イーロン・マスク氏は火星を目指すBFRの設計を「抜本的」に変更している。
SpaceX; NASA; Mark Brake/Getty Images; Samantha Lee/Business Insider
- 11月17日(現地時間)、イーロン・マスク氏は火星を目指す再利用可能なビッグ・ファルコン・ロケット(BFR)の設計に“抜本的”な変更を加えるとツイートした。
- さらに19日にはロケットの2つの主要パートの名称を「スターシップ(Starship)」と「スーパーヘビー(Super Heavy)」に変更したことを明らかにした。
- スペースXの現行の主力ロケット、ファルコン9はもはや再利用のためにアップグレードされることはない。代わりに火星ロケットの開発を「加速」させるとマスク氏は述べた。
- 同氏は火星への無人ミッションを2022年までに、有人ミッションを2024年までに行いたいと語っている。
イーロン・マスク氏は火星移住に真剣に取り組んでおり、火星を目指すロケットについて試行錯誤を続けている。
11月17日(現地時間)、マスク氏はビッグ・ファルコン・ロケット(Big Falcon Roket:BFR)の設計に“抜本的”な変更を加えると語った。BFRは火星を目指すロケット。39階建てのビルに相当し、再利用可能でロケットブースターと宇宙船からなるシステムだ。
「我々は、もはや再利用のためにファルコン9のセカンドステージをアップグレードする計画はない」と同氏はスペースXの主力ロケット、ファルコン9について17日にツイートした。
「代わりにBFRの開発を加速させる。新しい設計は非常にエキサイティング! いい意味で予想に反するものだ」
さらにマスク氏は、これまではビッグ・ファルコン・スペースシップ(Big Falcon Spaceship)およびビッグ・ファルコン・ブースター(Big Falcon Booster)と呼んでいたBFRの2つの主要パートの新しい名前を発表した。
「スターシップ(Starship)」と「スーパーヘビー(Super Heavy)」だ。
「スターシップは宇宙船/上部ステージ、スーパーヘビーはロケットブースター」とマスク氏は11月19日にツイート。
また、マスク氏はスーパーヘビーはファルコン9ブースターと似ていると付け加えた。つまり自力で着陸し、燃料を補給して何度でも打ち上げできる。
「ただし、もっと大きい」
左からBFR、NASAのサターンV、自由の女神、スペースシャトル。
Olivia Reaney/Business Insider
何が新しい名前や設計変更のきっかけとなったのかは明らかではない。だが同氏が壮大な火星移住計画に大きな変更を加えたのは今回が初めてのことではない。おそらく最後でもないだろう。
「スターシップ」「スーパーヘビー」について分かっていること
雲を抜けて宇宙に飛び立つBFRの予想図。
SpaceX
マスク氏は2002年、NASAが人類を火星に送る具体的な計画を持っていないことに業を煮やしてスペースXを設立。
以来、同社は低コストで高い性能を持つロケットを開発、ロケットのグローバルマーケットを破壊した。商業ロケットの打ち上げを行いつつ、マスク氏は100万人を火星に送り、人類を「救う」計画に取り組んだ。
マスク氏は当初、火星を目指すロケットを「ファルコンXX(Falcon XX)」と呼んだが、その後「マーズ・コロニアル・トランスポーター(Mars Colonial Transporter)」に変えた。
同氏はロケットの公式なデザインを2016年のプレゼンテーションで初めて発表。全長400フィート(約122m)のロケットと宇宙船を「惑星間輸送システム(Interplanetary Transport System)」と呼んだ。
2017年末にはロケットの全長は50フィート(約15メートル)ほど短くなり、名前もBFRに変わった。
2018年9月には全長が再び387フィート(約118m)まで伸び、着陸装置を兼ねる翼も加わった。マスク氏が「最終案」と呼んだこのプランでは、180フィート(約55m)の宇宙船が219フィート(約67m)のロケットブースターの上に乗っている。
同氏によると、100人の乗客を火星に運ぶことができる。
BFRのサイズ。
Olivia Reaney/Business Insider
だが19日、マスク氏はスーパーヘビーは「地球の強い重力から離脱する」ためには必要だが「他の惑星や月に向かう際には必要ない」と付け加えた。
同氏は、これらの変更を含むロケットの新たな予想図をまだ提示していない。
またマスク氏は、ファルコン9を「ミニBFR」として、フルスケールのシステムのテストに使用する計画は破棄したと語った。
さらに「スターシップ」という名前は、太陽系のみならず、今後のバージョンアップによって近くの恒星系まで行けるようになることから名付けたと述べた。
今回の設計変更が前澤友作氏の月周回飛行にどんな影響を与えるのか、そもそも影響があるのかどうかは現時点では分からない。
前澤氏が「#dearMoon」と呼ぶミッションは、BFRが火星に向かうためのファーストステップとなるものだ。
マスク氏は、火星への無人ミッションを2022年までに、その後、有人ミッションを2024年までに行いたいと語っている。
スペースXは、ロサンゼルス港の巨大テントの下で宇宙船のプロトタイプを製造中。設計変更が今、18階相当まで進んでいる製造工程にどのような影響を与えるのかは分からない。
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)