失敗するにも方法がある。「許す文化」サイバーエージェントで、私がどん底から飛躍した理由

会社で新しい事業に挑戦してみたいが、失敗するのはもちろん嫌だ。キャリアにだって響くかもしれない。

しかし、そうやって何も取り組みを始めないままでいることは、これからの変化の時代においては、個人にとっても、会社にとっても、最も不幸なことかもしれません。

では、一歩踏み出すためにはどうすればいいか。そこで考えたのが「許され力」という新しいスキルです。失敗をおそれて何も始めないくらいなら、失敗したとき許され、セカンドチャンスをもらえる人になればいい。そんな、許され力の磨き方を深掘りします。

お話を伺うのは、「失敗を許容する文化」を明文化し、失敗した社員に次なる挑戦の機会を与えることで知られるサイバーエージェント、同社の中でもひときわ大きな失敗を経て、躍進を果たした人物、サイバーエージェントニューヨーク代表取締役社長の岡田寿代さんです。

サイバーエージェントニューヨークの代表取締役社長の岡田寿代さん

若干26歳、入社3年目で社長に就任した子会社が解散。人気サービスは停止という憂き目にあうも、その2年後、同社のグローバルビジネスを担う重要ポストに就いて活躍する彼女に、許され方、そして失敗を許す組織づくりについて聞きました。

PROFILE

岡田寿代:株式会社サイバーエージェント グローバル本部

2008年に新卒入社。インターネット広告事業本部でアカウントプランナーとして従事、翌年マネージャーに昇格。2010年に株式会社プーペガール(2012年解散)の社長に就任。2012年にインターネット広告事業本部でスマートフォンの新規事業を立ち上げ。自社広告のセールス部門の責任者に就任し、アプリ事業者向けの広告事業を展開。2014年に海外事業部を設立。ニューヨークを拠点にインターネット広告事業を展開している。

3年目で社長に抜擢も「味方はひとりもいなかった」

——広報の方に「サイバーエージェントの中でひときわ、チャレンジし大きな失敗を経て、今活躍している方は?」とお尋ねしたところ、岡田さんを推薦いただきました。

少し複雑ですけど、ありがとうございます(苦笑)。

でも、そうかもしれませんね。私の場合、20代前半から漠然と「30歳になったら人生が変わる」と思っていたから、全部逆算して行動していたんです。2008年に入社して、1年で営業として成績を残して、2年目にマネジャーになって、マネジメントの経験を積む。そして3年目から新規事業開発に取り組んで、5年くらいかけて成功させたら、30歳だ、と。そのあたりでライフステージも変わってくるだろうし、独立も視野に入ってくるかな……みたいな。

だから、1年目からとにかく成果を上げること、手を挙げることが重要だと思っていましたし、常々ブログで発信したり、上司に直談判したり、どんどん行動していました。そして実際、営業としても、マネジャーとしても結果を出して、3年目の2010年にファッションコミュニティサイトを運営する子会社、プーペガールの社長に抜擢されたんです。

——まさに、有言実行。

プーペガールは私が参画する前、すでに2007年から始まっていた事業で、立ち上げから関わっていたスタッフも多くいました。副社長、取締役はもちろん年上ですし、私が学生アルバイトだった時にトレーナーを務めていた方が部下になったんです。正直なところ、「なんで岡田が社長なんだ」って思われてもおかしくなかったかもしれない。

でも、私が抜擢されたのはやはり、「コミット力」を評価してもらっているからだろうと思ったんです。それで、いかに事業として売上を伸ばしていくか、就任してすぐ、会社全体に対してビジョンプレゼンを行ったんです。それは、プーぺガールを携帯ゲーム化してマネタイズする構想でした。

すると、元からいたメンバーに大反発されました。「プーぺガールって、そういうんじゃないんです」って。

——当時、プーペガールはユーザーの98%が女性で、独特の世界観があり、熱狂的なファンが数多くいましたよね。

そうなんです。私が就任した時には、すでにその世界観はできあがっていて、会社のメンバーは「ユーザーさんにいかに楽しんでもらうか」を常に考えていました。でも私自身はそれまで、インターネット広告の営業として働いてきて「いかにマネタイズするか」という意識が強かった。メディアの作り方や考え方が理解できていなかったんです。

