iPhone越えは目前。世界シェア2位ファーウェイ「Mate20」の自信、期待と不安

Mate 20シリーズ

日本でも例年最新機種が発売されてきたファーウェイの大型ハイエンド機「Mateシリーズ」が発表になった。

10月、イギリス・ロンドンでフラグシップスマートフォンのシリーズである「Mate 20」を発表したファーウェイ。

Mate 20は全モデルが高性能な最新の自社製チップセット「Kirin 980」を搭載しているのが特徴だ。

同社は今年に入ってから「P20」「nova 3」など高性能機を次々と発表しており、一部のモデルは日本でも発売されている。今回のMate 20シリーズのいずれかは、日本市場へ投入される見込みは高い。

世界シェア2位のファーウェイが考える世界戦略とは何か?

iPhoneやGalaxyを超えたカメラ機能とバッテリー

Huawei リチャード・ユー

Mate 20シリーズを発表したリチャード・ユー氏。

Mate 20の発表会に登壇したファーウェイのコンシューマービジネスグループのCEO、リチャード・ユー氏は、Mate 20の新機能を伝える際、老舗カメラメーカー・ライカとコラボレーションした、「望遠」「広角」「超広角」というトリプルカメラの搭載を重点的に紹介した。

アップルの「iPhone XS」やサムスンの「Galaxy Note9」との比較例も多く、カメラ機能が突出して優れていることを大きくアピールした。

その口ぶりから感じられたのは「ライバルはiPhone」ではなく、「我々はもうiPhoneを超えた」という自信にあふれるものだった。

すでに今年春に発表した「P20 Pro」(日本ではドコモから発売)のカメラでは、「見えないものまで写してしまう」ほど強力な夜景モードを搭載しており、これにはiPhoneもGalaxyも敵わない。

さらに、16mmと従来機よりさらにワイドになった超広角レンズは室内から屋外まであらゆるシーンで活用できる。ファーウェイのスマートフォンのカメラ性能は、いまや業界をけん引するほど高性能と言える。

Mate 20の背面

Mate 20 Proの背面カメラには、4000万画素・F値1.8のメインレンズカメラ、2000万画素の超広角レンズカメラ、800万画素の望遠レンズカメラの3つを搭載する。

とはいえ、単純に「機能満載のスペック重視なスマートフォン」ではないのがMate 20シリーズの本当の姿だ。

バッテリー容量は最上位モデルとなる「Mate 20 Pro」が4200mAh、その下のメインモデルとなる「Mate 20」が4000mAh、7.2インチディスプレーの巨大端末である「Mate 20 X」は5000mAhもある。

Kirin 980の省電力効果もあり駆動時間は大きく伸びているが、それだけではなく40Wという大容量の急速充電に対応し、30分で70%のバッテリー充電が可能だ。

Mate 20シリーズ比較

写真左が超大型モデルの「Mate 20 X」、「Mate 20 Pro」。

スマートフォンがどんなに高速であろうとも、バッテリーの持ちが悪く、充電に時間がかかるようではユーザー満足度は下がってしまう。ファーウェイの製品発表会ではバッテリー周りの話は毎回しっかりと数値を出して説明がされ、iPhoneとの比較も行われてきた。これは自社製品の優位性のアピールというよりも、iPhoneユーザーの不満の声をそのまま代弁している。

iPhoneユーザーをファーウェイ製品に乗り換えさせるのは簡単ではない。しかし、「カメラ」「バッテリー」そして「AI機能」など、Mate 20シリーズはiPhone XSシリーズを超えた部分が多い。

「色眼鏡なしにファーウェイ製品を触って、結論はそれから出してほしい」。プレゼンを熱弁するユーCEOの表情にはそんな感情も隠されているように感じられた。

王者・サムスンに挑むため「ブランド力」を強化

Mate 20 RS

Mate 20シリーズのポルシェデザインとのコラボモデル「Mate 20 RS」。以前から続けている、ブランド強化のための高級端末シリーズだ。

アップルを超えようとしているその先にファーウェイが狙っている目標は、もちろん、シェア1位のサムスンを抜くことだ。

ガートナーの調査によると、2018年第2四半期にファーウェイは約4985万台のスマートフォンを販売し、約4472万台に留まったアップルを抜いて世界シェア2位に躍り出た。

スマホメーカー販売台数

ガートナー調べの数値をグラフ化。ファーウェイは2018年第2四半期に販売台数ベースでiPhoneを超えた。

作成:Business Insider Japan

この原因は、ガートナー発表の四半期ごとの販売台数の推移を見る限り、アップルの好不調抜きにファーウェイが着実に力をつけてきた結果だと考えられる。

これに対し、サムスンは約7234万台で依然差はあるものの、ファーウェイとの差は約2249万台。世界1位の座はまだ遠いが、アップルを500万台上回ったことでようやくイメージできるものになってきた。

iPhone XS Max

日本で発売中の「iPhone XS Max」。

撮影:伊藤有

とはいえ、アップルもAI機能の強化などで新製品の魅力を大きく引き上げ、カメラ機能の性能も大きく高めている。

年間のスマートフォン販売台数を比べると、アップルがサムスンを抜く可能性があるのは第4四半期だけで、通年では圧倒的にサムスンが強い。

つまり、アップルはそもそもスマートフォンシェア1位を目指すつもりはない。

とはいえ、下から追い上げてきたファーウェイはシェアの点では驚異だから、「既存ユーザーのiPhone離れ」を防ごうと、今まで以上に機能やユーザー体験を高めてくることは間違いないだろう。

