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いまや自動車の「低燃費」はウリにならない? 安全装備先進国・日本のクルマ事情

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顧客満足度の調査を行っている国際的な専門機関のJ.D. パワーは、自動車に関する調査「2018年 日本自動車初期品質調査(IQS)」と「2018年 日本自動車商品魅力度(APEAL)調査」を発表した。

消費者がいまクルマの何を評価して、実際のクルマの品質がどうなのか? それを客観的に知ることができる貴重な調査になっている。

「低燃費」ウリが全盛の世の中で、実は燃費に対する魅力が下がっているなど、消費者の見方の変化が緻密にとらえられている。細かな分析を見ていこう。

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両調査とも、新車購入後2~9カ月のユーザーを対象にしているが、初期品質評価(初期の不具合に関する調査)ではダイハツがトップ。一方、商品魅力度調査(購入後の魅力度に関する調査)ではラグジュリーブランドが上位に入っている。

J.D. パワー

「低燃費」がウリにならなくなった理由

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「燃費が良いことはある意味、もう当たり前になってきている」

J.D. パワー ジャパンの執行役員 オートモーティブ部門 木本卓氏は、燃費の良さの魅力度が以前ほどではなくなってきた点についてこう説明する。

2015年と2018年の調査を比較すると、日本の消費者が車の「購入理由」として挙げるものの実質的なトップは、「燃費」からADAS(高度運転支援システム)をはじめとする「安全装備」に変わりつつある(1位は必ず「価格」なのでこの項目は除外)。

現在ガソリン価格は、小売価格でレギュラーが全国平均149.3円/L(12月10日/石油情報センター調べ)と、2年前と比較すると40円ほど値上がりしている。こうした外的要因の影響もあるとはいえ、2015年には「燃費」が「安全装備」に対しておよそ2倍高く評価されていた状況からここまでの変化は、もはや「低燃費=当たり前」になったことを意味している。

■J.D. パワーの自動車に関する各調査の詳細はこちらから

ハイブリッド車からの「買い換え」ユーザーの満足度が課題

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1000点満点の評価で、燃費評価は業界平均627点。ガソリン/ディーゼル車から電動パワートレイン車に買い換えた人は722点と評価する一方、ハイブリッド車から電動パワートレイン車(EV)へ移行したユーザーは、それほど燃費の良さを感じていない(680点)という調査結果が出ている。

出典:J.D. パワー「2018年 日本自動車商品魅力度(APEAL)調査

近い将来、EV(電動自動車)が増加するというのは一般的な見方だが、木本氏は調査結果の傾向から、今後も「燃費」を商品の魅力として訴求するのはますます難しくなるのではないか、と見ている。

その根拠は、「電動パワートレイン車の保有者のうち、ハイブリッド車からの買い換えユーザーは、燃費カテゴリーに対しての魅力を感じにくい」という調査結果があるためだ。

今回のJ.D. パワーの調査における「電動パワートレイン車」とは、日産「リーフ」などのピュアEVのほか、「セレナ e-POWER」や「ノート e-POWER」など発電用エンジンから電気を供給する車両や、三菱のアウトランダーの一部車種のようなプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)も含まれる。

ハイブリッド車は一般的な内燃機関車と同じくガソリンスタンドでの給油が必要だが、その回数が減る。そのため内燃機関車から、ハイブリッド車に買い換えたときは、「燃費の良さ」を実感しやすい。

本来、EVになれば充電頻度がさらに下がったり出費が減るはずだが、ピュアEVが世の中のスタンダードになるまでにはまだ時間がかかるという調査結果もある。

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2012年の調査だが、2050年までのEVの普及を推定したデータ。この調査では、2050年には90%の自動車が何らかのモーターを搭載する一方、その半分以上はPHEVなどエンジンも併用する車両になると予見している。

出典:International Energy Agency「Energy Technology Perspectives 2012」

つまり、実質的に電動パワートレイン車は、大半がPHEVやe-POWER系の、つまりガソリンエンジンと併用するタイプがまだまだ使われ続ける。そうなると給油の煩雑さや面倒なオイル交換といった手間は残り続けるため、生活スタイルの大幅な変化が感じにくいのだ。

内燃機関車からピュアEVへと至るプロセスの仕組み上、「燃費の良さが実感できなくなる」メカニズムがあるため、「燃費が良い」を売りにするのは、やはり自動車業界としては難しくなっていくという分析なのだ。

■J.D. パワーの自動車に関する各調査の詳細はこちらから

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電動パワートレイン車の購入ユーザーはEng/TMへの魅力度が高く、加速性能などには満足しているのがわかる。

出典:J.D. パワー「2018年 日本自動車商品魅力度(APEAL)調査)

国産車の不具合の少なさは未だにトップクラス

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一方、国産車・輸入車の満足度の最新調査はどうなっているのか。初期品質調査と、商品魅力度調査との対比でも、注目すべき結果が見えてくる。

2018年の初期品質調査では第1位がダイハツ、2位がホンダ、3位がメルセデス・ベンツとなっている。一方2018年の商品魅力度では1位がレクサス、2位がボルボ、3位がBMWで4位にメルセデス・ベンツと、輸入車やラグジュリーブランドがランクインした。