あくまで事業ですから、売り上げを伸ばしていかないといけないですよね。ただ、今になって思えば他にもやり方はあったんです。まずはもっとユーザーを増やして、サービスを大きくしてからマネタイズを考える、とか。私があまりに意気込みすぎた部分もあったかもしれません。結果を急ぐわりに、メディア運営の方法がまったく分かっていなかった。

古くからいるメンバーには「あなたの方向性にはついていけません」って言われて。細かい実務も最初はよく分からないので、新卒の子に「これってどうすればいいの?」と聞いていると、「なんで私が社長にそんなことまで教えないといけないんですか。前の社長はすべて分かっていました。それを私が社長に教えないといけないとなると、私が成長できません」と言われて。

——それはきついですね……

決定的だったのは、社長になって1カ月くらいのときかな。会議室に呼ばれると、クリエイター、プロデューサー10人くらいがズラッと並んでいて。「寿代さんのやり方にはついていけません」って、ひとりずつ泣きながら言われて、2時間ただただずっと「うん」「そうだね」って、反論もせずに聞く、という……。

——胃が痛くなりそうです……

かと言って、私も泣くわけにはいきませんし、もう頭がどうにかなりそうで。味方はひとりもいませんでしたね。

唯一、相談できたのは、プーペガールに来る前に上司だった人が当時大阪支社で人事を務めていて、その人に電話で「もう限界です……」と話して。それで、取締役人事統括の曽山経由で、社長の藤田に話が届いて、「岡田の会社だから、ゼロから組織をつくり直すくらいの気持ちでやり直せばいい」と言ってもらえて。それで、チームの半分くらいはメンバーが変わったんです。

あのころの私に足りなかったのは、みんながどう思っているのかを考える、ということ。もっと対話をして、お互いにコミュニケーションを取れていたら、あんなことにはならなかっただろうな、と思います。当時は「新しい事業の柱を作って、売上を伸ばさなきゃ」ということばかり。そりゃ、「こんな人にまかせたくない」と反発されるのも当たり前ですよね。あのころは一気にいろんなところで自分の未熟さが表に出てしまって……。

結局、プーペガールはアメーバブログの事業として巻き取ってもらい(※2015年にサービス終了)、会社としては2012年に解散しました。

——それまで順風満帆だった岡田さんにとっては、大きな挫折だったのでは?

そうですね。営業からメディア事業に転身したけれど、営業時代のころのような自信もなければ、プーぺガールへの熱狂や情熱も足りなかったなと、今振り返ると思います。

自分自身が得意なのは、すでにあるものをスケールさせるより、顧客を新規開拓するとか、ゼロからイチをつくることだな、とその時あらためて実感したんです。広告事業のほうが圧倒的に自信もある。それなら、また新しいところでチャレンジさせてもらったほうが、会社にも貢献できると思い、「あした会議」という全社の経営会議でもそう伝えて、受け入れてもらいました。

サイバーエージェントニューヨークの代表取締役社長の岡田寿代さん

「許される失敗」と「許されない失敗」の境界はどこに

——その挫折を経て、岡田さんは今どんなことに取り組んでいるのですか。

プーペガールの後はスマートフォン広告事業の立ち上げに関わっていたんですが、その中で想像以上に海外企業からのニーズがあるなと感じていたんです。ちょうどそのころ、サイバーエージェントとしても海外の広告事業を広げていこうという方向性になって。

そこで、上司から話をもらって、2014年から海外事業部の立ち上げと、その責任者を務めることになりました。アメリカや韓国、中国などの企業が日本でサービスを展開する際、「日本のマーケットを理解したインターネット広告会社」として、サイバーエージェントを選んでもらえるよう、クライアントを開拓しています。

ただ、日本ではブランド力がありますが、特にアメリカでは、「サイバーエージェントって、どこの会社?」という状態からプレゼンしなくてはなりません。しかも、多くの会社がインハウスでインターネットマーケティングを行っているので、本当に難しいんです。でも、私の強みは自分がこれだと思えたことに対しての「突破力」「粘り強さ」だと思っているんですね。

岡田寿代さん。ニューヨークにて

ニューヨークで奮闘する岡田さん。

——「突破力」というと?

