ウクライナの民族主義政党スヴォボーダ党が開催したサマーキャンプ「テンパー・オブ・ウィル」で隊列を組んで自動小銃AK-47を構える子どもたち。
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キャンプの参加者(戦闘服に身を包んだ者もいる)は、注意深く自動小銃の狙いを定めた。インストラクターがアドバイスを送る。
「ターゲットを人間と思うな」
そう、この少年少女たちは人を殺すために引き金を引く。
ウクライナ西部の森の奥深く、少年少女たちは「テンパー・オブ・ウィル(Temper of will)」と呼ばれるサマーキャンプに参加している。開催したのは同国の民族主義政党スヴォボーダ党。
スヴォボーダ党は暴力的な活動や人種差別で非難されている。サマーキャンプはLGBTの権利やイスラム教に対抗する白人至上主義の思想に基づいたものだ。
ロシアとの対立において、スヴォボーダ党は中心的な役割を自ら担ってきた。そして政府とのつながりも保っている。
2018年はじめ、ウクライナの青少年スポーツ省(Ministry of Youth and Sports)は、同党が運営する多くのキャンプのいくつかに約15万ドル(約1700万円)の予算を割り当てた。同省によると、「愛国心教育」のため。
つまり「テンパー・オブ・ウィル」キャンプの目的は2つ。ロシアや親ロシア派から国を守るために子どもたちを訓練すること、そして民族主義的イデオロギーを広めることだ。
キャンプの様子を見てみよう。
キャンプの参加者はほとんどが10代、8歳くらいの子どももいる。
AK-47の組み立て方を教えるインストラクター。
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最年長の参加者、18歳のムィハーイロは訓練は必要と語った。
川で水浴びをした後、AK-47を調整するムィハーイロ。
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「我々の国ではいつでも悪いことが起こり得る。それに備えなければならない。キャンプに参加したのはそのため。自分自身と愛する人たちを守る方法を学ぶため」
「我々は決して人々に銃を向けない」。インストラクターのユーリー・チェルカシンは子どもたちに語った。「だが分離主義者、覆面兵士、モスクワからの占拠者は人間に数えない。だから銃を向けていいし、向けるべきだ」。
AK-47を抱えるスヴォボーダ党青年組織のリーダー、ユーリー・チェルカシン。
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チェルカシンはウクライナ東部で親ロシア派の分離主義勢力と戦った退役軍人。戦闘で負傷し、その後、スヴォボーダ党青年組織ソクリのリーダーとなった。
チェルカシンはウクライナの若者に民族主義思想を教え込むことは重要と述べた。そうすることでプーチン大統領が率いるロシアと戦い、ヨーロッパ文明を「完全に破壊する勢力」に対抗することができる。
18歳のムィハーイロ(中央)は参加者のリーダー。隊列を組んで愛国の歌を歌う。
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そうした勢力の中でも、LGBTの権利の主張は西欧における退廃のサインと彼らは訴えた。
AK-47を構える子どもたち。
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「ジェンダーに関するあらゆること、今のロシアの倒錯した考え方や行為に関するあらゆることに目を向ける必要がある」とインストラクターの1人は語った。「ロシアはヨーロッパでの勢力を強め、今ではゲイパレードのようなLGBTに関するあらゆることを教育システムに組み込もうとしている」。
AK-47を構えて隊列を組む子どもたち。
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講義中、居眠りする子どももいれば、注意深く聞き入る子どももいる。
テントの中でAK-47の扱い方についての講義を受ける。
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休憩時間中に少年がギターで民族主義者を賛美する歌を歌う。ギターに貼られたステッカーには白い爆弾がモスクに命中する絵、その下には「White Europe is Our Goal.」の文字。
たき火を囲み、民族主義者を賛美する歌を歌う。
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講義(そして、たき火を囲んでの歌)を除くと、数十人の若者たちのキャンプでの日々は厳しいものだ。
夕食前、プランクの姿勢を取る。
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夜間、子どもたちはスタングレネード(閃光発音筒)の爆風で起こされた。
夜間訓練で懐中電灯をかかげるインストラクター。
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テントからようやく抜け出した子どもたちは、AK-47を抱えるのもやっとの様子。銃と同じくらいの身長の子どももいた。
AK-47を抱え、指導を受ける。
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一日中重いAK-47を抱えなくてはならない。1人の少女が疲れから泣き出した。
夜間訓練中、弾の入っていないAK-47を構える。
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※敬称略
[原文:Inside a Ukrainian nationalist camp where kids are trained to kill Russian invaders]
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)