ザッカーバーグとクック、2人のテック経営者の確執は年来だが、今年になり激化した。
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- アップルCEOのティム・クックとフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグは、ここ数年、言い争いを続けている。
- 最近ではザッカーバーグは自社の従業員にiPhoneでなくAndroidスマートフォンを使うよう求めた。クックがテレビのインタビューでフェイスブックを批判したためだ。
- フェイスブックは公式声明で2人の対立を認めた。なお、ザッカーバーグがAndroidの使用を求めたのは、より広く使われているOSだからと述べた。
アップルとフェイスブック、本社は近くにあるが、ティム・クックとマーク・ザッカーバーグは犬猿の仲だ。
フェイスブックは公式発表で認めた。
プライバシーをめぐる一連の不祥事へのフェイスブックの対応をまとめて話題となったニューヨーク・タイムズの記事に対して、同社は11月15日(現地時間)朝、自社サイトに長文を投稿した。
そのうちの1つがクックに関してだった。
「5. Androidについて:ティム・クックは一貫して我々のビジネスモデルを批判してきた。そして、それにマークが同意していないことは明らか。この件に関して、他の誰かを雇用する必要などなかった。我々はずっと従業員と幹部に対して、Androidの使用を推奨してきた。なぜなら、世界で最も人気のOSだからだ」
これはティム・クックへの個人的な怒りから、ザッカーバーグが幹部のiPhoneの使用を禁じ、Androidを使うよう命じたのではないかとするニューヨーク・タイムズの記事に対応したもの。
以下、ニューヨーク・タイムズの一節。
「『我々は個人情報を取り引きするようなことはしない』とアップルCEOのティム・クックはMSNBCのインタビューで語った。『我々にとってプライバシーは人権。市民の自由だ』(クックの批判はザッカーバーグを激怒させた。ザッカーバーグはこの後、経営陣にAndroid携帯のみを使うよう命じた。iPhoneよりもユーザー数が多いことがその理由としている)」
2人の確執はここ数年のことだが、今年はじめによりヒートアップした。ニュースサイト、リコード(Recode)のカラ・スウィッシャー(Kara Swisher)がフェイスブックのユーザーデータを不正に入手したケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)の問題についてクックに質問したことがきっかけだ。
スウィッシャーはクックに、もしザッカーバーグの立場だったら「どうしたか?」と聞いた。
クックは、「何をしたか? 私だったらこんなことにはならない」と答えた。
ザッカーバーグはその後、クックの批判に「極めて軽薄」と反論した。
フェイスブックの声明にある「この件に関して、他の誰かを雇用する必要などなかった」の「他の誰か」は、ディファイナーズ・パブリック・アフェアーズ(Definers Public Affairs)のこと。
同社が契約した共和党系の調査会社で、同社を批判する民主党議員に関する文書を記者に配布していたとニューヨーク・タイムズは伝えた。
だがクックとザッカーバーグの最初の対立は、少なくとも4年前に遡る。
クックは2014年、チャーリー・ローズ(Charlie Rose)とのインタービューで次のように語った。
「無料のオンライン・サービスにとって、利用者は顧客ではない。利用者は製品」
これがザッカーバーグの逆鱗に触れたようだ。タイムのジャーナリストはザッカーバーグの特集で、その緊張を伝えた。
「だがそれ以前にザッカーバーグも、ティム・クックが9月にアップルのプライバシー・ポリシーについての声明で、同様のことを記していたことに気づいた。その時、私は初めて彼が苛立つのを見た。
ティム・クックは『無料のオンライン・サービスにとって、利用者は顧客ではない。利用者は製品』と述べた。この攻撃は恐らくグーグルに向けたものだった。だがフェイスブックも間違いなく視野に入っていた。
『私が抱えるフラストレーションは、多くの人が広告ベースのビジネス・モデルは何か顧客から外れたものになっていると考えるようになっていること』とザッカーバーグは語った。
『それは極めてばかげた考え方だと思う。アップルにお金を払っているから、何らかの形でアップルと一体化していると思うだろうか? もしそうなら、アップルは製品をもっと安くするだろう!』」
インタビューの受け答えから始まった大企業のトップ同士のささいな争いが、フェイスブックの公式声明に波及したことは注目に値する。
※敬称略
(翻訳:Ito Yasuko、編集:増田隆幸)