男立てる必要なく、両親フル活用の低負担育児。中国の女子が働き続けられる理由

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結婚観、子育て論、日中女子が語り合って見えてきたこと(右が筆者)。

筆者提供

2018年9月、筆者は初めて上海を訪れた。かの有名な外灘(バンド)のイルミネーションが、圧倒的な経済成長をアピールしているかのように見える。余裕すら感じさせるキラキラ感だ。

中国のGDPは、とっくの昔に日本を抜いて世界第2位。経済大国であると同時に、キャッシュレス化も進み、テクノロジーの発展も目覚しいデジタル大国でもある。筆者が構成員を務めた文部科学省傘下の教育を考える検討会でも、現在進行している内閣府の「AI社会原則に関する会議」でも、中国の名前を聞かない回はない。みんながこの国の噂をするのだ。

そんな中国で育ってきたミレニアル女子達は、いま何を考えているのだろうか。

「男を立てる女子」は海外にいない?

今回、プライベートで訪れた上海旅行では、日本に留学に来ている筆者と同世代の中国と台湾出身の女子大学院生2人も一緒だった。私たちは、上海の郊外のカフェで、この世代の定番ネタ、どんな人がタイプかという話で盛り上がった。

一緒に旅をしていた、大手広告代理店勤務の日本人男性(25)は「自分を立ててくれる人がいいかな」と話す。女性活躍が叫ばれる時代といえども、やはり男性と女性が横並びになった時、男性の方が優先されるべきという考えが残るのがジャパニーズ・スタンダードだ。

そんな彼に「それでは外国人は無理だね」と悪気なく言い放ったのはスウェーデンにも留学経験のある中国人女性。そう、そうだった。こんな価値観に従ってくれるのは日本人ぐらいのものなのだ。本音では、やっぱり一歩下がる女子が求められる日本社会は、グローバル・スタンダードではないんだった。

家にいてもヒマでしょ?

親子

上海市内のカフェで、子連れ女性を見かけた。中国では、働いていない女性は「ヒマじゃないの?」と不思議がられるという。

筆者提供

では、中国には専業主婦はいないのだろうか。どうやら彼女の6歳年上の従姉妹の女性が、出産後に仕事をやめ、珍しく専業主婦をしているのだという。

「家にいても暇でしょ?何してるの?って散々言われてる」

ほとんどの女性が働いている中、ずっと家にいる中国の専業主婦は、逆に非常に肩身が狭い思いをしているようだ。

別の24歳の中国人女性も「ずっと働き続けたい。仕事をやめたら、社会との接点も、プライベートな時間も失うイメージがあって、つまらなくなると思う」と話す。

世界銀行のデータによると、中国の女性の就業率は65パーセントを維持しており、BRICs諸国と比較しても圧倒的に高い。

また、人材紹介会社の「智聯招聘」が発表した「3・8(国際女性デー)特別女性デー特別調査」によると、2010年の段階で仕事で成功したいと考える女性は調査対象者の9割超に達しているそうだ。

中国では女性も働いて当たり前、そして、CEOや管理職など仕事における成功も求めているという実態が明らかになっている。

女性活躍と叫ばれて久しいにも関わらず、やっと女性も出産後も働き続けられるのが当たり前になってきたぐらいで、まだまだ管理職を目指すには大きなハードルが何重にもありそうな日本との違いに、驚愕させられた。

共働き先進国の頼みの綱は

中国の親子

上海市内で、放課後の子どもを迎えに来た親族たち。中国の子育ては祖父母の助けが欠かせない。

Reuters/Carlos Barria

日本と違って、ミレニアル世代の中国女子達の親世代は共働きが多い。中国のミレニアルズの親達が、まさに専業主婦の親を見て育ったものの、自分たちは共働きになった世代だ。日本よりちょうど一世代分早いような印象を受けた。

