会社独自の方法を世界標準にするだけで、海外の超優秀なエンジニアは採用できる

会議をする人たち

ロケットスタートの秘密は「採用の仕方」「仕事の仕方」「評価の仕方」がすべて世界標準だという点(写真はイメージです)。

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私が取締役をしている株式会社FIXERには、GBAという組織があります。GBAはGlobal Business Accelerationの略で、文字通りグローバルにビジネスを加速させるために設立した組織です。

この組織は、日本人メンバー3名、外国人メンバー15名。トップは32歳のアルジェリア出身のOさん。開発マネジャーは27才のイギリス出身のAさん。他のメンバーの出身地は、日本の世界地図で西からフランス、イタリア、南アフリカ、ラトビア、パキスタン、インド、ネパール、バングラデッシュ、日本、アメリカと幅広く、それぞれビジネスデベロップメント、商品開発、クラウドソーシングマネジメントを担当しています。

このGBAは1年前に3名でスタートしました。ここに配属した新メンバーはすぐに組織や仕事の仕方になじみ、文字通りロケットスタートしてくれるのです。その秘密は「採用の仕方」「仕事の仕方」「評価の仕方」がすべて世界標準だという点にあるようです。

一般的に転職する際に新職場で活躍するには、アンラーニング(unlearning)とラーニング(learning)が大事だと言われます。前の職場のやり方に固執するのではなく、一度アンラーニング(忘れる)し、新職場のやり方をラーニング(学ぶ)するのが大事だということです。

ところが前の職場と今の職場の仕事の仕方が同じ世界標準であれば、アンラーニングも新たなラーニングも最小限で済みます。評価の仕方も類似していれば、当然新メンバーはすぐ戦力となり、組織に貢献できます。能力をすぐに発揮できるので、自分らしく過ごすこともできます。

今回はこのGBAの「採用」「仕事」「評価」の方法についてシェアしたいと思います。

組織文化へのフィット感はメンバーとランチで

FIXERは、技術と組織文化とのマッチング度合いで採用の可否を決定しています。こう書くと、どこの企業でもそうだという話になるかもしれません。しかし各論をきちんと設計しているのがポイントです。

食事をする人たち。

選考で応募者の技術レベルを確認した後に、ランチで組織文化とのフィット感を確かめる(写真はイメージです)。

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マイクロソフトのAzureに特化したプロバイダーである当社は、Azureの技術・フロントエンドの技術・バックエンドの技術など合計20程度の技術を組み合せて開発やサービス提供をしています。

採用選考の1段階目では、この20の技術の経験とレベルを確認します。この段階でのポイントは2つ。1つは、10以上の技術経験があり、それをきちんと習得しているかどうか。もう1つは我々の技術と類似の技術、例えばAWSなどの技術の経験の有無と新しい技術への習得意欲が高いかどうかです。

我々が使う技術や類似技術を高いレベルで経験していれば、即戦力の可能性が高まり、新技術への習得意向は、これからの成長の可能性が分かります。この1段階目の選考は、テレビ会議システムで実施します。

1段階目の選考にパスすると、次は自宅でプログラミングの作成テストをしてもらいます。ハイレベルのエンジニアであれば2時間程度、通常レベルのエンジニアであれば4時間程度でできる内容です。現在就業している人であれば5日後、クラウドソーシングのエンジニアであれば24時間後に提出してもらいます。そして、そのプログラムの内容や作り方のレベルをリードエンジニアが確認します。

ここまでの2段階の選考で応募者の技術レベルが把握できます。最後の3段階目は組織文化とのフィット感です。経営陣との面接を昼休み前後に設定し、昼休みにメンバーと一緒にランチをします。これらによりメンバー全体とのフィット感をイメージしやすくなります。技術的にも組織的にもマッチしているので、すぐにロケットスタートできる可能性が高まるのです。

