LINEは、中小規模店舗(SMB)向けカンファレンス「LINE SMB Confrerence」を東京・芝公園で開催した。
LINEは、2018年度に日本のキャッシュレス化を加速する「Payment Revolution(決済革命)」構想を掲げている。
2019年8月末までのコード決済のポイントバック率3%増や、11月22日から始まった非接触決済「QUICPay+」対応など、さまざまな取り組みもこの構想の一環だ。
しかし、この決済革命構想には2つの側面があり、ポイント増量やQUICPay+対応は消費者向けのもの。もう1つの側面、それはキャッシュレスを導入する店舗側に対するものだ。
そんな店舗側、とくに日本の事業者の約99%を占める中小企業店舗(Small to Medium Business、いわゆるSMB)向け施策の詳細を、同社は11月26日開催の「LINE SMB Conference」の場で発表した。そのうちの新施策5つを解説する。
1. 公式アカウントを一新、目指すは“一斉配信型”からの脱却
LINEの提供するSMB向けのソリューション。
LINEには現在、大企業向けに「公式アカウント」と、中小企業~個人事業主向けに「LINE@」という2つの法人向けアカウントの仕組みがある。この2つが2019年春から「公式アカウント」に統合される。
統合自体は、すでに6月に開催された「LINE CONFERENCE 2018」で発表済みだが、今回は具体的な統合時期(2019年春)や、それに先駆けて12月から公式アカウントの無料プランが開始される旨が明らかになった。
LINEの出澤剛社長。
プラン改定により、LINE@より強力な公式アカウントの「分析ツール」や「配信機能」が手軽に利用できるようになるが、メッセージの配信量などの使い方によっては割高になる事業者も出てくる。
この問題に対し、LINEの出澤剛社長は「そういうケースもある」と認める一方、今回のリニューアルの背景を、従来の一斉送信型のメッセージ配信機能を“パーソナライズ型”に変えていく意図もあると話している。
「コンセプトは皆さんに同じメッセージを送るのではなく、より必要な方に送ってエンゲージメントを高めていく」(出澤氏)
2. SMB向け「友だち追加機能」もついに解禁
LINE PayでLINE公式アカウントもしくはLINE@の友だち追加が促される。
決済のLINE Payとプロモーションのための公式アカウントは、今後さらに連携が強化される。
すでに大企業向けには提供されているが、11月28日からはSMB向けにもLINE Pay決済後の「友だち追加機能」が解放される。
この機能は、消費者がLINE Payで決済すると、その店舗の公式アカウント(当分はLINE@も)がLINEアプリ上に表示されるというもの。
店舗側から見れば、LINE Payで決済を効率化できるだけではなく、従来のチラシや紙のポイントカードといったものもすべて電子化できる、ということを意味する。
3. 実は大盤振る舞いな「毎日入金」が2019年からスタート
LINE Payの売上金が、希望日に入金されるようになる。
同社は決済革命を掲げて加盟店を増やしているが、11月22日のQUICPay+対応により、1つの目標であった「対応店舗100万店舗」は達成したとした。
その中であった要望の1つに「支払いサイクルの見直し」があったという(現在、LINE Payの売上金は月末締め・翌月末支払い)。
同社はその支払いサイクルを一新し、希望日の毎日入金を2019年早期にスタートする。精算サイクルが短縮されることは中小規模店舗には大きな意味があるほか、振込手数料がLINE側の負担になることも店舗負担の軽減という点で大きなポイント。見た目は地味ながらかなり大盤振る舞いな施策と言える。
4. freeeとの共同プロダクトも12月6日開始
LINEとfreeeで共同開発した経理ソフトが12月にリリースされる。
LINE Payによるキャッシュレス化で表側の「キャッシュのやり取り」を効率化できたら、店舗としてはバックオフィス業務もデジタル化できれば効率化をさらに進められる。そこでLINEは、クラウド型の確定申告サービスなどを展開するfreeeと共同でSMB向けの経理サービス「LINE店舗経理」を12月6日に提供を開始する。
利用料金は月額980円~3980円を予定。ただし、利用料金はサービス開始キャンペーンにより最大3カ月間無料となる。
5. ビジネスチャット「LINE WORKS」に無料プランが追加
LINE風の使い勝手で好評を得ている法人向けLINE「LINE WORKS」に、無料プランがリリースされた。
バックオフィスの効率化という点では、経理分野以外の新しいアプローチもあった。同社の法人向けグループウェア「LINE WORKS」の無料プランがそれだ。
LINE WORKSは、2月に有料プランの導入数が1万社を超えたと発表していたが、今回の発表会で2万7000社まで導入が進んでいると公表(いずれもグローバルでの導入社数)。
今回の無料プランは「30日限定の試用期間では有用性を図れない」という声に応えたものだ。無料プランでは100名までのグループの利用を想定しており、チャットやスタンプはもちろん、アンケート、個人向けLINEとのやりとりなどの機能は利用できる。セキュリティー機能の一部も有料版と同じものが利用でき、メンバー退社後のデータ削除などに対応している。
LINEは、決済や社内コミュニケーションを変えるか?
出澤氏は発表会の最後に、メッセージアプリとしてのLINEの誕生により「メールの数、電話の回数が減ったのではないか」と振り返った。一方でSMBを取り巻く決済や社内コミュニケーションの世界は「ここ10~20年そんなに変わっていないのではないか」と指摘。「SMBの世界でもLINEがつくってきた変革を目指していく」と意気込みを語った。
(文、撮影・小林優多郎)