ハラスメントに関する大規模な調査が始まった。被害の実態だけでなく、加害者の“顔”をあぶり出すのが目的だ。
意外な調査結果も出たという。
撮影:今村拓馬
調査を行うのは、あらゆるハラスメントを社会からなくすことを目的として活動している「#WeToo Japan」。「ゼロハラ」プロジェクトと題し、調査の他にもハラスメントについてのwebサイト制作やシンポジウムを開催するための費用を募るクラウドファンディングを実施中だ。
調査の指揮をとるのは評論家の荻上チキさん。関東圏の1万2000人にインターネットを通じてアンケートをとった。
調査対象は男女半々。年齢は10代〜40代までと幅広い。
- 日本でほとんど調査されていない、路上での声かけやつきまといなどのストリートハラスメント
- オンラインハラスメント
- セクシュアル・コンセント(性的同意)
- セクハラにまつわる思い込みや誤解
などの実態を明らかにする。
調査のきっかけは、「ゼロハラ」プロジェクトのメンバーが荻上さんに「ハラスメントについてデータに基づいて発信したい」と相談を持ちかけたこと。同団体はこれまでもハラスメント禁止の法規定をつくるよう署名を集めたり、さまざまなイベントやワークショップを開催してきたりした。
「ゼロハラ」の呼びかけ人は、エッセイスト・タレントの小島慶子さん、サイボウズ社長の青野慶久さん、「なくそう!SOGIハラ」実行委員会・代表の松中権さん、産婦人科医の宋美玄さんなどだ。
被害の実態は各種の調査やメディアの取材で少しづつ明らかになりつつあるが、「なぜハラスメントをする人たちの考え方が変わらないのか」という疑問がメンバーにあったという。
加害者を「見える化」することが調査の大きな目的の一つだ。
想像と真逆の結果も
調査結果を社会がどう受け止めるか、それが問題だ。
撮影:今村拓馬
今回の調査ではハラスメントの体験に加え、その人の年収や家族構成、恋愛経験、性教育を重要と思っているかなどのジェンダー意識を含め、幅広くたずねている。
現在は調査は終わっており、分析を進めているところだ。結果は同プロジェクトのホームページで公開する予定だそう。
荻上さんの率直な感想は、「今は何世紀なのかなと」。
「調査結果の一部は多くの人が想像する通りかもしれないし、一部はその真逆かもしれません。ハラスメントは個人の責任だけで語れるものではないと痛感しました。個人の価値観は社会がつくっている部分が大きい。教育や社会のあり方から見つめ直し、環境改善のための議論にこの調査結果を活用してもらえたら嬉しいです」(荻上さん)
(文・竹下郁子)