結婚指輪も家族ごっこもいらない、収入も知らない。はあちゅうが事実婚を選んだ理由

2018年7月にAV男優のしみけんさんとの事実婚を公表したはあちゅうさん 。もともと同棲していたこともあり、「日常の延長線上にある」結婚のかたちを選択した結果だったという。結婚式、結婚指輪、親戚付き合いはナシ。互いの収入は知らず、お財布も別々で生活費は折半。浮気のルールについては「考えることをやめた」そうで……?

“家族ごっこ”はしたくない

はあちゅう

はあちゅうさんが結婚を公表してから4カ月。事実婚のいいところって何ですか?

撮影:今村拓馬

事実婚が法律婚と大きく異なるのは、同じ戸籍に入らないため同姓にする必要がないことだ。

はあちゅうさんはフリーランスで働いているため、名字が変われば仕事の取引先の登録を変更しなければならず、しかもこの名義変更は面倒な上にお金もかかる。法律婚にこうした手続き上のデメリットが多いこと、そしてどちらかの戸籍に入るような「家と家」の関係性ではなく、「対等な個人として」の結びつきの方が自分たちには「しっくりくる」と考えて事実婚を選んだのだという。

「戸籍を変える必要がないので、親とのつながりは保ったまま彼と新しい関係を築けたのはお得だと思いました。それと私の家族が彼の仕事についてもともと“100%ウェルカム”という感じではないので、別に家族と彼が無理に仲良くならなくていいやと。私は彼の私への態度が好きだから結婚したいけど、彼が私に見せる顔と家族や世間に見せる顔は違って、身内全員がそれを受け入れられないのも分かるんです。親に結婚の挨拶をしたりお正月に親戚で集まったり、そういう“家族ごっこ”をしなくてもいい結婚のかたちを探していました」(はあちゅうさん)

パートナーのしみけんさんはAV男優。最近ではコンドームをつけることの大切さや、男性本位のAVの演出を強要するようなセックスのあり方に警鐘を鳴らす発言も多く、男女共にファンが多い。

一方で、AV出演者や風俗店勤務などセックスワーカーへの社会の偏見は今も残ったままだ。

「妹は昔お付き合いしていた人に『お姉さんが彼氏さんと結婚するのであれば君とは結婚できない』と言われたこともありますし、私も子どもが親の職業を理由にいじめられると何度もいろんな人に言われてから、『名字は違った方が何かのときに子どもに逃げ場が出来るかも』と考えたこともあります。職業で偏見を持たれる社会は良くないけど、それをすぐに変えるのは難しい。さまざまな価値観の人と今後も接していくことを考えても、選択肢をいろいろ残せる事実婚の方がやっぱり良いなと」(はあちゅうさん)

「AV男優の妻」というロールモデルなき道

はあちゅう

結婚指輪に興味がなく、買っていないという。今回は“結婚”がテーマの取材なので、仕事でプレゼントされたものをしてきてくれたそう。

撮影:今村拓馬

はあちゅうさんとしみけんさんは4年間の交際期間を経て結婚した。はあちゅうさん自身もしみけんさんの仕事について「価値観がついていかない」期間が2年ほどあったといい、今もしみけんさんの出演作品やインタビューは見ないようにしているそうだ。

AV男優という職業への偏見はもちろんないが、自分の恋人が当事者となると話は違う。

肉体関係を結ぶことが浮気の定義にならない2人の関係性の中で、愛って何だろう?浮気はどこから?と自問し続けた結果、辿りついた答えは……。

「ええっと……どちらも答えは出てないですね。もう考えるの止めちゃいました。結局、一番大切なのは何があっても一緒にいたいかどうかなんですよね。ただ私の場合は、『AV男優の妻ってこういうものだよ』というロールモデルがないからこその辛さもあると思っていて」(はあちゅうさん)

旦那観察日記

出典:旦那観察日記

自分自身の気の持ちようも世間の反応も、過去にならうものがない。特に事実婚を公表する前の1カ月間はどんな反応があるか分からなかったため、ほとんど眠れないほど不安な日々を過ごしたそうだ。実際、見下したような言葉やバッシングもあったという。

「偏見と一言で言っても、彼と私に向けられるものは違うんですよね。AV男優など男性が多くの女性を抱くことはヒーローみたいに語られたり羨望の眼差しで見られることがあっても、それを受け入れる女性は貞操観念がおかしいとか得体の知れないものみたいに見られていると感じることも多いです。彼は受け入れられてるのに私は違う、みたいな疎外感を感じることもあります」(はあちゅうさん)

