大白熱の、ZOZO田端信太郎 vs 中川淳一郎対談!
「ZOZO前澤さん、ぶっちゃけどう思ってますか?」
11月27日、都内で開かれたイベント「PR3.0」で話題をさらった公開取材。2018年にLINEからZOZOのコミュニケーションデザイン室長に就任した田端信太郎氏に、「NEWSポストセブン」をはじめとするネットニュースの編集者であり、PRプランナーでもある中川淳一郎氏が切り込んだ!
「社長が破天荒すぎる問題」について考える
中川:まずは社長が破天荒すぎる問題について考えましょう。前澤さんがバスキアの絵を買ったりとか月に行く計画を立てたりとかを、社員としてどう考えられていますか。
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田端:もちろん、いろんな角度から批判はされるだろうとは思っています。上場企業の社長なんだから、自分の命を危険にさらすようなプロジェクトに参加するのはどうなんだ、とか。でも一方で、結果としてすごくZOZOの認知度は上がったのでよかったんじゃないかという見方もできますよね。
僕は2017年の10月頃に前澤さんからお誘いを受けたんですが、その時には実はすでに月に行こうと思っているって話をしていましたね。
中川:月周回計画は、前澤さんのポケットマネーでやっていると言われていますが、そうは言ってもそんなカネがあるなら、もっと従業員に還元しろと田端さんにTwitterで噛みついてくる人もいるわけですよね。某NPO法人の人とか。
田端:前澤さんは経営者というよりも、ロックスターだと思うと分かりやすい。前澤さんって元々ミュージシャンだったんですよね。早稲田実業学校に入ったけど、早稲田大学に進学する気をなくして、高校2年ぐらいから、地元・千葉の鮮魚売り場で手を魚臭くしながらいろんなバイトをしてスタジオ代を稼いでいた。
音楽が好きだから輸入CD・レコード通販を始めて。しかも最初は紙のカタログを郵送するやり方で、途中からネットに切り替えて。だったら服も売ろうぜとなって、ZOZOTOWNができたと。いわゆるビジネスエリートではないんですよね。
経営者だと思うと破天荒だけど、ロックスターだと思えば、まあそれぐらいはやるよねと。むしろロックスターにしては優しい常識人ですよね(笑)。
中川:先日フランスのファッションショーに招待された時、女性セブン発の記事を、我々NEWSポストセブンがネットで報じたんですが、剛力彩芽さんと一緒に歩いているところを記者が直撃したら、すごく気さくに応じてくれた。うちみたいなパパラッチメディアに、普通はありえないですよ。
田端:そのファッションショーも、メディアにアピールするためにZOZOSUITを着ていこうかな?と前の日に本人が言っていたので、周りのスタッフみんなで、今後出禁になりますよ!といって、止めたんですよ。
実際の写真がこれ。
そこで周囲のアドバイスを受け入れてまったく着て行かなかったらロックじゃない。でも全身ZOZOSUITはさすがにやりすぎだということで、前澤さんなりにバランスをとったのが「チラ見せ」という結論だったのでないか、と思います。
社長がタレント化するのってぶっちゃけどうよ?
ZOZO前澤さんは剛力彩芽さんとハズキルーペのCMに出ればいいんですよ、って、えぇっ!?
出典:ハズキルーペ
中川:一方で、社長があまりにタレント化・芸人化した会社は、PR的にどうなのというところはあります。
田端:最近、取材やテレビ出演でも、どう見ても芸人という立ち位置でのオファーが多いんですよ。大体そういうのは断っていますが。
中川:一度目立つと、そのギアを加速させ続けなくてはいけない厄介さというのはあります。だったら、次はもう剛力さんと前澤社長でハズキルーペのCMに出ればいいと思うんですよ(笑)。今まで菊川玲さん、武井咲さんと、オスカープロモーションが続いているし(笑)。ちなみに年末にはテレビの特番にも出るんですよね。
田端:12月22日にフジテレビで夜2時間の特番があるんです。 「お笑いビッグ3」をもじった「スモール3」という番組で、出川哲朗さん、爆笑問題の田中裕二さん、ナインティナインの岡村隆史さんという背が低い3人が、同じく背が低い前澤にどうしても会いたいと、指名していただいて。
社内の様子や雰囲気を紹介してもらいます。お笑い芸人の3人も、ZOZOSUITを着て体型を測って、一人ひとりの体型にあったZOZOのビジネススーツを着ていただいて。
あと、千葉にある前澤の自宅に行ったり、前澤行きつけのレストランに行って食事を楽しんだり、ということをやってもらったんです。企業露出が確保できる構成だったので、単なる話題の人としての出演ではないということで受けさせていただきました。
社長のSNSが記事化されるのどう思う?