クラウドソーシング利用で海外エンジニアに依頼

GBAは、アジャイル手法で開発をしています。ツールはJIRA・GitHub・Confluence・Slack・Figmaなどです。いわゆる多くのIT企業が活用している標準的なツールを組み合せて開発管理・タスク管理・ログ管理・ドキュメント管理・コミュニケーションを行っています。当然、テストも自動化されているので最少人数で仕事が可能です。

加えて、前述のようにクラウドソーシングチームも抱えています。これはGBAの仕事の繁閑に合わせてプログラミングパワーを必要な時に必要なだけ増大する仕組みです。

会議をする人たち

重要な開発は内製し、大量に発生する業務をクラウドソーシングすることでエンジニアのやる気を保つ(写真はイメージです)。

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重要な開発は内製し、大量に発生する業務をクラウドソーシングすることで、GBAのエンジニアは常にイノベーティブな仕事に集中できる体制を組んでいます。

優秀なエンジニアは、困難な仕事やイノベーティブな仕事にチャレンジしたがります。そうではない単純な仕事をしていると、飽きてしまい、転職を志向します。それを防ぐために、このクラウドソーシングで業務を依頼する仕組みを標準化できているのは重要です。

このクラウドソーシングは、FIXER内のGBA以外のエンジニアからの仕事も請け負っています。英語が苦手なエンジニアが海外のクラウドエンジニアに依頼する際には、言語の壁がありますますが、GBAのクラウドソーシングでは、その言語の壁を超えるサポートも準備しています。現在はFIXER社内向けですが、今後は社外にビジネス展開できるレベルになっています。

このクラウドソーシングで活躍していたエンジニアの1人が、GBAに仲間入りしてくれました。我々は彼の技術レベルが高いので、スーパースターと呼んでいました。ラトビア在住だと思っていた彼が、実は日本にいることが分かり、ホームパーティーに呼び、意気投合して仲間入りしてくれました。技術は折り紙付きでしたので、あっというまにロケットスタートで戦力化してくれています。

自社独自の技術を習得しても価値は上がらない

山積みの書類

特別なことをしているわけではなく、世界のIT企業が実践していることをすると、海外出身のエンジニアが実力をすぐに発揮できる(写真はイメージです)。

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GBAではOKRと言われる評価制度を導入しています。

※OKR(Objective and Key Result)とは、目標と目標達成度を測る指標をリンクさせ、企業やチーム、個人が向かうべき方向とやるべきことを明確にする目標管理手法。

先進的なIT企業が導入しているミッション管理の仕組みです。FIXER流に少しアレンジして、1カ月に最低1回の1on1のプロセスを付加しています。これらも先進的なIT企業の人たちが慣れ親しんだ方法の1つです。

採用、仕事、評価のすべてに特殊な方法は何もなく、世界のIT企業が活用している手法をそのまま利用しており、これらの方法を習得したエンジニアは市場価値も高くなります。

GBAに在籍する日本の若手エンジニアも英語は苦手だったのですが、自ら手を挙げて、この組織に参加すると、数カ月で技術力も英語力も大幅に向上しました。彼の成長に自信を持ち、また1名の若手エンジニアを異動でGBAに参加させました。彼も良い感じでスタートしてくれています。

かつて、自社独自の仕事の進め方やフレームワーク、それらが競争力の源泉だった時代もあったかもしれません。しかし、世界の標準的な仕事の進め方にすると、世界中から優秀な技術者が集まってきて、すぐに活躍してくれます。

みなさんの会社はいかがですか?転職を検討している会社はいかがですか?その会社でしか使えない技術を習得しても、市場価値は上がりません。世界標準の技術を組み合せて仕事を進めているのかどうか。そのような観点で会社を見てみてはいかがでしょうか?


中尾隆一郎:株式会社FIXER取締役副社長。大阪大学大学院工学研究科修了。リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員(事業開発担当)、リクルートテクノロジーズ社長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、現職。株式会社「旅工房」社外取締役も兼任。

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