夫婦の日常を少しでも分かってもらえたらと書き始めたのが『旦那観察日記』だ。2人を動物のキャラクターにたとえ、結婚生活を漫画で綴りインスタグラムやブログで公開している。コメント欄には共感の声がずらりと並ぶ。

「人生全部コンテンツ」の妻と「地上の仕事が増えた」夫

はあちゅう

「日常の延長線上にある」結婚を目指したが、仕事もプライベートも良い変化が訪れている。

撮影:今村拓馬

事実婚は法律婚に比べて結婚した実感も薄く、離婚のハードルも低い。だからこそ絆の強さが試されるとはあちゅうさんは考えている。公表には勇気が必要だったと話すが、その後受けた多くの祝福が2人の繋がりをより深くした。

インフルエンサー2人の結婚は社会的な影響も大きい。事実婚という選択肢をはあちゅうさんたちの発表をきっかけに知った人も多かった。制度自体を知らない若い世代も多く、相談を受けることも増えているという。

はあちゅうさんにはセックスワーカーの女性たちから「勇気をもらった」という声が数多く届いたのをはじめ、「親族に犯罪者がいて結婚は無理だと思っていたが、事実婚という選択肢があることを知って希望になった」という連絡もあったそうだ。

「人生全部コンテンツ」と言い切るはあちゅうさん。公表に踏み切ったのは、自身の読者やファン、フォロワーに隠し事をせず誠実でいたいという思いも大きかったという。

そして、結婚をきっかけに2人の仕事にもポジティブな変化があった。

「彼はこれまでSEX特集でしか呼ばれなかった『an・an』に結婚をテーマに呼んでもらったり、2人で映画の試写会のゲストになったり。彼は『地上の仕事が増えた』と表現しています(笑)。私も事実婚を切り口にした取材など、仕事の幅が広がりました。もちろん大手企業の広告のお仕事などデメリットに働いているかなと感じたこともあるんですが、それを考えても仕方ないので! 今は得られたものの大きさに、ただ感謝してます」(はあちゅうさん)

収入も貯蓄も知りません

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shutterstock/New Africa

もともと「対等な個人同士の結びつき」を目指して事実婚を選択した2人。互いを干渉しないことが結婚生活のルールだ。

生活費は基本的に折半。財布も別々で、互いの収入や貯蓄額も把握していないという。

「もし借金があると言われても『へぇ〜』という感じです。結婚するときも経済状況はまったく気になりませんでしたね。自分で稼いだお金をどう使おうと自由だと思うので、買い物についてもお互い口出ししません。でもたぶん生活費は私の方が多く払っている気がしていて、この前ちょっと頭にくることがあったので、今月はどっちがいくら払ったかを全部書いてます。『もっと払って』ということではなく、状況を分かってもらうために、ですよ?」(はあちゅうさん)

はあちゅう

撮影:今村拓馬

家事は互いの得意なことを中心に分担しているが、はあちゅうさんの方が負担は多いそうだ。

「私のほうが神経質だから、汚れに早く気づくんです。でも、男の人にしては、だいぶやってくれる方だと思います。結婚生活は長いので、そのへんのバランスは気長に調整できればいいなと思っています」(はあちゅうさん)

ただ、ルンバや家事代行サービスなどテクノロジーとお金で解決できることには徹底的に頼るようにしている。特に家事代行は「家庭という会社の必要経費。早く日本でも一般的になればいいのにと思います」(はあちゅうさん)。

将来は子どもも欲しいと考えているそうで、今も妊活中だ。

「妊活は本当に大変なんですけど、彼の明るさとAV男優としての集中力に助けられてます(笑)」

家族のかたちが多様化する一方で、それを受け入れる社会の認識はまだまだ進んでいないのが現実だ。これからも発信を続けることで、社会を「じわじわと」変えていきたいと力強く笑った。

(文・竹下郁子、写真・今村拓馬)


はあちゅう:ブロガー、作家。「ネット時代の新たな作家」をスローガンに活動し、新刊『婚活っていうこの無理ゲーよ』が2018年10月に発売。コンテンツ配信サイトcakes(ケイクス)で『仮想人生』を連載中。


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