中川:先ほどのファッションショーの写真、これ、普通の会社だと慌てると思うんですね。でも前澤さんはそれをTwitterに書いてしまい、それが普通にネットニュースになっている。社長や社員のSNS利用が波紋を呼んでしまうことについてどうお考えですか。田端さんもそのお一人ですが(笑)。
田端:SNSの内容を報じられるのはしょうがないですよね。こたつ記事ではなくてちゃんと取材しろよという気持ちはあるけれど。
前澤さんのTwitterフォロワーもだいぶ増えてきて、今50万人ぐらいかな。会社でも一応Twitterを持っているんですけれど、やっぱり前澤さんのTwitterの方がはるかに拡散力がある。
中川:ZOZOの会員数って今どれくらいいるんですか?
田端:アクティブに買ってくれている人で、年間600万人強ぐらいですかね。そこから見ると10人に1人ぐらいなので、少ないとも言えると思いますが。
「日経新聞広告」はPR的にどうなの?
中川:10月に社名を変更しましたが、なぜですか?
田端:これは割とシンプルな話で、認知度を調査したら、スタートトゥデイという会社名は知らないけれど、ZOZOは知っているという人が多かったんですよ。
前澤さんはスタートトゥデイという名前に意外にこだわりがないみたいだったことも分かったので、「じゃあ、やりましょう」みたいな感じで。
中川:いま「ZOZO=前澤社長」っていうイメージがついてしまっている側面もあると思います。そんな中で、10月1日に日経新聞の広告で「主役は社員です」という広告を打ちましたね。その意図と、その後の効果を教えてください。
ZOZOは、前澤社長が月周回計画を公表した約2週間後に、社名変更を発表した。
田端:10月1日に社名変更ということで、日経の15段広告をやりませんかと言う提案を、広告代理店さんから8月ぐらいにもらったんですよ。
その時点で、前澤社長の月周回計画の発表が9月の半ばぐらいともう決まっていたのを僕は知っていたので、その2週間後に社名変更だと。そこで前澤の名前で「ステークホルダーの皆さまへ、これから精進してまいります」という従来通りの発表にしても、なんか白々しく聞こえてしまわないかな?と。
そこで、社名変更の件について、社長以外で誰が語れるだろう?と考えたら、社員しかないと考えた結果、こうなりました。
社員から社長にツッコめるような関係性があるというのは、良い企業PRにもなると思いましたね。社長と社員の関係性を明らかにしながら「女優さんと付き合うのも良いけれど……」と公開の場で社長にツッコんだり、イジったりする。
実は別のクリエイティブ案としてはもっと過激なやつとかもあって、前澤さんの顔に落書きしているやつとかあったんですよ。今回のクリエイティブはすべて社内のデザイナー陣で作ったのですが、それはさすがにやりすぎなんじゃないかとか、いじめを彷彿させるとか、いろいろ意見があって、こういう風に落ち着きました。
中川:これは事前に社長はチェックされたんですか?
田端:しなかったです。基本、前澤さんはクリエイティブチェックは全部したい人間なんですよ。でもそうすると、自分を褒め、自画自賛している広告を会社のお金で出している、裸の王様みたいな嫌な社長のイメージがついてしまうじゃないですか。
だから僕は前澤さんに、「10月1日に日経新聞の15段で社名変更の広告を打ちます」と。
「前澤さんがクリエイティブチェックをすると面白みがなくなる内容なんで、申し訳ないけれど、内容についてはダマでいかせてもらいます。一任したということでいいですよね?」という話をしたんですね。
そうしたら前澤は「サプライズかぁ、楽しみだなぁ〜」みたいになって(笑)。
中川:見たらなんと言ってましたか。
田端:半分照れ隠し、半分嬉しいみたいな感じ。「いやぁ、これ全然サプライズ度合いが足りないよ、本当に社員が主役だったら、10月1日にみんなでストライキくらいして実際に行動しないと!」って(笑)。
中川:これは記事化されるってことは見越していたんですか?