ファーウェイが抱える無視できない3つの「弱点」

だが、ファーウェイにも決して隙がないわけではない。いくつか考えられる、今後のウィークポイントをみていこう。

弱点その1 新たなメモリーカード規格

NM カード

公式サイトによると、例えばMate 20 Proは最大256GBのNMカードで容量を拡張できる。

出典:ファーウェイ

例えば、今回のMate 20シリーズには業界初となる新しいメモリカード規格「NMカード」を採用している。メモリカードの独自規格は過去にソニーが「メモリースティック」で失敗したように、技術的優位性だけでは市場からの支持は受けられない。

NMカードはスマートフォンの通信に必要なナノSIMカードと同じサイズとなっており、スマートフォンのさらなる小型化を実現できる画期的な規格だ。

しかし、ファーウェイ以外のメーカーの採用は未定なうえに、肝心のMate 20シリーズ本体の販売が始まっているにもかかわらず、まだ市販されていない。

Mate 20シリーズは4モデルとも、本体ストレージ容量は128GBからとなっている。多くのユーザーはこれで十分だろうから、NMカードを別途買う必要性を感じられないかもしれない。NMカードは発表されたものの、普及せず短命で終わる可能性も十分ある

弱点その2 後続の追い上げ激しいカメラ機能

OPPO FIND X

写真は11月9日に発売となったOPPOの「Find X」。カメラ機能などでは同じ中国の強力なライバルが日本に上陸している。

撮影:小林優多郎

また、ファーウェイの誇るカメラ機能も、すでに同じ中国の他社のスマートフォンが必要十分な性能を有し、しかも本体価格が安価なモデルを数多く出している。

2018年に日本市場に参入し、ファーウェイを追いかけるOPPOが10月30日に日本で発表した「R17 Neo」は3万円台の価格にもかかわらず、「A.I.デュアルカメラ」と呼ばれる1600万画素と200万画素の背面カメラを搭載し、フロントにはセルフィーに強い2500万画素カメラを採用した。

Mate 20シリーズはカメラだけではなく高速CPUやAI機能でより高度な性能を持っているが、価格は10万円を超える。カメラ機能はより優れているものの、TwitterやインスタグラムなどのSNSネイティブなユーザーにとっては、そこまで高価なスマートフォンは不要に見えてしまうかもしれない。

弱点その3 アメリカ市場からの排除と規制の強まり

5G

日本でも2019年に法人向け、2020年に個人向けの5Gサービスの展開が予定されている。

撮影:小林優多郎

そして、ファーウェイがなかなか参入できないアメリカ市場の動向もウィークポイントだ。アメリカ市場を抜きに世界シェア3位の販売数になったファーウェイの強さは多くの業界関係者が認めるものだ。

だが、ここへきて安全保障上の観点からアメリカやオーストラリアなど一部の国で、ファーウェイを含む中国の通信機器大手について、懸念の声が強まってきた。一方、カナダでは、調達を避けなくとも良いという声も上がっている。

8月末の産経新聞の報道によると、日本政府は次世代通信5Gの機器調達に関して、中国企業の採用は「諸外国の動向を注視する」(野田聖子 前総務相)という立場だ。

事態の推移を見守る必要はあるが、こうした各国政府主導の「中国メーカー排除」の動きがより強まることがあれば、ファーウェイの業績も影響を受けるだろう。

膠着した状況を前進させる鍵は「5G」

通信業界では2019年から高速な通信規格「5G」の展開が始まり、2020年の東京オリンピック開催のころには5Gを活かした新サービスが次々と生まれることになる。

ファーウェイが目新しい新製品を一気に4機種も投入したのは、来たるべき5G時代を見据えた動きでもある。一方、一連の安全保障議論の盛り上がりは、先進国の通信機器刷新タイミングでの政治的駆け引きの側面もあるだろう。

5Gの本格化は、良くも悪くもこの状況を何らかの形で前進させる。ファーウェイがこのまま勢いを保ち続けるのか、政治に巻き込まれ成長のスピードを鈍化させるのか。今後数年の舵取りは、ファーウェイにとって重要な意味を持つことになるのは間違いない。

(文、撮影・山根康宏)


山根康宏:1964年北海道生まれ。香港在住。携帯電話研究家として世界の携帯電話市場を追いかけている。海外取材日数は年の半数以上。渡航先では必ず端末を買い、収集した携帯電話の数が1500台を超えるコレクターでもある。

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