「中途採用増」企業は4割超、「未経験」「学歴不問」でも欲しい事情

ビジネスパーソン

転職市場は活況だが、職種や企業の方針は明暗を分けそうだ。

Reuters/Yuya Shino

景気の好調や人手不足により、転職市場がますます活況となっている。

リクルートキャリアの調査によると、4割超の企業が過去3年間よりも中途採用人数を増やしていることが明らかになった。募集職種は営業、IT系エンジニアがいずれも5割近くと多い。各社の採用強化の背景には、欠員や事業拡大といった従来どおりの事情とは別に、「新規事業に伴う増員」が3割を超えていることも特徴的という。

一方、転職支援サービスへの登録者数も主要各社で右肩上がりに推移しており、求人が増え市場が活発化するのに誘われ、転職を検討する人も増えている様子が表れている。

全産業でデジタル化が加速

グラフ

中途採用を行う企業の募集職種。営業、IT系エンジニアが突出している。

出典:リクルートキャリア

リクルートキャリアは11月15日、人事担当者628人を対象としたアンケート調査の結果を発表した。それによると、過去3年間と比べて中途採用を増やしている企業は約4割で、IT・情報通信、製造業などで「増えた」とする回答が多かった。

さらに、中途採用を増やしている背景として従来から多い「欠員」「既存事業の拡大」に加え、「新規事業に伴う増員」と回答した企業が32%超となったのも、特徴的だという。また、「新規事業に伴う増員」と回答した企業が募集する職種は、IT系エンジニアが約6割でもっとも多かった。続いて営業の5割超だった。

この調査結果を受けて、リクナビNEXT編集長の藤井薫さんは、「旺盛な採用意欲を示す結果。従来の欠員補充だけでなく、新規事業に伴う増員が3割と多いのは、全産業でデジタルトランスフォーメーションが加速しているから。各社は自社にはいない人材採用を強化しています」と、分析する。

デジタルトランスフォーメーション:情報技術が社会のあらゆる領域に浸透することによってもたらされる変革

「未経験」「学歴不問」も急増

人手不足感は強まっても十分な採用ができず、企業側が採用基準をゆるめる動きも。

エン・ジャパンによると、経験を重視する傾向のある中途採用でも、「未経験歓迎」の求人広告が3年間で2.3倍になっているという。「学歴不問」は2.4倍だ。これまでは経験者求人の広告だったものを「未経験者OK」に切り替えたり、大卒を条件としてきた広告を「学歴不問」にしたりする動きが出ているというのだ。

同社の担当者は「未経験歓迎求人が増えているのは、新卒採用が十分にできないという理由もある。企業にとっては猫の手も借りたい状況が続いている」と説明する。

ミドル世代の転職は増えているが

ミドル転職

転職35歳限界説は根強い一方、ミドル世代の転職は増えているという。

撮影:今村拓馬

転職市場の活況は、企業側の人手不足だけの話ではない。転職を検討する人も増えている。

リクルートキャリアの調査では、2018年10月の転職求人倍率は、前年同月差0.20ポイント減の1.68倍だった。求人倍率が微減した背景にあるのは「依然として求人も増えているが、それを上回る求職者の増加」(リクルート担当者)だという。

リクルートキャリアによると、求人数は前年同月比123%に対し、サービスの登録者(求職者)は137%と、大きく上回る伸び率だ。

マイナビでも、2018年10月時点で「マイナビ転職」サービスへの登録者数は、前年同月比で2割近く増え、右肩上がりの状況が続いている。

転職に踏み出す人の年齢が上がって来ているのも特徴という。

エン・ジャパンの「ミドルの転職」事業部長の天野博文さんは、「求人側の需要の強さで、ミドル世代にも機会が増加し、全般的に登録者数も増加基調にある」という。

ただ、なかには「製薬や銀行など、業界の先行き不安から転職を検討している求職者の登録も目立っている」と、厳しい業界事業も追い風だと指摘する。

企業の求心力に大きな差が出る時代

会社

人材争奪戦の時代、いかに魅力的な事業や方向性を示せるか。企業は問われている。

撮影:今村拓馬

総務省の労働力調査によると、日本の転職者数は最新の2016年で306万人。2008年のリーマン・ショック後には、景気低迷により280万人台にまで落ち込んだが、6年ぶりに300万人台に回復している。

人口減少に伴う人手不足と好景気で、当面、転職市場の活況は続きそうだが、IT人材は争奪は激化するなど企業側の事情は深刻だ。

リクナビNEXT編集長の藤井さんは「今後、変化を仕掛ける企業とそうでない企業との間で、優秀な人材の求心力に大きな差が出ていくと考えられる」と、明暗が分かれる事態を予測している。

転職求人倍率も、IT系エンジニアや営業では高いが、事務職や編集・制作、金融専門職では低迷するなど、職種によって転職活動も悲喜こもごもといえそうだ。

(文・滝川麻衣子)

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