20万フォロワーを抱えるインスタ起業の「古着女子」。ゆとり世代の俺らにしかできないこと

yutori

yutori 社長の片石貴展(中央)と、PRプランナーの中沢渉(左)・アートディレクターの河野心希。

フォロワー数20万人以上を抱えるインスタメディア「古着女子」を運用する企業「yutori」。

2018年6月と8月には資金調達も達成し、12月には東京・下北沢にリアル店舗をオープンすることも決定したこの企業は、24歳の起業家・片石貴展と、同世代の仲間たちによって成長した。

「バイブス(フィーリングやノリ)を共有するために、みんなここに集まっている」という、ゆとり世代ならではの起業観とは?

自分には、自分を表現する資格がない

yutori社長・片石貴展

yutoriを創業した片石貴展は、1993年生まれ。

くすんだ金がかった髪色に、Reebokのだぼっとしたジャケット。下北沢のカフェで出会った片石は、ストリートで歌う、ラッパーのような風貌をしていた。

隣には、片石の友人でもあり、yutoriの運営にも携わる、中沢渉(25)と河野心希(25)。それぞれPRプランナー、デザイナーの仕事を持ちつつ、副業としてyutoriを手伝っているという。

1993年生まれの片石は、「自分に自信がなく、コンプレックスの強い人間」だったという。

明治大学ではアカペラサークルに入り、リーダー兼ボイスパーカッションとして打ち込んだが、どこかで、自分の好きなことを表現するのは気恥ずかしいことだという想いがぬぐえなかった。

自分は“クリエイター”でもないし、才能もない。だから、自分には自分を表現する資格がないと思い込んでいた——。

片石はそう振り返る。

5カ月で10万フォロワー、カギは「嘘のない言葉」

古着女子

「古着女子」のインスタアカウントは、フォロワー数が20万人を超える。

大学を卒業して、ITベンチャー・アカツキに入社してからも、そうした想いは尾を引いていた。

そこで出合ったのが、インスタグラムだ。2017年末、個人的な趣味から、古着をテーマにしたアカウント「古着女子」を開設した。

初日にすでに500人のフォロワーが集まった。数字を伸ばすことが得意というスキルも味方し、その後もフォロワー数は膨らみ続けた。約5カ月で10万人を超えるフォロワーがついた。そのタイミングでアカツキを退職し、起業した。

なぜ短期間で、「古着女子」はここまでの支持を集めることができたのか?

顔を一切出さないなど「古着女子」の世界観をつくる、古着女子の世界観に近いインフルエンサーを公式アンバサダーに認定、流入を高める施策として「フルジョ」タグの活用など、フォロワー数を伸ばすための手も、次々と打った。

さらに片石はyutoriの作り出す世界観が支持された理由についてはこんな風に語る。

「みんなが『我慢しながら生きること』に飽き始めていて、だけど誰もそこに解を出そうとしなかったからだと思います。 あとは、僕ら自身が嘘のない言葉で全てをしゃべれていた。単純に自分たちや身の回りの友達とハッピーになりたいっていう(思いがあったから)」

サメやクラゲから逃げられる“リアルなスペース”

古着女子

yutoriが運営する、90年代ボーイッシュテイストな古着コンセプトショップ「9090」。

8月には、家入一真氏が率いるベンチャーキャピタル「NOW」から資金調達をした。その理由もユニークで、“ゆとり的”だ。

「起業家って、自分がすごいことを自分で説明しなければいけないじゃないですか。その説得がダルい。著名な投資家から資金調達をすれば、『この人たちが推しているんだったら将来すごくなるのかな』って、期待感を醸成できる」(片石)

8月には、インスタグラムと連動したECサイトをスタートした。12月には、下北沢に「古着女子」のリアルなコミュニティスペースをオープンすることも決まった。

平日は関わりのあるインフルエンサーが集える場所や撮影スタジオとして活用し、休日はイベントなどを開催する予定だという。

なぜ、インスタから始まったメディアがあえてリアルな場所をつくるのか。片石はこんな風に語る。

「SNSをはじめ、僕らが生きる社会は、サメやクラゲがいっぱいいる海のようなもの。自分の好きなことを表現して『ダサい』『中二病か』と言われれば落ち込むし、故にそれができない人も多い。そんな“臆病な秀才”が逃げ込んで、好きをじっくり表現できる、最初のきっかけとなる場をつくりたい」

バイブス重視、“この指とまれ”で集まる仲間

古着女子

「それぞれ仕事を持ち、得意分野を活かしてyutoriに集う人が多い」という。

yutoriを手伝う仲間の多くは、Twitterや知人を通じて集まっている。ほとんどが別の仕事をしながらも、どこかで自分が思い切り表現できる居場所を探していた人たちばかりだ。

外資系広告代理店でプランナーとして働く傍ら、yutoriでは起業時からブランディングやPRを担当する中沢も、そのひとり。中沢はyutoriの仕事では報酬をもらっていない。けれど、“この指とまれ”的に人が集まり、一緒にその瞬間を作り上げていく楽しみがあり、それが対価になっている、と語る。

yutoriでアートディレクターを務める河野は、フリーのデザイナーとしても働く。外部からの視点も提供できた方がyutoriのためにもなると、あえて自分の仕事も続けている。

それぞれが仕事を持ちながら、得意分野を活かしてyutoriを作り上げていく。ここには、楽しさとか“バイブス”を共有したいと思っている人が集まる、と片石はいう。

1兆円企業は、めざさない

起業からわずか半年で2度の資金調達を達成し、メディアにも引っ張りだこ。けれど、「1兆円企業を目指しているわけではない」と片石はいう。

「売上高を競う場所で戦っても、“負け筋”じゃないですか。だけど、『ゆとり世代』の俺らにしか表現できないメッセージは、間違いなくある」

企業名「yutori」には、ゆとり世代を代表する新しい企業になるという思いが込められている。

SNSが当たり前にある環境で育ったゆとり世代。SNSは、誰もがクリエイターになれることを可能にした一方で、心ない一言で簡単に人を傷つけ、自信を失わせてしまうことも可能にした。

誰もがクリエイターになれる時代に、人の目を気にして臆病になってしまう人たち(“臆病な秀才”)が安心できる「心のゆとり」をつくり、彼らが前に踏み出せるきっかけを——。

インスタから始まった「yutori」は、ゆとり世代を代表する企業となれるのか?その答えは、すでに集まる仲間たちと、20万人のフォロワーが握っている。

(文・写真、西山里緒)

編集部より:一部構成を修正しました。2018年11月20日18:10

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