田端:ある程度見越していましたね。絶対メディアが聞いてくるのは「前澤社長はこの内容をご存知だったんですか?」ってことですよね。
そこで嘘つくわけにはいかないですから、「前澤は知らなかったです、僕ら自身で進めてました」って言わないと、この広告自体がすごくダサいものになる。そこまで考えていました。
金の亡者と言われても?前澤社長がPRに果たす役割
中川:ここ2、3年でZOZOはPR戦略にすごく力を入れている印象があります。女優の紗栄子さんと付き合っていた時に彼女を社員総会に呼んでしまったりとか。その戦略の意図はどこにあるのですか。
田端:当時は僕もいちネットユーザーとして見ていただけなので分からないのですが。でも面白いとは思いましたよね。ライブドア事件で堀江さんが叩かれて以降、ネット企業の経営者ってとにかく目立たないようにする人ばかりになっていた。正しいといえば正しいけれど、面白くない人が増えていた。
田端:前澤さんが目立ったことは、PB(プライベートブランド)「ZOZO」をやり始めた時に活きてきたと思います。PBは他のブランドと何が違うのかということを説明しないといけませんが、そこで生身の顔が思い浮かばない限り、実感を持って受け止めてもらえない。
撮影:木許はるみ
ブランドが「S・M・Lだけではないサイズをつくろう」と言った時、センターにいる前澤さんの「僕はとても服が好きだけど、(背が小さいので)ズボンの裾を切られる瞬間が屈辱だった」というストーリーが活きてくる。
中川:個人を前面に押し出すPRは、ZOZOにどのような役割をもたらしていると考えますか?
田端:お金を払って打つテレビCMより、もうPRでやった施策の方がレバレッジがかかっていますね。ここ1年ほどは、テレビCMはやっていません。
中川:逆に懸念事項や逆風はありますか?
田端:やっぱり「金の亡者だ」とメディアから言われることはありますよね。で、その個人へのネガ・イメージが会社やサービス、製品にも伝染してくる。
中川:そんなに書かれてますか?Netgeekとか?
田端:まぁメディアっていうのはあげておいて落とすのが好きなものです。メディアから注目され、期待値が上がれば上がるほど、たたむべき風呂敷の面積も広がってくる。当然、畳めないと批判されます。最初から、風呂敷をたためる範囲で広げようと、その加減は意識しています。
ZOZO田端の炎上を社員はどう思ってる?
中川:最後に、田端さんが来て変わったことや、田端さんのZOZOでの役割っていうのを聞いてみたいです。
田端:僕は社長に対して「マジレスをする」係ですよね。前澤さんはこういう風にしたほうが話題になるんじゃないかと、よかれと思っていろいろとやっていくんですけれども、さすがに世の中的な空気からするとちょっとやりすぎじゃないですかと、ブレーキを踏む役割ですね。
LINEの広報にこの話をするとみんな大喜びするんですよ(笑)。今までは僕が暴走して広報がブレーキを踏むっていう関係だったのが、いまは僕が前澤さんをいさめている(笑)。
中川:なるほど。でも炎上上等な田端さんご本人に聞いても、一般的な社員の気持ちは実際のところは分からないということで……いちPRパーソンとして、ZOZOの広報さんにお聞きしたいと思います。お入りください(笑)。
ZOZOの広報も急遽参戦。
ZOZO広報:どうぞよろしくお願いします。
中川:田端さんって、一般的なPRパーソンとは違うじゃないですか。苦労はありますか。
ZOZO広報:すごく炎上する人だということは知っていたので、入社する前から怯えていました(笑)。早速、入社1週間後くらいに炎上したんですけど(笑)。
中川:期待通りにね。田端さんが来てから、ZOZO広報の体制などは変わったのですか。
ZOZO広報:田端は誰にでも「マジレス」ができる人なので、私も「マジレス」が移り、何事にも躊躇せず、自分でしっかりと考えた上で取材や日々の対応をしていくようになりました。炎上する人というイメージが先行していたのですが、実際は気さくで優しい、ただの良い上司です……褒めすぎですか?(笑)
田端:案外サラリーマンくさいとか、セコいとかは(笑)。
ZOZO広報:そうですね。日経新聞の広告に関しても、社内を駆け回っていろいろな部署に相談しているのを見ていたので、一人で強引に進めるタイプではなく、意外と周りを見ながら行動できるサラリーマン気質もあるんだなあと。上から目線ですみません(笑)。
田端:いえいえ、全然大丈夫です。
(構成・写真、西山里緒)