“嫌韓派”スピーチと反ヘイトが激突。厳戒のBTS東京ドームツアー、メンバーの言葉にファンは涙、安心…

BTSライブ

韓国発の世界的アイドルグループ「BTS(防弾少年団)」が11月13日、東京ドームでコンサートを行った。

BTSは、原爆投下時の様子があしらわれたTシャツを着ていたことが問題視され、前週の11月9日に予定されていたテレビ朝日「ミュージックステーション」への出演が前日に中止になったこともあり、大きな話題を集めていた。当日の会場はどんな様子だったのか、現地を取材した。

参考記事:BTSのMステ出演中止決まったのは「前日」。「反日制裁」「バカにされた」ファンたちは…

ファンはメディアに対してピリピリ

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会場周辺には、メディアの姿が目立った。

午後2時半ごろ現地につくと、すでに東京ドームは多くの人であふれていた。番組出演をめぐる一連の騒動のためだろう、最寄りのJR水道橋駅付近には、メディアの取材スタッフの姿が目立った。

実際のところ、ファンがもっともピリピリしていたのはメディアに対してだったのかもしれない。Twitter上には「私たちの考えを歪めて報道されてしまうから、取材は受けないようにしよう」というファンたちの声が飛び交った。

なかには、「楽しみにしていた番組が突然なくなってしまったきっかけは、(原爆投下Tシャツに関する)メディアの報道だった」というファンも。

その後のBTSに関する報道のされ方も含め、不満を募らせているファンは多いようだ。

「嫌韓派」「反ヘイト」が激突

午後3時半ごろ、JR水道橋駅付近で、“攘夷”などの旗を掲げた、30〜40代とみられるスーツ姿の男性による“嫌韓派”の演説が始まった。Tシャツの問題をなじり、「BTSは韓国に帰るべきだ」と訴える。周囲に人はまばらで、彼らを撮影するメディアの多さが際立つ。警察官は5人ほどが遠巻きに様子を見ていた。

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“嫌韓派”の演説とそれに相対するカウンターの様子。

いったんその場を離れ、1時間ほどしてから同じ場所に戻ってきてみると、反差別を訴える団体が嫌韓派閥の演説を続ける人々に相対するように立ち、街頭演説を始めていた。

こちらは録音された音声で「私たちはすべてのレイシズムに反対します」という内容を、中国語・日本語・韓国語・英語で流していた。

お互いの声は交わることがなく、虚しくこだまする。両者の演説はコンサートが始まる午後6時過ぎまで続いた。監視する警察官の数は10人ほどに増員され、演説を取り巻くように見ている人の数も少しずつ増え、ライブストリーミングをする人の姿も見られた。が、足早に通り過ぎるファンの方が圧倒的に多かった。

「韓国に帰れ」などと演説する一団をどう思うか、近くにいたBTSファンたちに聞いてみると、多くは冷ややかな目で見ていた。

「炎上商法だと思う。『勝手にがんばってください、ファンに殺されないように』って感じ」(男性、17)。

本人も涙目、ファンも泣きながらコール

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東京ドームには、BTSメンバーのバナーが飾られていた。

コンサート会場に来ていた人に、今回の騒動について話を聞いてみると、ある男性(17)はこう語ってくれた。

「(原爆投下の)Tシャツを着てたことは悪いと思うけれど、それも1年半前のこと。その後にMステに出演もしているのに、なんで今さらほじくり返すの?という感じです」

ドイツ人の女性(28)も、Tシャツについて「彼らはバカなことをしたとは思うし、あれはマネジメントのミス。でも、日本人でも同じようなことをしてまだ人気のグループもあるのに、彼らだけを叩くのは偽善的では」と、今問題が持ち上がったことの不可解さに首を傾げる。

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水道橋駅には、メンバーの一人・ジョングクのポスターが。

コンサートの行われたその日、BTSの所属する事務所からは「原爆被害者の方々を意図しないまま傷つけたこと、及び、アーティストと原爆のイメージが重なるように見えたことで不快感を与えたことについて、心から謝罪します」などとする、謝罪の声明が出され、ファンには安堵の声が広がった。

「ずっとモヤモヤが止まらず、好きなのに辛い、苦しいみたいな状況だった」という女性(22)は、謝罪文を「ファンの不安をぬぐい去るような良い文章だった」と評価。やっと良い方向にいきそうでひと安心だと、胸をなでおろした。

また、コンサートが終わって会場から出てきた40代のファンによると、着用していたTシャツが問題視されていたメンバーは、アンコールで「僕のせいで、日本の皆さんだけでなく、世界中の皆さんがご心配されたと思います」と話したという。

「本人も涙目で、ARMY(BTSのファン組織)も泣いてました。直接的な謝罪の言葉はなくても、気持ちは伝わった。誰かを傷つける意図なんてなかったと分かりました」

一方で、ファンの中にも彼らの対応に疑問を呈する声も。BTSのデビュー当時からのファンという女性(23)は、「今回はBTSと事務所側が悪い。謝罪コメントも遅すぎる」と厳しい。

批判でも爆売れ「やっぱり嫌いになれない」

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ファンがライブで使うペンライト。

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11月7日に発売されたBTSの新曲はオリコンで1位を獲得。

大きな議論を巻き起こした今回の騒動だが、それでもBTS人気はとどまるところを知らない。

11月7日に日本で発売された新曲は、オリコンの週間シングルランキングで初登場1位を獲得。今回取材した東京ドームを皮切りに全国をめぐるツアーは38万人を動員予定で、コンサートグッズも売り切れの情報が相次いでいる。

前述のファンの女性も「(批判はしても)やっぱり嫌いになれない」と話す。

BTSは、自身の弱さや痛みなどを自分の言葉で表し、SNSを通じてファンに直接語りかけることでアイドルの新たな形を切り拓き、世界的スターにのぼり詰めたと言われる。

2018年9月にユニセフのグローバル・サポーターとして、国連で行った、スピーチでは「多くの人と同じように、私もたくさんの間違いを犯してきました」と語った。

コンサートを締めくくったのは、BTSがユニセフとともに推進しているプロジェクトと同名の「Love Myself」という楽曲だ。

この選曲を、ファンの女性は「過ちも含めて自分自身を受け入れ、今の自分を愛そうというBTSからのメッセージ」だと感じたという。

「今の日韓関係で、韓国のアイドルという難しい立場にいながら、日本で、日本語で、ツアー初日に自分の気持ちを正直に話してくれた。誠意以外の何者でもありません」

(文・西山里緒、竹下郁子、写真・西山里緒)

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