MBA不要論時代に「なぜそれでも学ぶ?」シカゴ大ビジネススクール学長が語る

ラジャン氏

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのマダブ・V・ラジャン学長。10月末に来日した際にインタビューに答えた。

撮影:小島寛明

日本のMBA(経営学修士)が、振るわない。2017年度は南山大学と中京大学の経営大学院(ビジネススクール)が、2013年度には日本大学が学生の募集を停止した。

MBAを取得するには、2年ほどの時間と学費がかかる。ネット上には、MBA不要論も飛び交う。

会社での昇進や、転職の役に立たないなら、時間と費用は無駄になる。MBAを取得する意味はどこにあるのだろう。

世界のビジネススクールランキングでトップ10の常連校であるシカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのマダブ・V・ラジャン学長がBusiness Insider Japanの取材に応じた。

ラジャン氏は「世界は、ものすごい速さで変化している。固まったものの見方、考え方では、新しい世界に対応できない。新しいスキルと考え方に触れられることが、MBAの強みだ」と話す。

日本人留学生のプレゼンスは低下ぎみ

シカゴ大

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの外観

提供:シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス

MBAと言えばアメリカのビジネススクールが頭に浮かぶが、近年、日本人学生のプレゼンスは低下しているという。

ラジャン氏は「1990年代を振り返ると、銀行などを中心に、日本からたくさんの学生がシカゴ大に留学していた」と話す。

2018年には日本人13人がシカゴ大のMBAプログラムに入学した。「近年では、最も高い数字で、我々としては非常に喜んでいる」(ラジャン氏)という。

MBA取得を目指して海を渡る人が増えにくい原因は、日本企業の現状にあるだろう。

2018年1月に文部科学省が公表した資料『経営系大学院を取り巻く現状・課題について』は、「米国の上場企業管理職等約4割はMBA取得者である一方、日本の企業役員等は大学院修了者が1割以下にとどまる」と指摘している。日本企業の役員らの最終学歴は大学院修了者が5.9%にとどまる一方で、アメリカの上場企業の管理職の40.9%がMBAを取得しているという。

この資料、日本の数字が2007年の調査、アメリカの数字は1997年の調査と古く、現在は少しは変化が起きていると考えられるが、日米の違いを示しているとは言えるだろう。

「日本企業は大学院での勉強よりも、自社での経験の蓄積を重視する傾向が強いのではないか」と問いかけると、ラジャン氏は「それは、間違いだ」と断言した。

自分の仕事をしているときは、全体のごく小さな一部だけを見ているが、MBAのプログラムは、狭い業務の範囲を超え、広い視野を身につける機会になる

ビジネスの原理、本質を学ぶのがMBA

香港のシカゴ大キャンパスイメージ

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの香港キャンパスのイメージ

提供:シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス

文部科学省は2018年1月に、「経営系大学院機能強化検討協力者会議」を設置し、ビジネススクールの機能強化について、有識者らが議論を重ねている。この会議の中で示された「本協力者会議における基本認識」では、次のような課題が挙げられている。

  • 我が国の多くの企業が自社教育によって当該企業に必要な人材を養成してきたが、グローバル化が急速に進展する中で、求められる能力が多様化し、自社教育が困難化
  • 情報技術の進展と相まって、企業活動における国境のボーダレス化が加速度的に進む中で、海外企業のMBAホルダーとの交渉が不可避的な状況が発生。こうした交渉の場では、MBA 的発想が不可欠。
  • 国境を越えた企業活動が日常化し、多様性に対応できる経営人材の養成は喫緊の課題。

不確実性が増す時代において、企業の課題に対応できる人材を養うのがMBAプログラムの役割だと、ラジャン氏は言う。

我々が重視しているのは、どのように考え、どのようにデータを扱い、どのように周囲の人に影響を与えるかだ。いま、どの国にいて、どんな業界で、どんな役割をしているかは関係ない。ビジネスの原理、本質を学ぶことで、不確実な世界に対応することができる

(文・小島寛明)

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