「高校、大学の時、みんな働くのは怖いって言ってたけど、将来働かないことを選択する女の子はいなかったかな」

「私、子どもの頃から、ずっと家族に女性が経済的に独立するのは大事って教わってる」

そんな言葉が女性が働く文化の強さを物語っていた。

共働き先進国・中国では、朝食作りは母親の仕事ではない。道端に屋台が並んでおり、その辺で子ども達が勝手に調達して学校に向かうのが中国流だ。

肉まん

中国の朝ごはんは、通学や通勤前に路面店で調達する風景が定番だ(写真はイメージです)。

Reuters/Nir Elias

旅行客からすると、その豊かな朝食文化は、旅行客の楽しみの一つになっている。筆者もおいしい小籠包を朝からいただいた。

朝早起きして、朝ごはんとお弁当作りをする日本の母親像と比べると、ちょっとした手抜きにも見えるが、それが「愛情不足」だなんて思っていないようだった。

「中国では両親の仕事終わるまでは、子どもがおじいちゃん、おばあちゃんの家に行くことが多いかな。私も小学校卒業するまでにはそうだった」

「24歳で結婚した友達の1歳の子どもは、平日には奥さん側のお母さんの家に住んでる。奥さんは毎日仕事の後、お母さんの家に行って子どもと遊んで、寝る前に自分の家に帰る」「夫婦は旦那さんの両親と一緒に住んでて、ほとんどの家事は旦那さんのお母さんがやってるから、奥さんは子育てと家事をほとんどやってなくて、すごく楽って言ってる(笑)」

という言葉に象徴されるように、中国の共働きは祖父母の手厚いサポートにより支えられている。

片働きの方がむしろ不安な中国女性

ジョブフェア

中華系の航空会社の採用フェアに集まる女性たち(写真はイメージです)。共働きじゃなければ「不安」という。

Reuters/Aly Song

そのおかげもあって、日本ではここ数年ホットイシューになっている「共働きへの不安」もほとんどないようだ。王さん(仮名・24)は親からのなるべく早くして欲しいという強い要望もあり、2年間付き合った彼と今年10月に結婚した。「25歳くらいそろそろ結婚の話をし、27、28になったら、親はちょっと焦る。30になったら、親とか親戚は結構不安で、怒るくらい」

「共働きへの不安はない。逆に、片方だけ働くのはお金が足りないかなっていう不安の方が強いかな」

家事も育児も母親が完璧にやらないといけないというような価値観は日本に比べてとても薄く、朝食は外で購入し、子育てと家事は祖父母に任せるという低負担型子育てのモデルが意識レベルでも、仕組みレベルでも広く浸透しているようだ。

両立への不安もなく、完璧な母親像を押し付けられることもなく、子どもを産めば親に歓迎される。日本の現状を思うと、夢のような話である。

女性のパワーがもたらすもの

デジタル大国

今や名だたるデジタル大国。その経済発展には、女性のパワーが欠かせない。

Reuters/Aly Song

ニューヨークのオフブロードウェイ発の体験型ミュージカル「スリープノーモア」や、 M&M’s worldというチョコレートのM&M’sの巨大専門店も、米国発トレンドのお店は、日本より前に中国にやってきている。この経済発展を支えた背景に、中国の女性たちのパワーが寄与していたことは否めないだろう。

いまさら女性活躍と言い始めた日本と、すでに多くの女性が成功を望む中国。一人一人のモチベーションの差は、必ずや国家を動かす力になる。

もちろん、中国という国と日本を単純に比較することは難しい。しかし、私たちが他(か)の国から学べることは多分にあると思う。

そうして私達日本人も、女性自身が抱えている育児も家事も完璧にしなければいけないという無意識のバイアスも少しずつ、手放していければいいと願う。


新居日南恵(manma代表): 株式会社manma代表取締役。1994年生まれ。 2014年に「manma」を設立。“家族をひろげ、一人一人を幸せに。”をコンセプトに、家族を取り巻くより良い環境づくりに取り組む。内閣府「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」・文部科学省「Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」有識者委員 / 慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科在学。

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