新型iPhoneもお手上げ…「中国スマホ市場失速」でもシャオミが絶好調な理由

シャオミタワー

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新iPhoneの不振が示すように、スマホ市場が減速している。市場調査会社IDCによると、2018年7〜9月の世界のスマートフォン出荷台数は前年同期比6%減少し、4四半期連続で前年割れとなった。

中でも世界のスマホ消費の3分の1を占める中国では、出荷台数が6四半期連続で減少し、市場の停滞が鮮明となっている。自国の巨大な市場を足掛かりに、サムスン、アップルの2強を脅かす存在に成長した中国メーカーは、伸びしろの大きい新興国でのシェア拡大にまい進しつつ、中国市場の変化に目を凝らしている。

世界4位のシャオミ(小米科技)は11月19日、自撮りアプリ大手の「美図(Meitu)」とスマホ事業での提携を発表。「中国スマホ業界の再編の引き金になるのでは」と注目されている。

国内減速しても海外で稼ぐ中国メーカー

スマホメーカーのシェア

グローバルのスマホ市場で、中国メーカーのシェアが初めて50%を超えた。

調査会社canalysによると、世界のスマホ市場減速を受け、7〜9月はスマホメーカー上位10社中7社が出荷台数を減らした。特に中国市場の落ち込みは顕著で、調査会社各社の数字に違いはあるが、Counterpointは出荷台数が8%減ったとまとめた。

にもかかわらず、中国主要メーカーの業績は伸びている。ファーウェイ(華為技術)の出荷台数は前年同期比33%増加し、アップルを上回って2位につけた。4位以下のシャオミ、OPPO、vivoなど中国メーカーの合計シェアは52%となり、初めて50%を超えた。一方、世界トップのサムスンの出荷台数は14%減少し、シェアも1年前の22.0%から20.4%に低下した。

世界のシェア

スマホ市場の縮小でサムスン、アップルはシェアを減らしている一方、中国メーカーは成長を続ける。

スマホの普及が一段落し、買い替えサイクルが長期化したことで、中国のスマホ市場は2017年からマイナスに転じている。中国メーカーは早くからこの状況を見越してインドやインドネシアのような新興マーケットに猛攻をかけ、サムスンの足場を崩しているのだ。

その“戦果”はシャオミが19日(米国時間)に発表した2018年7〜9月期の決算にはっきり刻まれている。売上高が前年同期比49.1%増の508億元(約8300億円)、純利益は同17.3%増の29億元(約470億円)で、市場予測を大きく上回った。

好決算の最大の要因は、海外事業の躍進だ。海外市場売上高は同112.7%増の223億元(約3600億円)で、売上高全体の43.9%を占めた。2017年の海外売り上げ比率が28%だったことを考えると、その伸びは目覚ましい。

Counterpointによると、シャオミの7-9月の海外でのスマホ出荷台数は83%増加。伸び幅は中国4大メーカーの中で最大だったほか、インド、インドネシアではサムスンをしのぎシェア1位となった。雷軍CEOは、国内市場の飽和を受け「今後は欧州市場を重点的に攻める」と宣言。海外売り上げ比率を5割以上に高める目標を語っている。

自国では不振際立つシャオミ

中国シェア

中国マーケットだけをみると、シャオミは苦戦している。

しかし、喜んでばかりはいられない。中国市場の低迷を受け、シャオミの中国スマホ販売台数は1年半ぶりに減少した。IDCによると、シャオミは今年1-9月、海外販売を100%以上伸ばしたのに対し、中国では6.4%増にとどまった。7-9月に限れば、11%減と急速に落ち込んでいる。

シャオミ

中国消費者の変化を受け、シャオミは今年に入って高価格帯のスマホを相次ぎリリースしている。

REUTERS/Bobby Yip

中国のインターネット調査会社極光が発表した「2018年Q3スマートフォン業界報告」によると、シャオミはグローバルでは中国メーカーの中で2位のポジションにつけているが、おひざ元の中国市場ではファーウェイ、OPPO、vivoにシェアで負けている。

シャオミが中国市場で振るわない理由は2点考えられる。1つ目は言うまでもなく、マーケットの低迷にあるが、シャオミの商品構造も一因とされている。

中国は最近まで、「1000元(約1万6000円)スマホ」と呼ばれる低価格スマホが売れ筋の中心で、シャオミも同価格帯「紅米」シリーズに力を入れ、シェアを伸ばしてきた。2018年1-3月期、シャオミの1299元(約2万1000円)以下の機種の販売台数は全体の78%、売上高比では61.5%を占めた。

しかし、中国市場ではスマホの高価格帯へのシフトが進んでいる(引いてはそれが、買い替えサイクルを長期化させている)。シャオミも2018年に入り、「Mi 8」シリーズをはじめ、3000元以上(約5万円)の商品を相次ぎ発売したが、そこではファーウェイやOPPOが優勢で、思うような結果を出せていない。

スマホ市場とともに急成長した「美図」

美図

2016年12月のIPOを記念して、セレモニーでポーズをとる美図の経営者たち。

REUTERS/Bobby Yip

国内市場を打開する一手として、シャオミが7-9月期決算と同時に発表したのが、美顔アプリ「美図」との提携だった。美図は自社の「美図スマホ」ブランドや技術、商品のライセンスを、30年間にわたってシャオミに提供する。

