誘惑を取り除こう。
Strelka Institute for Media, Architecture and Design/Flickr
- 自制心が強そうに見える人は、実は自身を取り巻く環境から誘惑を取り除くことがうまい人。
- ジェームズ・クリアの新著『Atomic Habits』はそう記した。
- 研究もクリアの指摘を裏付けた。ある研究は、グーグル社内でキッチンの配置を変えると、間食する人が減ったことを明らかにした。
筆者は今、ジェームズ・クリアの新書『Atomic Habits』を読んでいる。
クリアは生産性をテーマにした人気サイトを持ち、新著の中では、良い習慣を築き、悪い習慣を捨てることについて焦点をあてた。自制心だ。
彼は新著で以下のように記した。
「『自制心の強い』人は、強い意志や自制心を必要としないライフスタイルを構築することが得意。言い換えると、誘惑の多い環境には身を置かない」
これは素晴らしい。なぜなら、ダイエットコークやフェイスブック、目覚まし時計のストップボタンなど、多くの誘惑に耐えられない自分自身に嫌悪感を抱くことをやめることができるから。
クリアが言及した研究は2012年に『Journal of Personality and Social Psychology』に掲載されたもの。頻繁に引用されている論文だ。
この研究では、200人以上の被験者を対象に、ブラックベリー端末を使って、飲食や喫煙などの欲求を感じた時、あるいは誘惑に抵抗している時、そして最終的に誘惑に負けた時などをその都度、記録してもらった。
また、被験者の全般的な自制心の強さも測定した。
その結果、自制心が最も強かった人たちは、誘惑に耐える力が他の人たちよりも優れていたわけではなかった。だが、欲求を感じる回数は他の人たちよりも少なかった。
この結果から研究者は「強い自制心は、誘惑に耐えることよりも、そもそも誘惑を避けることによってより機能しているようだ」という結論を導き出した。
間食をやめたいなら、作業スペースの模様替えを
クリアの本を読んで、筆者は数年前に書いた記事を思い出した。グーグル社内のキッチンで行われた実験についての記事だ。
学術誌『Appetite』に掲載された実験では、グーグルのキッチンのレイアウトを変え、ある飲料コーナーをもう1つの飲料コーナーよりも軽食コーナーに近づけた。
実験の結果、軽食コーナーに近い飲料コーナーを利用した従業員は、軽食コーナーから遠い飲料コーナーを利用した従業員よりも、軽食を取る確率が69%高かった。
つまり、(実際に空腹でなければ)軽食を取る欲求と戦うのは、目の前に軽食がある時のみ。軽食コーナーの近くを通らなければ、おそらく問題ない。
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資産管理アドバイザーのラミット・セシ(Ramit Sethi)氏がメールで紹介していたレディットのスレッドも似たようなことを示唆した。
「スリムな女性へ、体重をキープするためにどれだけ努力していますか?」という質問に対して、複数のユーザーがさほど努力していないと答えた。
彼女たちの場合、ビーガン料理しか食べない、もしくは箱に入った食べ物は絶対に食べないなどの習慣が身についた後は、体重をキープすることにあまり苦労しなかったようだ。
確かに環境を変えたからといって、悪い習慣がすべて消え去るわけではない。喫煙者の場合、バーに行かないことは有益かもしれないが、すぐに禁煙できるということはおそらくないだろう。
しかし、自制心の強い人は実はただ問題のコントロールが上手なだけという事実には勇気づけられる。
この事実を生かして、そうした人たちの仲間入りしよう。
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)