「あきらめが悪い」というか(笑)。この企業と取引したいと思えば、どんな手段を使ってでもまずは会う方法を考え、とにかく行動します。事前に会えた時に向けて徹底的にシミュレーションし、実際に会えた時にはいかにすばやく相手の引き出しを開け、“まさにそうなんだよね” と思ってもらえることを伝える。その一瞬一瞬の機会にとにかく全力を注ぎます。

ただ、もちろん一度や二度では知らない会社に対して興味を持ち続けてもらうことは難しいので、「こいつの話なら、また聞いてみても良いかな」と思ってもらえるようなサプライズや価値を提供するよう工夫したり、いろんな角度からアプローチをし続けたりすることで必ず形にしてきました。

それと、自分一人では大きな成果は出せない、「あきらめないチーム」をつくることが組織の成果を最大化させるための条件だと考え、国を超えてもその考えは一貫し、浸透させるコミュニケーションを心がけていました。

そうやって、実際にこれまで取引のなかったクライアントとの取引をチームで形にし、グローバル事業開始から3年目で数百億円という規模にまで拡大することができました。そうした背景もあり、2017年度には執行役員にも選んでいただいたと思っています。

——大きな失敗をしたにも関わらず、再び挑戦の機会を得ることができたのは、なぜだとお考えですか。

そもそも会社のミッションステートメントに「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」というものがあって、サイバーエージェントには失敗した人にも挑戦をさせてくれるカルチャーがあるんです。

ただ、個人の考えとしては、失敗するにも方法があると思うんですね。「やってみましたけど、失敗でした」ではダメなんです。考え尽くしたこと、他の人がやらないことをすべて全力でやりきっていて、「そこまでやってもダメなんだったら、誰がやってもムリだよね」と思って許してもらえるほど、手を抜かずにやっているかどうか、だと思います。

しかもそれは、自分ひとりだけでやっていても意味がありません。自分が頑張るのは当たり前、それをチームとして全員が熱狂してやりきれているかどうか、ということです。

岡田寿代さん

——チーム全体で「熱狂」するためにはどうしているのですか。

単純なところでいうと、チームの目標を可視化するのって意外と大事なんですよ。「この期日までにこの数字を目指す」など、チームが今目指している大目標を全員が常に理解している状態にする。

そのために、目標をできるだけシンプルに、かつ自分ゴト化してもらえるようにと意識していました。みんなで一緒に撮影した集合写真や半期のスローガン、目標をポスターなどにして、部屋に貼ったり。

「チーム力」は本当、大前提になるんですよね。同じ方向を向いて、同じ熱量でやり尽くしてはじめて、失敗しても許される。チームでしっかりと合意形成できていれば、「あの人のせいだ。あの人がこんなことを言ったから失敗した」みたいなコミュニケーションにはならないじゃないですか。

岡田寿代 ニューヨーク支部

ニューヨーク支社のチームの皆さん。

——そのチームの熱狂が経営陣にも伝わっているからこそ、セカンドチャンスをもらえるんですよね。そういう意味で、上司とのコミュニケーションではどんなことを心がけていますか。

プロセスの中でも、うまくいったことだけを伝えるのではなく、どういう失敗があったのか、それに対してどう検証して、次はどんなことをしようと考えているのか、悪いこともなんでも包み隠さず伝えること。そうすれば、上司にとっても判断材料になります。

「失敗」って必ずしも失敗ではない、失敗は次に活かせる経験になります。あまりに同じような失敗が何度も続くのは問題かもしれないけど、初めてのことで失敗したのならそれを隠さずきちんとシェアする。自分が事業をまかされているなら、上司の顔色をうかがったり取り繕ったりする必要はないはずじゃないですか。

もし失敗して、上司から「どうするつもりなんだ」と尋ねられたら、自分の考えを述べた上で、「逆に〇〇さん(上司)はこの考えに対してどう思いますか?」って尋ね返すと思います。そこで何も出てこなかったら、それ以上アイデアはないってことだし、もし上司に何か考えがあるなら、「分かりました。それも試してみるので、もう少し時間をください」と準備して実行した上で、納得してもらえるように努力する。それもコンセンサスの取り方の一つです。

