グーグルは大規模ゲームショーの「G-STAR 2018」に出展した。
グーグルは韓国・釜山で11月15日から18日まで行われているゲームショー「G-STAR 2018」に出展。17日には報道関係者向けイベント「Go Global」を実施した。
Go Globalでは、同社のAndroid向けアプリプラットフォームである「Google Play」の現状や世界で活躍するアジアのゲーム開発者の成功のノウハウが共有された。
Google Playの上位5カ国のうち3カ国は日本、韓国、台湾
Google Playのビジネス開発担当ディレクターを務めるPurnima Kochikar氏。
Go Globalが韓国で開催された背景には、Google Playにおけるアジア地域の存在感の大きさがある。Google Playのユーザー数トップ5カ国のうち3カ国は、日本、韓国、台湾だ。
基調講演に登壇したGoogle Play ビジネス開発担当のグローバルディレクターを務めるPurnima Kochikar氏は、「グローバル規模で見ても非常に大きなスケールの市場」と語っている。
新興国市場の成長も加速している。
また、アジア地域に限った話ではないが、新興国市場のユーザーや開発者も増加傾向にある。Kochikar氏は「2017年におけるアプリダウンロード数のうち40%以上が新興国、過去2年間では新興国市場の開発者の数は3倍にも増えている」と、Google Playを通して新たなビジネスチャンスが生まれていることを強調した。
「上流」からゲームビジネスを拡大させるGoogle Playの開発者機能
Androidの普及と一緒に規模を拡大しているGoogle Play。
イギリスの調査会社・ガートナーが8月28日に発表した販売台数ベースのスマートフォンOSの世界シェアは、2018年第2四半期で88%がAndroid、11.9%がiOSとなっている。中国など一部地域を除き多くのAndroid端末はGoogle Playを通して、ゲームやアプリ、デジタルコンテンツをダウンロードできるため、自然とGoogle Playの利用が拡大しているのは納得できる。
では、そんな成長を続けているプラットフォームに対して、グーグルはどのような方針で投資を行っていくのだろうか。Kochikar氏は大きく分けて3つの方針のツールを開発・提供すると語っている。
- ローンチ時の失敗を少なくするもの
- ビジネスに活かせる適切なデータを提供するもの
- ユーザーが欲しいアプリにストレスなくアクセスできるようにするもの
アプリのローンチ前からユーザーを集められる「事前登録機能」。
1つ目はアプリ開発者の誰もが共通して恐れる「アプリのローンチ時の失敗」をなるべくなくそうとするものだ。
現在は、ローンチ後に複数の仕様違いのアプリを配信して効果検証をする「A/Bテスト」を行う開発者向けの機能のほか、ユーザーの事前登録機能を展開。事前登録機能はPlay上でユーザーが気になるアプリを登録し、配信日になると通知もしくは自動でダウンロードが始まる機能だが、事前登録したユーザー数に応じてローンチ後に何らかの特典を配布する仕組みなど、ローンチ前からユーザーの興味を惹くことのできるアップデートが加えられている。
事前登録機能はすでに全世界で2億5000万回が使われており、日本でもすでに数多くの新作ゲームがこの機能を利用している。
アプリがきちんとユーザーの環境で動作しているかチェックできる「Android Vitals」。
2つ目は、ユーザーからのフィードバックやアプリ自体のパフォーマンスを測るツールのことを指す。
具体例としてKochikar氏が挙げていたのは「Android Vitals」と呼ばれるツールだ。Android Vitalsはインストールされたアプリがユーザーのスマートフォン上で正しく動作しているか確認するためのものだ。
例えば、アプリのクラッシュの頻度やバッテリーの使用量などを測定でき、開発者はツール上でこれらのデータを参考に、アプリの更新計画を立てられる。
Kochikar氏は「高頻度のクラッシュを体験しているユーザーのうち星1の評価を下す確率は、低頻度のクラッシュを体験しているユーザーと比較して52%以上高い」と話した。配信後のメンテナンスも、アプリのライフタイムバリューを上げるためには極めて重要な要素だ。
新機能「Instant Apps」でアプリの選び方が変わる
Instant Appsの紹介動画。
3つ目の投資領域は、ユーザーに対しストレスなくアプリを提供するための環境作りに役立つものだ。直近に提供されたものだと「Instant Apps」を挙げられる。
Instant Appsは、いわゆる「お試し利用」のための仕組みだ。従来、ユーザーはインストール前にアプリの説明書きや口コミ、静止画や動画でアプリの雰囲気をつかめたが、実際のアプリの操作感をイメージすることは難しい。Instant Appsはインストール不要でアプリの使い勝手を試せるため、ユーザーもそのアプリが自分の肌に合うか手軽に選べ、開発者もアプリの世界観や雰囲気をダイレクトに提供できるというわけだ。
グローバル向けゲームを展開するスタートアップ企業のトランスリミットは、新作ゲームでInstant Appsに対応する。
Instant Apps は2017年に発表され、提供開始となった機能で日本ではまだそれほど多く広まっているとは言えない機能だ。しかし、スマートフォン向けゲームを開発するスタートアップのトランスリミットが12月配信予定の新作スポーツゲームに採用を決めるなど、日本でも徐々に拡大しそうな雰囲気がある。
「ゲームのサブスクリプション」も検討中
全世界の開発者に対して今後もさまざまなサポートを行っていくと話すKochikar氏。
またグーグルは、ゲームにおける新たなビジネスモデルの模索もしている。
その1つが動画や音楽配信でお馴染みの月額課金制(サブスクリプション)のビジネスモデルだ。
例えば、日本ではダウンロード無料でアプリ内アイテムやいわゆる「ガチャ」をプレイするための逐次課金型(フリーミアム)が一般的だが、ダウンロード時にお金を払うだけでよい買い切り型が主流の市場も存在する。
Kochikar氏はサブスクリプションに関する取り組みについて「ゲームの中にはすでにゲームのエコシステムがある」と大規模かつ早急な導入については否定したが、フリーミアム型のゲームにサブスクリプション型のシステムを上乗せして提供するなど、一部地域の開発者と実験的に取り組んでいることを認めた。
Kochikar氏は「いろいろな形のビジネスモデルを検討している」と話しており、ITのビッグカンパニーであるグーグルが、スマートフォン向けのゲームビジネスをどのように進化させていくのか目が離せない。
(文・撮影・小林優多郎、取材協力・グーグル)