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- アップルのソフトウエアエンジニアリング担当上級副社長クレイグ・フェデリギ氏は、タッチスクリーンを備えたMacは登場するのかと聞かれた際、ワイアードに興味深い回答を行った。
- 「人間工学的にはMacを使う時には、両手はPCの上に置かれており、画面をタッチするために腕を上げることはかなり疲れる動作だと我々は認識している」と同氏は答えた。
- フェデリギ氏の回答は、意図せず、iPadがノートPCやデスクトップPCの優れた代替品ではない理由を解き明かした。
クレイグ・フェデリギ(Craig Federighi)氏は、アップルの2つの代表的ソフトウエア製品、iOSとMacOSの責任者。いろいろな意味で同氏はアップルのソフトウエアの顔だ。
2018年6月に行われたアップルの開発者向け会議「WWDC2018」の基調講演を振り返ってみても、同氏はスターだった。フェデリギ氏は130分の基調講演の約半分、55分も使ってプレゼンテーションを行った。
基調講演の後、プレゼンテーションで触れられたアップルの計画について、ワイアード(Wired)のローレン・ゴード(Lauren Goode)氏はフェデリギ氏に質問した。
その際、興味深い回答が飛び出した(太字は編集部による)。
「MacOSに移植されるiOSアプリは、そのままタッチスクリーンを備えたMacの前触れとなるのかと質問した際、フェデリギ氏はPCに『タッチスクリーンは導入しない』、今後もそれはないだろうと語った。
『人間工学的にはMacを使う時には、両手はPCの上に置かれており、画面をタッチするために腕を上げることはかなり疲れる動作だと我々は認識している』と同氏は答えた」
ここで興味深いことは、フェデリギ氏が「画面をタッチするために腕を上げることはかなり疲れる動作」とタッチスクリーンPCにマイナスの評価を下しつつ、意図せず、iPadがノートPCやデスクトップPCの優れた代替品ではない理由を解説したことだ。
フェデリギ氏は上記では明らかにMacについて話をしているが、基本的に「Macを使う」を「仕事をする」に言い換えても、意味が通る。
アップルはユーザーにiPadやiPad Proで仕事をしてほしいと考えている。だが、そのためにはフェデリギ氏が言うように「画面をタッチするために腕を上げ」なければならない。
アップルペンシルとスマートキーボードを付けても、入力の際には画面へのタッチが必要になる。
ここ数年、アップルはiPadを単に読書や動画の視聴といった受動的な活動以上のことに使うというアイデアを推し進めている。
そしてもちろん、アップルの「What's A Computer?」というiPadの広告を覚えているだろう。
Apple
広告の最後で、隣人は芝生の上でスマートカバーで立てたiPadを使う少女に対して、「コンピューターで何をしてるの?(Whatcha doing on your computer?)」と尋ねる。少女は「コンピューターって何?(What's a computer?)」と答える。
たとえ、アップルが正確に語っていないとしても、同社がiPadを単に大きく、かわいい端末と考えてほしくないことは明らか。
iPadで仕事ができることを知ってほしい ── それもリアルな仕事が。そして、コストもノートPCと同じくらいかかる。新しいiPad Proは、構成によってはMacBook Pro並の価格になる。
ただし、フェデリギ氏自身は「画面をタッチするために腕を上げることはかなり疲れる動作」と述べただけだ。
おそらくどちらも間違いではない。iPadはおそらくリアルな仕事ができるが、しばらくすると疲れてくる。
アップルがiPadでマウスとトラックパッドを使えるようにするだけで、それはノートPCの真の代替品になる可能性がある。
だが現時点では仕事のためにiPadを購入することは、スクリーンをタッチするために、何度も腕を上げることを意味する。
(翻訳:一柳優心、編集:増田隆幸)