業界再編に直結する大型合併が頻発する中国テック業界にあって、一見地味に見える両社の提携。だが、事前に全く噂がなかったことに加え、両社の事情や組み合わせの面白さもあって、大きな注目を浴びることとなった。

meitu

Meituの公式サイト。

PC向け画像加工ソフトで2008年に創業した美図は、スマホ向け美顔アプリ「美図秀秀(メイトゥーシウシウ)」で大成功を収めた。海外でも「BeautyPlus」という名前でアプリを展開し、実は日本でも使っている女性は少なくない。

セーラームーンスマホ

美図が発売した、日本の人気アニメとタイアップしたスマホ。

美図公式サイトより

2017年に中国の20代女性にアンケートをした際には、8割がアプリを使っていたほどの浸透ぶりで、同年8月時点の美図秀秀のダウンロード数は約11億回、月間アクティブユーザー数は4億5000万と、Twitterをも上回る規模だった。

アメリカ経済メディアTIMEは同年のお勧めアプリ25の17位に美図秀秀を選出し、「美図の名を知らずとも、InstagramやFacebookで、このアプリを使って加工された写真を見ているはずだ」と評した。

美図は2014年5月にショートムービーアプリ「美拍(Meipai)」もリリースした。2016年時点で、月間アクティブユーザーは1億4100万人に増え、ユーザーの1日平均利用時間も31.5分と粘着性の高いサービスに成長。中国のショートムービーユーザーの62.4%が好きなプラットフォームベスト3に選び、テンセントなどのサービスをしのぐ最大手と目されるようになった。

中国のスマホ市場とともに成長した美図は、「美顔」「女性向けサービス」を切り口に、シャッターを押すだけで被写体を美しく加工する「美図スマホ」「美図カメラ」を発売。ECにも進出し、2016年12月に香港で上場した際には「テンセント以来の大型IPO案件」ともてはやされた。

美図の業績悪化は、中国のテック業界の縮図だ

シャオミ

2018年7月、香港で上場し、ドラを鳴らすシャオミの雷軍CEO。

REUTERS/Bobby Yip

一方で、美図は創業から今に至るまで赤字が続き、Twitterと同じく「数億人のユーザーをどう収益に結び付けるかが課題」と言われてきた。

美図の収益源は、スマホアプリの広告収入と、自撮り好きの女性ニーズに特化した「美図スマホ」に限られているが、美図スマホのターゲットは極めて狭く、収益の柱としては期待できない。

そして2018年8月下旬、美図の中間決算で、売上高が上場以来初めて減少し、赤字額も1億9900万元(約33億円)と大幅に拡大したことが分かると、市場には衝撃が走り、懐疑が膨らんだ。

不振が際立ったのは、ショートムービーアプリの「美拍」だ。6月30日時点のユーザー数は4277万人で、半年前から56.4%も減少した。2年遅れで後発の参入した斗音(TikTok)や快手(Kuaishou)が、あっという間にユーザーを奪ってしまったのだ。

美図の業績悪化は、中国のテック業界の縮図そのものだ。

新しいサービスがヒットすると、ライバルが一斉に参入し瞬く間にレッドオーシャンとなる。企業はシェアを維持するために、収益性を犠牲にしてユーザー数拡大に走る。シェア自転車、配車サービス……多くの業界で起きてきた消耗戦に、美図も巻き込まれた。

今回、シャオミに事実上ライセンスを譲渡したスマホ事業に関しても、競争力は低下していた。美図のデバイス収入は2017年前半の19億3300万元(約320億円)から2018年前半には14億8000万元(約240億円)に縮小。8月時点で同社幹部は、「中国のスマホ市場の縮小は今年いっぱい続く」とコメントしており、将来の先細りをを見越して、スマホブランドとしての成長をシャオミに託すと決めたのだろう。

シャオミ・美図の提携は中国式買収に一石を投じる

性別ユーザー構成比

シャオミユーザーの男性比率は7割に達する一方、美図はほとんどが女性だ。

シャオミと美図のスマホ事業での提携は、理想的な組み合わせだと受け止められている。

シャオミは男性ユーザーの比率が70%を超え、女性客の取り込みは以前からの課題だった。

最近は旗艦モデルのアンバサダーに、韓国の男性アイドルグループ「EXO」の元メンバー、ウー・イーファンを起用するなど、女性へのアピールを強めているが、

「シャオミ=ガジェット好きの男性御用達」

「ファーウェイ=高価格帯・ビジネスパーソン向け」

「OPPO、vivo=女性、若者受け」

というイメージは長く定着しており、覆すのは容易ではない。

年齢

シャオミに比べ美図スマホのユーザーは年齢が低いのも特徴。

一方、美図スマホの価格帯は2000-4000元で、顧客層の中心は大都市の若い女性とあって、シャオミの空白地帯を埋める存在になると期待される。

OPPO、vivoはカメラ機能を売りにしているが、美顔アプリでブランド力を形成してきた美図はこの点でも対抗軸になりうる。

美図にとっても、シャオミが構築してきた販売チャネル、ブランドイメージを活用して、販売を伸ばせる。

中国テック界のM&Aは、有望なスタートアップをBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のようなテック大手が抱き込む形か、競合相手を飲み込む形が大半だった。

これに対して、シャオミ・美図の提携は、スマホ市場の飽和が近づく中で、得意分野と課題がはっきりした企業同士の“大人の週末婚”と言える。IDCは直近のレポートで、「美図とシャオミの成長だけでなく、スマホ市場全体にも、大きなインパクトを起こしていくかもしれない」と、再編が進む可能性を指摘した。

(文・浦上早苗)

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