あなたも紅白歌合戦の司会者と審査員を予測できる—— ポイントはNHKの「自社ブランド強化」という狙い

紅白歌合戦

NHKホームページより

「平成最後なのに、平成らしさがない」とか「BTS(防弾少年団)は落選なのに、TWICEはいいのか」とか。出演者が発表されたNHKの紅白歌合戦の話だ。

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TWICE

原爆Tシャツで問題になったBTSは落選したが、TWICEは出場を決めた。その後、過去に来ていた衣装を巡って騒動が起きている。

GettyImages/Greg Doherty

さすが「国民的人気番組」だが、個人的には「歌と時代」も「衣装における政治性」も、どちらも議論しても虚しいだけだと思っている。なぜなら、もはや紅白歌合戦は、NHKの巨大なブランド強化装置に過ぎないからだ。

と、やや力を込めたのは、私が「2018年の紅組司会者は広瀬すず」と予告した者だから。なぜ予告できたかというと、それこそが「紅白=自社ブランド強化装置」の証なのだ。

縷々(るる)説明する。


宣伝としての司会者抜擢

精霊の守り人

今まではドラマ「終了後」のヒロインたちが司会に選ばれていたが、2015年に綾瀬はるかが司会に選ばれた。彼女がヒロインを務めた精霊の守り人は「公開前」だった。宣伝的な意図が見える。

「精霊の守り人」ホームページより

2018年4月、『朝ドラには働く女子の本音が詰まっている』という本を出版した。NHKが毎朝放送する「連続テレビ小説」、通称「朝ドラ」への愛を込めた本だが、そこに「ヒロインと、紅白司会と」というコラムを入れ、2018年年末の紅白の紅組司会を広瀬すずと予告した。

ことの発端は2010年の紅白歌合戦。3カ月前に最終回を迎えた朝ドラ「ゲゲゲの女房」のヒロイン・松下奈緒が、紅組司会者に選ばれた。松下は音大卒でピアニストでもあるから、音楽つながりだろうと理解した。だが、そうではなかった。

2011年は朝ドラ「おひさま」を終えた井上真央、2012年は「梅ちゃん先生」を終えた堀北真希。これで私は「紅組司会=朝ドラお疲れさま=慰労枠」と理解した。2013年は綾瀬はるかで、これは大河ドラマ「八重の桜」の最終回直後。ここから「紅組司会=朝ドラor大河ドラマ慰労枠」となった。2014年は「花子とアン」の吉高由里子、2015年は再びの綾瀬はるか。

ここで方向が決まった。綾瀬は、翌2016年3月から始まる「精霊の守り人」のヒロインだったのだ。NHKが放送90年にあたり「大河ファンタジー」と名付けて制作したのが「精霊の守り人」。その前宣伝として、ヒロインを司会者に選んだわけだ。

自社ブランド強化装置

2018年紅白司会者

2018年紅白に総合司会者はウッチャンナンチャンの内山光良に決定。紅組には広瀬すず、白組には嵐メンバーの櫻井翔が抜擢された。

NHKホームページより

「慰労」ならよいという話でもないが、「番組宣伝」は露骨ではないか。小さく憤った私だが、同時に思ったのは「白組司会者は、ずっとジャニーズだもんな」だった。

2008年の中居正広以来、2009年も中居、2010年から5年連続で嵐、2015年に井ノ原快彦(=「あさイチ」枠)をはさみ、相葉雅紀→二宮和也と来て、2018年が櫻井翔。ほぼ嵐一色。

白組司会者はジャニーズへの忠誠を誓う枠。紅組司会者は自社番組の宣伝枠。NHKはそう決めたのだと思う。

平成になってさすがに50%は厳しくなったとはいえ、それでも紅白は40%前後の視聴率を取れる。それだけの人が見てくれる番組を使い、ジャニーズとのよい関係を取り結び、重点商品を宣伝する。そういう巨大装置にする、と。

覚悟を決めてしまえば、話は早い。紅組司会に話を戻すと、2016年は有村架純。翌年4月からの朝ドラ「ひよっこ」宣伝枠。2017年は翌年4月からの「半分、青い。」の宣伝で永野芽郁。ではなく、また有村が選ばれた。「ひよっこ」の主題歌「若い広場」を歌う桑田佳祐に出演してもらうため、で間違いないと思う。

そして2018年が広瀬すず。拙著執筆時点で、2019年4月スタートの朝ドラ「なつぞら」のヒロインに決定していたし、「なつぞら」は記念すべき朝ドラ100作目だし、広瀬はすでに人気抜群だ。予告するしかないでしょ。

今年の審査員は誰になるか?

