アパレルメーカーの世界大手である「H&M」が、12月5日から日本国内のすべての店舗でプラスチック製のレジ袋を紙製のバッグに置き換えると発表するなど、世界的に対策が急速に進められている「プラスチック問題」。
EUでは2018年1月、「2030年までに使い捨てのプラスチック容器や包装を再利用もしくは素材として再生利用可能なものにする計画」を打ち出し、日本においても現在、「使い捨てプラスチックの排出量を2030年までに25%減らす」ことが目標に掲げられようとしている(環境省「プラスチック資源循環戦略(案)」より)。
プラスチック問題とは:海に流れ込んだマイクロプラスチックが海洋汚染の大きな原因となり、魚を通して人体からも発見されている。2050年までには、海に生息する魚の総重量を上回るプラスチックが海洋環境に流出することが予測されている。
そうしたプラスチック素材への規制が強まるなか、石灰石を主な原材料とした紙・プラスチックの代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」を開発するTBMが11月15日、総額31.2億円の資金調達を発表した。
8月に発表した伊藤忠商事に加え、大日本印刷と凸版印刷、三菱鉛筆、ゴールドマンサックス、フランスベッドホールディングスなどが第三者割当増資を引き受けた。
資金調達の主な目的は、LIMEXの量産に向けた第二工場となる多賀城工場の建設。2020年の竣工を予定している。
「石」由来の素材で環境負荷を軽減
「LIMEX」で作られた製品一覧。紙やプラスチックの代替として期待される。
写真:室橋祐貴
木だけではなく、水もほとんど使わずに紙を作れるLIMEX。
原料が石だからこそ、高い耐水性を持ち、経年変化にも強い。
現時点では名刺や飲食店のメニュー、リーフレットを中心に導入が進んでいる。
また、海中に蓄積されるマイクロプラスチック問題やポイ捨てによる環境問題を解決しようと、5月に「生分解性LIMEX」を開発。
現状のプラスチックは石油由来の素材も入っているため、自然には完全に分解されないが、生分解性LIMEXは微生物がポリ乳酸を分解し、自然に完全分解される。
「LIMEXは『リデュース』と『リサイクル』の点から、プラスチックの問題をはじめとする、資源循環、廃棄物による環境汚染の問題に対して貢献することができる。開発の際には、LIMEXの原材料のうち、どの原材料が環境負荷の元になっているのか、 どのプロセスで環境負荷が生じているのかを可視化し、分析することで、より環境負荷の低い製品を開発しようとしています」(サステナビリティアクセラレーターの羽鳥徳郎氏)
元日本製紙の専務取締役が会長
TBMの主要メンバー。開発メンバーには日本を代表する化学メーカー出身者が並ぶ。
TBM提供データをもとにBusiness Insider Japanで加工
世界40カ国以上で特許を出願し、グローバル展開も進めるTBM。こうした高い技術力を持つ製品開発を支えているのが、日本製紙で専務取締役を務めた角祐一郎会長をはじめ、日本を代表する化学メーカー出身のメンバーだ。TBMは2011年創業のベンチャーだが、名だたる企業から人材が集まり、現在社員は約100人。半数が工場で働く。今回の調達によってさらに採用も強化していく予定だ
(文・室橋祐貴)