大手3キャリアが震え上がった、総務省「緊急提言」衝撃の内容 —— 本当に“競争促進”なのか?

検討会の模様

11月26日に開催された「モバイル市場の競争に関する検討会」。キャリア関係者にとっては、衝撃の内容だったはずだ。

写真:石川温

「こんなんじゃ、“競争するな”と言っているようなもんじゃないか」

11月26日に総務省で行われた「モバイル市場の競争に関する検討会」を傍聴したキャリア関係者は、会が終わるとそう言って天を仰いだ。

傍聴していた業界関係者の誰もが、危機感を抱いたはずだ。周囲には、こんな提言が実現してしまったら、通信業界は終わってしまうのではないか、という悲壮感が漂っていた。

有識者によって発表された2つの「緊急提言案」の内容は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク各社のビジネスに大打撃を及ぼす可能性があるものだった。

月々の割引なし、「docomo with」に待った?

docomo with

ひとつは「シンプルで分かりやすい携帯電話に係る料金プランの実現」として、端末代金や通信料金の割引にメスが入った。

提言では「端末購入を条件とする通信料金の割引を廃止」とある。

これが実現されれば、端末を購入すると2年間、毎月、通信料金を割り引いてくれるNTTドコモ「月々サポート」やKDDI「毎月割」、ソフトバンク「月月割」はすべて廃止だ。

また、NTTドコモが提供している、4万円以下の端末を購入すると、ずっと毎月1500円が割り引かれる「docomo with」も廃止しなくてはいけなくなりそうだ。

KDDIやソフトバンクは、端末の割引をやめつつあり、端末代金と通信料金を分離する「分離プラン」に移行しているため、影響は軽微かもしれない。一方で、NTTドコモは、昨年、始めたばかりの「docomo with」も封じられてしまっただけに、抜本的な料金プランの改定が必要になってきそうだ。

KDDI、ソフトバンクを直撃する「4年縛り」見直し

auとソフトバンク

写真:小林優多郎

一方、分離プランを導入しているKDDIやソフトバンクにとって、大打撃になりそうなのが、提言の中にある「端末買換えサポートプログラム(4年縛り)について抜本的な見直し」という項目だ。

そもそもKDDIとソフトバンクは、分離プランを導入することで、端末代金の割引はしないようにした。しかし、それでは、最新のiPhoneを購入しようとすると、ユーザーは10万円以上の負担を強いられることになる。仮に24回払いをしたところで、毎月、5000円以上、端末代金としての出費がかさむことになる。

そこで、月々の負担額を減らすために、支払い回数を48回、つまり4年に設定して、月々の端末代金を2000円台に収めるような工夫をした……というのが、いわゆる「4年縛り」が生まれた経緯だ。また、同じ端末を4年、使い続けてしまうと、端末も売れなくなるということで、2年が経過したら、残債の負担なしに新しい端末に機種変更できる仕組みも取り入れた。 この条件が、通信契約と紐付いていたため「抜本的な見直し」を総務省が求めたのだった。

総務省がここまで大胆な提言を発表したのは、「現在のスマホ市場に問題点が多い」としているからだ。

モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言(案)概要

総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会(第4回)」として公開された緊急提言の概要資料。明確に、購入する端末によって料金が異なることが不公平であるなどの状況を「問題点」と列記している。

出典:総務省「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言(案)概要」

例えば、「端末購入を条件とする、通信料金の割引」を廃止する背景にあるのは「購入する端末によって通信料金が異なるのは不公平だ」という考えからきている。確かに毎月、割引される料金は、購入した端末によって異なる。高額な製品や売れ残った機種などは割引額が高くなる傾向があり、これが不公平だというわけだ。

また、4年縛りの見直しを迫るのは、4年間の割賦払いと言いつつも、実際は通信契約の継続を条件としているため、4年どころか結局、「一生縛り」になっている点を問題視している。ユーザーを強く囲い込むことは、競争を阻害しているというわけだ。

ただ、これらの料金プランや端末の購入方法は、いずれもキャリアが創意工夫し、競争の上で生まれたものだったことを忘れてはいけない。

端末を購入すれば、24回、毎月、通信料金を割り引くという仕組みは、ソフトバンクが通信事業に参入した直後に生み出した手法だ。

当時、ケータイが実質0円や1円で売られており、総務省が分離プランの導入をキャリアに迫っていた頃、それでは端末が売れなくなると、ソフトバンクが編み出したのが「新スーパーボーナス」だったのだ。

その後、iPhoneが導入されたが、当時はなかなか売れなかった。しかし、実質0円となるキャンペーンをかませることで、爆発的なヒットになったのは言うまでもない。結局、この販売方法を他社が追随していまの状況となっている。

4年間の割賦払いに関しても、ユーザーの負担を減らそうと、苦肉の策で生まれたものと言えるだろう。

総務省の言う「競争促進」は逆効果ではないか?

国会議事堂

政府の要求は、「競争促進」として本当に機能するのだろうか?

写真:今村拓真

今回の総務省による提言は、これまでキャリアが提供してきた料金プランや販売方法をすべて否定するという大胆なものだ。

これから、キャリアは、総務省の意向に沿った、新しい料金プランをゼロベースから作らなくてはいけなくなる。つまり、我々ユーザーは、また自分が契約しているキャリアの料金体系をイチから理解し直す必要があるのだ。

確かにいま、キャリアが提供する料金プランはわかりにくいところがある。特に、キャンペーンが多くて、いつからいつまで割り引かれるのかが理解しにくい。

ただ、キャンペーンに関しては、他社のキャンペーンにいち早く対抗し、タイムリーに値下げするために、乱発されてきたことも忘れてはならない。3社の競争の結果が、キャンペーンというかたち現れているということもあるのだ。

今回、総務省がガチガチの提言を出したことで、各社の料金プランやキャンペーンの競争を阻害する恐れもあるだろう。

総務省としては、競争を促進するために提言を出したのだが、キャリアとすれば、やる事なす事すべて否定されてしまった。このままでは、「大人しく競争しない方が身のため」ということになってしまいかねない。

競争促進のはずが、キャリア間の競争を否定する内容になっていることに、総務省は気がついていないのだろうか。

(文・石川温)


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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