半分、青い。

朝ドラ枠は「半分、青い。」の脚本家・北川悦吏子に決定か。

【公式Twitter】連続テレビ小説「半分、青い。」より

「ブランド強化装置」の観点に立てば、自ずと読めるものがもう一つある。審査員だ。

こちらも、朝ドラ枠と大河ドラマ枠がそれぞれ2前後ある。司会者が「来年1月◯日スタートの大河ドラマ『〇〇』に出演する〇〇さんです」と紹介するというシンプルな宣伝手法。「今年放送の『〇〇』にご出演の」というバージョンもある。

過去の審査員を踏まえ、ここからは2018年の審査員を予測していく。総数が8〜10人と多いので、予告でなく予測とさせていただく。

まず朝ドラ枠だが、「半分、青い。」の脚本家・北川悦吏子は当選確実と見てよいと思う。

2017年、ヒロイン永野が司会に選ばれず、2018年の司会は次回作に。「半分、青い。」だけ紅白でスルーというわけにはいかないだろうから、北川で決定だ。2017年は大河ドラマ「西郷どん」の原作者・林真理子が選ばれていて、「作家枠」とも言える。

もう1人の朝ドラ枠は、「半分、青い。」に出演して評判になった豊川悦司などいい線だが、どうも審査員をするタイプに思えない。となると主演の永野芽郁か、「なつぞら」から広瀬の兄役の岡田将生か。2人とも、もあると思う。

大河枠は、1月6日スタートの「いだてん」前半主演の中村勘九郎はまず間違いない。後半主演の阿部サダヲとのダブル審査員か、または脚本の宮藤官九郎とのダブル「カンクロウ」かだが、宮藤は朝ドラ「あまちゃん」の脚本家として2013年に審査員経験済み。阿部になる確率が高いのでは、と予測。

大穴としては、古今亭志ん生役のビートたけしがいる。2014年にはタモリが審査員をしていて「大物枠」はあるのだが、実はこの時、翌年4月から3年ぶりの「ブラタモリ」再開が控えていて、その宣伝だったとも言える。

そこで思い出したのが、11月3日にNHKが放送した「コントの日」。ビートたけし以下、サンドイッチマンや劇団ひとり、渡辺直美らが出演、おもしろい番組だった。が、「それにしても突然、なぜコント?」と思ったのだが、たけし審査員への布石だったか?

「チコちゃんに叱られる!」を忘れてはいけない

チコちゃんに叱られる

5歳児のチコちゃんの「ボーッと生きてんじゃねえよ」と叱られたい人、続出。

NHK提供

審査員はこの他、スポーツ枠や文化人枠があって、オリンピックの後は必ずメダリストが選ばれている。平昌五輪のメダリストといえば羽生結弦で、審査員に選ばれることの多い「国民栄誉賞」も今年受賞しているが、ユズは2015年に審査員を経験済み。となると、宇野昌磨なのか、カーリング女子なのかなどの予測は、詳しい方にお譲りする。

そして、最後に1人だけ予測。岡村隆史審査員だ。

紅白が「自社ブランドの強化装置」である以上、2018年、急速に高視聴率番組に成長した「チコちゃんに叱られる!」から選ばれないわけがない。声担当・木村祐一は「Business Insider Japan」でインタビューさせていただいたが、やはり順当なのは、チコちゃんの隣にいる岡村だろう。

審査員の発表は毎年12月下旬。答え合わせしていただけたら幸いです。

矢部万紀子(やべ・まきこ):1961年生まれ。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、「AERA」や経済部、「週刊朝日」などに所属。「週刊朝日」で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長を務めた後、2011年退社。シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に退社し、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』。

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