クアルトリクスCEOのライアン・スミス氏。
Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch
2010年代のはじめ、ライアン・スミス(Ryan Smith)はある企業から彼のスタートアップ企業、クアルトリクス(Qualtrics)を5億ドルで買収すると打診された時、妻をドライブに誘った。
買収条件と彼と家族が手にする金額は、交渉を進めるのに十分なものだった。だが、南への30分のドライブの後、2人は断ることに決めた。
2人は、大金を一度に手に入れることは、子どもたちの教育に悪影響を与えると考えた。
また、スミスは会社を10年近く経営してきたが、仕事と私生活のバランスをうまく取れるようになっており、起業家であることは彼の家族にとって大きな負担ではなかった。
総合的に考え、スミスは社員800人の彼の調査会社を株式公開しないと決めた ── 少なくとも2018年11月はじめ、IPOのわずか数日前にSAPが同社を80億ドルで買収することを発表したその日まで。
スミスにとって、家庭と仕事の双方で成功を感じることは、いつでも簡単なことというわけではなかった。多くのエグゼクティブたちと同様に、物事のバランスを取るためにCEOコーチを雇っていた。
スミスはライフワークバランスを簡単に傾いてしまい、継続的に安定させる必要がある飛行機にたとえた。一方の翼は彼の家族のニーズを表し、もう一方の翼は仕事でのニーズを表す。
たとえば彼が出張に行くと、飛行機は片方に傾いてしまう。彼が家族のもとに戻り、週末を子どもたちと過ごせば傾きは元に戻る。
スミスのコーチは彼に毎週実行可能な、成功へのプランづくりの方法を教えた。そしてスミスは2014年、アイルランドでの会議で仲間のCEOたちにそれを説明した。以下のような内容だ。
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コーチは、スミスに自分が責任を負っている仕事をあげるように言った。スミスは、以下をあげた。
- 夫
- 父親
- 息子
- CEO
- 上司
- 兄弟
- 孫
- 友人
そしてコーチはスミスに、「成功した」と感じるには、それぞれの仕事について週ごとに何ができるかと尋ねた。
スミスは、妻とデートに出かけ、サプライズの花束を贈れば、自分のことを良い夫と感じるかもしれないし、あるいは娘に自転車の乗り方を教えたら、良い父親と感じられるだろうと気付いた。
ライアン・スミス氏は、ライフワークバランスは常に安定化させる必要がある飛行機と表現する
Flickr/Daniel Gies
また、すべてのタスクを素早く完了させるために、リストにあるタスクをまとめられることに気付いた。
もし彼が本当に生産性に優れているなら、日曜日に書いたタスクは火曜日までに完了できる。
たとえば、娘を連れて両親の家を訪れ、自転車の乗り方を教えることができれば、彼は良い父親と良い息子のどちらにもなれる。
だからスミスの週のタスクリストは以下のようになっていった。
- 夫として - 妻とディナーに行き、彼女に花束を買う。
- 父として - 娘に自転車の乗り方を教える。
- 息子として - 両親のもとを訪れる。一緒に2と3を行う。
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スミスは、ほとんどの人はしばしば人生のたった1つの段階のプランしか作らないことに気付いた(「30歳までに会社を売却する」などだ)。
そして、そうした人たちは目標を達成するためのステップを知らず、目標達成後に何をすべきか計画を立てることを知らない。
スミスのコーチのやり方は、人生における困難な目標を1週間のタスクに落とし込むもの。だから、最優先事項を後回しにしたことに後から気付くことはない。
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スミスは金曜日の夕方、会議でこの成功術を解説すると、すぐに会場を出た。
他の人々は遅くまで残り、地元のパブで飲んでいたが、スミスはダブリンまで車を3時間運転して戻り、自宅があるユタ州までの早朝フライトを予約した。
こうして、スミスの子どもたちは日曜日の朝に目覚めると、父親と一緒に一日中過ごすことができた。
※敬称略
(翻訳:Makiko Sato、編集:増田隆幸)