人に比べて長生きする可能性があるという研究もある。

だが、アルコールの摂取は脳へのダメージ、肝疾患、各種のがんと関係しているとする研究は多い。1週間の適量よりも1杯多く飲酒するごとに、寿命が30分短くなるという研究もある。

スペインは世界一の長寿国となる予測だが、喫煙を減らせば、さらに寿命が延びる可能性がある。

マドリードを歩く女性

たばこメーカー、アルタディスのオフィスの前を通り過ぎる女性。スペイン・マドリードで、20007年3月。

Paul White/AP

2011年、バーやレストランでの喫煙を禁止する法案が成立したが、喫煙する人は多い。

エル・パイスによると2011年以降、子どものぜんそくは減少傾向にあり、今後、心臓や肺の疾患は減少する可能性もある。

だが、たばこアトラス(Tabacco Atlas)によると、スペイン人の年間平均喫煙数は1499本。例えば、553本のノルウェーなどの国々を大きく上回っている。

しかし、日本よりは少ない。日本での年間平均喫煙数は1583本。


[原文:People in Spain will soon have the longest lifespans of anyone in the world — here are their secrets

(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)

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