失敗を許す組織は「人の成長=組織の成長」と信じている

——会社として組織として、失敗を許容する文化を醸成するには、どうすればいいでしょうか。

今の時代、新しいことをやっていかないと、もはや企業としてやっていけないじゃないですか。商社もメーカーもどんどん新しい事業に投資していますし、あのトヨタだって電気自動車や自動運転技術の開発など新しい領域に手を伸ばしている。何もしていないのに安定的に継続できている会社なんて、どこにもありませんよね。

そうなると、経営者の意志や覚悟が問われてくるんでしょうけど……サイバーエージェントの場合、優秀な若手人材を増やすことが明確に会社の成長へつながると考えているので、失敗することも含めて挑戦する経験そのものを大切にしているんですよね。

抜擢するときにも、能力やスキルというより、人で決めるんです。私も海外事業をまかされたとき、「単に英語が話せる人よりも、英語が話せなかったとしても事業をなんとか成功させようと粘り強く頑張れる人のほうがいい」と言われました。それだけ、やってやろうという意志を持っているかどうか。

普通、新規事業立ち上げの時って、その分野に明るい人を配属することが多いと思うのですが、サイバーエージェントは新しい事業だからこそ、他の分野でも挑戦している人をアサインする。それこそ、「この人がやってダメだったら、どうやってもダメだろう」と、組織レベルで考えてやっている、ということだと思います。

サイバーエージェントのロゴ

——とはいえ、多くの経営者や管理職からすると、少しでも失敗を避けたいと思うところ。それでも挑戦しようと思えるようになるためには、どうすればいいでしょうか。

成功するために必要なことって、やってみてはじめて、分かってくるわけです。だから、「もうこれでダメかもしれない」みたいなフェーズから立ち直って、底力で伸びた会社や事業ってたくさんあるじゃないですか。

それってつまり、場当たり的に失敗しているわけではなく、考え抜いたことをやり切って、一つひとつ検証して改善につなげて、さらに「これだけ考え抜いたことをやり切った」と一人ひとりが腹落ちして言えるかどうか。そしてそれを自分一人だけでなく、組織やチームメンバーとも共有しているからだと思うんです。

これはよく私もやっていることなんですが、メンバー全員がPLレベルで今どれだけ赤字で、どれくらい稼がないといけないのか、赤裸々に共有する。それで、「もしこれを会社のお金じゃなくて自己資金でやろうと思ったら、どうする?」って真剣に考えてもらい、戦略を立てるんです。

なんだかんだで会社って安定してるので、なかなかいち社員が経営者視点になることは難しいですが、そうやって本気で考えたり、ベンチャー企業でハングリーに働いている人と会う機会を設けたりすると、少なくとも視野は変わってくるはず。自分たちが当たり前に給料がもらえて、当たり前にチャレンジできる機会が与えられていることがどれだけありがたいことなのか、気づくことができるんです。

そういう人たちが集まってチームとして動けるようになれば、事業の成功確率も上がってくると思います。事業って結局、チームづくりなんです。どんなにその分野に長けた専門家でも、「自分が、自分が」という感じの人が上に立つとなかなか思うように事業は伸びていかない。事業に対する責任はしっかり持ちながらも、やはり人を大切にできる人が事業を成功させることができるな、と感じます。

……とか言って、結局私も最初はそれで失敗しましたからね(苦笑)。しっかりとした事業計画を立てて、着実にPDCAサイクルを回していけば、絶対うまくいくと思ってました。でもそこで失敗したからこそ、今こうしていられるんだと思います。

——もともと「30歳で独立」と考えていたとおっしゃっていましたが、その夢は?

昔は「社長になること」がゴールだったんです。でも実際やってみて思ったのは、ひとりではうまくいかないんだな、って。

今取り組んでいる海外事業でも、メンバーたちが優秀で、本当に支えられています。彼らと一緒にチームとして仕事をするからこそ、世の中に大きなインパクトを与えることができる。だから今は、みんなと一緒にこれまでできなかったことに粘り強くチャレンジしながら、大きな成果を残す。これが、今の私にとっての夢かな、と思っています。

岡田寿代さん

(取材・文、大矢幸世、岡徳之、撮影・ 伊藤圭)

"未来を変える"プロジェクトから転載(2018年10月24日公開の記事)

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