2018年に入って経営危機の噂が絶えないofo。気温が下がり、経営環境も一層冷え込みそうだ。
撮影:李華傑
経営危機が伝えられる中国のシェア自転車大手ofoが、2018年8月31日以降、北京で少なくとも20件、計5360万元(約8億8000万円)の支払いを求める訴訟を起こされたことがわかった。また、創業者の戴威(ダイ・ウェイ)CEOは11月14日午後の全社会議で、合併、買収を検討していると初めて明かした。新浪科技など複数の中国メディアが伝えた。
保証金返却にも懸念
ofoを巡っては2018年8月末、上海鳳凰子会社の自転車メーカーがofoに納品した車両代金6815万1100元(約11億円)が支払われていないとして、車両代と違約金の支払いを求める訴えを起こしたが、今回、同案件以外に数万元から数千万元まで計20件、計5360万元の支払いを求める訴訟の存在が明らかになった。例えば百世物流は9月、自転車の輸送費用約310万元(約5000万円)が支払われていないとしてofoを訴えている。
撮影:李華傑
さらにこの1カ月、ofoのユーザーから「退会後も保証金が戻ってこない」とのクレームが噴出。同業大手の摩拝単車(モバイク)が7月に保証金制度を廃止した一方、ofoは従来99元だった保証金を6月に199元に引き上げており、約2700万ユーザーが支払った保証金の行方についても懸念が広がっている。
一時期は数十社が参入し、中国発イノベーションとして注目されたシェア自転車業界は、2017年以降経営破たんが相次いだ。2018年に入ると、哈羅単車(Hellobike)がアリババの、青桔単車(LimeBike)と小藍単車( Bluegogo)が滴滴出行の、そしてofoとシェアを二分していたモバイクは出前アプリ大手の美団点評の傘下に入る道を選んだ。その中で、独立運営の旗を降ろさなかったofoは、苦境に直面することになった。
9月以降、滴滴と哈羅単車がofo買収に動いているとも報じられたが、滴滴はこれを否定。哈羅単車は「ofoから合併の話があったのは事実だが、今は自社のことで精いっぱいだ」とコメントした。
CEO「資金が尽きかけているのは事実」
2017年のAPECに登壇し、世界の20億人の人々にサービスを提供したいと目標を語った戴威氏。
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10月末、ofoは破産準備に入ったと報じられたが、同社はただちに否定。ofoは2018年以降、買収や合併、破産観測が報じられる出るたびに、再三「根も葉もない噂だ」と独立運営を維持する方針を強調してきた。
だが戴威CEOは11月14日の全社会議で、「倒産はありえないが、買収、合併の可能性はある」と語り、これまでの発言を修正した。
「中国企業家雑誌」によると戴威CEOは全社会議で「資金が尽きかけているのは確かで、数カ月前にはもうだめだと思ったが、絶対に諦めないと決めた」と経営危機を認め、「シェア自転車の利用料だけで黒字を出せると考えたのは間違いだった。今後は事業領域を広げていく」と語った。
シェア自転車ブームが過ぎ去った今、中国では「シェアエコノミーの本来のコンセプトは遊休資産の活用であり、大量の自転車を生産したこと自体がシェアエコの本質から外れていた」との意見が出ている。
今後、気温が下がるにつれ自転車の利用者が減っていく中で、ofoを巡る環境は一層厳しくなりそうだ。
(文・浦上早苗)