野村不動産がホテル参入。激戦勝ち抜くカギは「地域との連携」

ホテル外観

野村不動産グループが初めて運営するホテルは、観光客が多い東京・東上野に建てられた。

提供:ノーガホテル上野

野村不動産グループが手掛ける初のホテル「NOHGA HOTEL UENO(ノーガホテル上野)が11月1日、東京・東上野で開業した。

2020年の東京オリンピックやインバウンド需要拡大の追い風を受ける成長マーケットに“後発”として参入した野村不動産グループは、既存事業で掲げてきた「街づくり」の要素をホテルに取り入れ、独自のポジションを狙う。

2人客想定、利用の半分は外国人

塚崎社長

ホテルブランドに取り入れた「ノーガ」は、野村の頭文字と、「偶然の幸せ」を意味する仏教用語「冥加」を組み合わせた造語。塚崎敏英社長は、「地域の人々も入りやすく、宿泊者と交流が生まれるホテルにしたい」と話す。

撮影:今村拓馬

浅草、上野を擁し、江戸時代の文化が色濃く残る台東区に位置するノーガホテル上野は、130室全てツインかダブル。レジャー利用を想定し、通常客室にはパソコン作業をするデスクも設置していない。

開業から3週間、宿泊客の9割以上が2人連れで、外国人が半数超を占める。野村不動産ホテルズの塚崎敏英社長は「お客様の層は、ほぼ想定通りです」と話した。

野村不動産でオフィスビル事業に長く携わってきた塚崎氏は、ホテル事業進出のため2017年10月に設立された同社社長に就任して1年になる。

「分譲住宅なら販売すれば終わり。賃貸オフィスでも、テナントさんが入居すれば一段落です。一方ホテルは、毎日部屋を売り続けなければならず、緊張の日々です」

ホテル予約サイト「Booking.com」のレビューは10点満点の9点台という高い評価を受けているが、「スタッフが慣れていない」とのコメントも複数あり、「毎日レビューをチェックするようになりましたね」(塚崎氏)。

ビジネスでもなく、ラグジュアリーでもなく

オリジナルプロダクト

ホテルでは地域の商品をホテルで採用したり展示し、宿泊客に紹介していく。

撮影:今村拓馬

野村不動産がホテル事業進出を検討し始めたのは3~4年前だ。

「ホテル運営を手掛ける不動産ディベロッパーは珍しくないですが、5年ほど前までは、稼働率も宿泊単価も高くなく、事業として成立しにくいと考えられてきました。正直に言うと日の当たる分野ではなかった」

その後景気が上向き、政府がインバウンド拡大に本腰を入れたのも受け、成長マーケットと見定め、2年半前に数人のチームを立ち上げた。目指したのは、野村不動産の理念「あしたにつながる街づくり」を体現する、宿泊特化型のビジネスホテルでもなく、高級感を前面に出したラグジュアリーホテルでもない、にぎわいがある街の起点になるようなホテルブランドだという。

ノーガホテル上野も、宿泊客と地域を結びつける拠点としての役割を意識している。台東区内の伝統工芸の職人や飲食店経営者に協力を求め、客室に家紋を飾ったり、江戸切子をレストランで使っているほか、自転車での街巡りなど、地元と連携したワークショップも開催する。

ホテルには和の雰囲気が随所に散りばめられているが、塚崎氏は「ホテルブランドとして和を意識しているのではなく、台東区の色を出していった結果です。今後も地域の個性を反映したホテルをつくっていく」と話す。

未経験分野への進出、人材確保に苦労

部屋

客室は20平方メートル前半の広さが中心。外国人旅行者を主な客層に想定し、しつらえている。

撮影:浦上早苗

ホテル事業進出を決めたとき、野村不動産グループには、ホテル業界の経験者はほとんどいなかった。

塚崎氏は、「分譲マンションブランド『プラウド』での豊富な経験もあり、上質で快適な施設をつくるという面では、高いハードルを感じることはなかった」と話す一方で、「ホテルの運営は全くの未経験で、人材集めと育成の大変さを実感している」と明かした。

立ち上げにあたって、外部のアドバイザーに協力してもらい、経験者の採用で対応しているが、宿泊業界は、国会で審議中の外国人労働者受け入れ拡大業種に選ばれたほど、人手不足が顕著な分野でもある。

「今後、東京や関西を軸に年に2~3軒のペースでオープンを計画しています。秋葉原や京都では土地の選定を進めていますが、人集めを考えると、2軒目は早くても再来年だと思います」(塚崎氏)という。

スペックからサービスの付加価値へ

東上野界隈

ホテルが位置する台東区は、下町文化が濃く残り、外国人にも人気のエリア。

撮影:浦上早苗

ホテル市場はインバウンドの拡大を視野に、建設ラッシュが続く。

法人向け不動産サービスCBREの調査によると、東京23区・大阪市・京都市の3大マーケットのホテル客室数は2017年から2020年にかけ、38%増加する見込みで、東京オリンピック後に供給が過剰になる「2020年問題」もささやかれている。

塚崎氏が何度か「遅まきながら参入した」と口にした通り、野村不動産グループは大手とは言え後発組。グローバルホテルチェーンや、最近増えてきたライフスタイル型ブランドとの競争に、どのように向かっていくのだろうか。

「確かに、現在のホテルマーケットは好調ですが、今後、景気や災害などの変動は避けられません。それでも、同じ料金設定の他のホテルに比べて競争力があれば、お客様が来なくなることはないと考えています」

塚崎氏は、競争力の鍵として「運営の付加価値」を挙げた。

「これまで、ディベロッパーの競争力はいい土地に高スペックの施設を建てることでしたが、オフィスではWeWorkのような運営面の付加価値を提供する企業が成長し、物流施設でもオートメーション化にどれだけ対応できるかが求められています。不動産業界全体で、サービス面の付加価値が重視される流れにあり、その典型がホテルです」

WeWorkが入居者同士をつなぐように、ノーガホテルは、宿泊者と地域をつなぐことで、ディープな外国人旅行者のニーズを捉えようとしている。

(文・浦上早苗)

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