ここで注目すべきは、初期品質調査で2位のホンダは商品魅力度で10位、初期品質調査1位のダイハツの商品魅力度は14位と、ある種の逆転現象が起きていることだ。

「ブランド価値の高さが認知されている輸入車」という状況の一方、「納車後の不具合が少ない日本車」という構図はいまも続いている。

「輸入車はいまでも全自動車販売の1割もないほど」(木本氏)だが、不具合の少なさはいまや「国産並み」という声もある。それでも調査で初期品質に国産車との差が存在する理由は、「輸入車の仕様がいまだに日本のユーザーにパーフェクトにマッチしていない」からだと木本氏は言う。

たとえば車種によってはセンターコンソールのボタン配置が「(左ハンドルで)右手操作が前提」になっているケースもある。こうした車種は結果的に「右ハンドルでは運転席から操作がしづらい(遠い位置に操作ボタンがある)」クルマになってしまう。

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製造不具合と設計不具合の上位は一部の輸入車以外、大半が国産車。業界平均以上のメーカーやブランドでは、「製造不具合」は各社大差なく、「設計不具合」で差がついている(写真:J.D.パワージャパン 執行役員 オートモーティブ部門 木本卓氏)。

出典:J.D. パワー「2018年 日本自動車初期品質調査(IQS)

また日本車のモノづくりとしての品質の高さは、初期品質調査の別の項目にも現れている。調査を深掘りしていくと、日本車の不具合指摘は、設計時のデザインや構造に課題がある「設計不具合」が大半で、品質不良などの「製造不具合」はおおむね業界平均を下回っている。木本氏は「製造としての作り込みは日本車に一日の長があり、日本メーカーの製造レベルはいまだ高い」と結論づける。

日本人の生活が「アメリカ化」してきた?

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調査からはクルマと日本の消費者をめぐるユニークな傾向も見える。

たとえば日本人のライフスタイルは「アメリカ化し始めている」(木本氏)傾向が見えるという。

典型的なのは、内装分野の「カップホルダー」の評価だ。

日本ではこれまで、カップホルダーの使いやすさを指摘する声は少なかったが、2018年の調査では指摘のトップになっている。

この理由として「日本でもアメリカ流のコーヒーショップが増え、カップで飲む人が増えてきたこと、また保温マグを使って持ち歩く人も増えてきた。こうしたことを背景に、以前に比べてカップホルダーの利用頻度が上がってきた」(木本氏)ことが関係しているのではないかと指摘する。

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日本の不具合詳細上位項目(業界平均)では、カップホルダーの使い勝手が一番多いという結果に(リストの上から指摘が多い順)。評価する点が複雑なカーナビよりも、ただのカップホルダーの方が指摘が多いというのは驚きだ。

出典:J.D. パワー「2018年 日本自動車初期品質調査(IQS)

木本氏によると、実はアメリカでは従来、カップホルダーは車種の内装評価のなかで重要な項目の1つだった。これは、日本人の約4倍も乗車時間が長いライフスタイルを背景に、スタバなどのカップコーヒーや、保温マグを車内に持ち込んで運転する習慣があるためだ。

そのため各メーカーがカップホルダーの搭載位置や大きさについてさまざまな検討をしてきた結果、不具合指摘が減ってきた経緯がある。

現在、アメリカにおける車内装備の項目の評価では、カップホルダーは下位に後退し、ボイスコマンド操作の不具合指摘が1位、Bluetoothの使い勝手への指摘が2位になっている。Bluetoothは音楽の転送だけでなく、スマートフォンをボイスコマンドで操作するためにも使われる。

仮に、日本のクルマの利用スタイルがさらにアメリカ化するのだとすれば、日本でもBluetoothの項目が、現在の3番目から、上位に上がってくる可能性もあるだろう。

安全装備先進国・日本のクルマ選び

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それでは、「良いクルマ」の評価を決める上で重要なポイントは何になるのか。

「燃費」が差別化要素として成立しにくい今、商品選びの重要な要素は、前述の「安全装備」だ。

当面はこの装備の充実を「良いクルマ」の基準の1つと考えて差し支えはないだろう。

ただし、安全装備は日本では急速にコモディティ化しつつあるのも事実だ。

日本は、数年前にスバルがアイサイトを普及価格帯の車両に投入したことで、国内他メーカーも追随せざるを得なくなったという独特の状況がある。そのため「(自動ブレーキを始めとするADAS=先進運転支援システムの装備率は)日本市場は世界に比べてかなり高い。年次変動を見ても急速に増えている」(木本氏)のだ。

1つ言えそうなのは、現代の安全装備の中核となるADASは、機能の有無だけでは評価できず、「効き」の自然さ、「自動ブレーキが不自然ではないか」「再発進がスムーズか」など、感性評価が重要になる装備だということだ。

エアバッグなどのように「標準装備」になったあとは、その動作の「質」に着目するような時代になっていくはずだ。

■J.D. パワーの自動車に関する各調査の詳細はこちらから

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J.D.パワージャパン 執行役員 オートモーティブ部門 木本卓氏。

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