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社員はGAFA出身者ばかり! 異色の注目ベンチャーが挑む「企業データ活用」の未来

FLYWHEEL

FLYWHEEL(フライウィール)社長の横山直人。NTTドコモ、グーグル、Facebookで働いたのち、起業。

ここ最近、スタートアップ界隈で密かに注目を集めている企業がある。

設立から1年ながら、GAFA(Google・Amazon・Facebook・Appleの4社)あるいはGAMFA(Microsoftを加えた5社)と呼ばれる巨大IT企業での勤務を経験した若手人材が集まる「FLYWHEEL(フライウィール)」だ。高収入や安定した生活があったはずの「GAFA人材」たちはなぜ、このスタートアップに集まったのか?

日本企業に眠るデータを活かす

FLYWHEEL

フライウィールの事業構造。EC、広告から物流、データ保護まで、企業のデータ活用をエンド・トゥ・エンド(両端)でサポートできるのが強み。

フライウィールは「データを使い、企業の事業価値を最大化」することをミッションに掲げる。社内に眠る膨大なデータを集約し、広告・マーケティング・物流・決済などさまざまな分野でソリューションを提供する。

フライウィールの事業は、例えばこんな時に役に立つ。あるECサイトでキャンペーンセールをして、普段よりも多くの商品が売れたとする。その時、企業内のECサイトのデータベースと在庫管理や物流のデータベースとの連携がうまくいっていないと、配送が遅れたり、在庫を効率的に捌けなかったり、といった問題が起こる。

そうした「バラバラになったデータをつなぎ合わせ、事業に活かす」仕組みをフライウィールが担うのだ。

強みは、企業ごとにカスタマイズした「エンド・トゥ・エンド(両端)」のソリューションを提供できることだ。そこにはデータを活かすためのAIの技術も含まれる。事業戦略の策定から、データプラットフォーム、プロダクトの開発、事業拡大のためのコンサルティングまでを一貫して請け負い、「最後の1マイルまで企業に寄り添う」という。

Facebook、グーグルにはできないこと

FLYWHEEL

企業に眠るデータを集約させて事業に活かす、フライウィール。

創業者である横山直人も、グーグル日本法人のAndroidビジネス開発責任者、Facebook Japanの執行役員を歴任した「GAFA人材」だ。

横山がフライウィールを立ち上げたきっかけも、GAFAに勤めていた時に感じていた“歯がゆさ”にあった。

広告事業のパートナーとして日本企業から相談を受ける立場にあったが、プラットフォーマーとして、クラウドや人工知能のフレームワークといったツールは提供できるが、企業の課題解決そのものに向き合うことはできない。

日本には、貴重なデータを持っている企業が多くあるにも関わらず、それらを課題解決のために十分活用できていない —— 横山はそう感じていた。

グーグル時代、横山のライフテーマは「パソコンのモバイルシフト」だった。スマホ端末が世界中に行き渡ったいま、自分の次の10年間を捧げられ、かつ世の中を劇的に変えていくものとはなんだろう? そう考えるうちにたどり着いたのが「企業のデータ活用」だった。

「ゼロイチ」が得意な人が次々ジョイン

古渡奈々子

フライウィールでマーケティングマネージャーを務める古渡奈々子は、元グーグルだ。

創業から1年。さまざまな想いを持つメンバーがフライウィールに集まった。グーグルを経て、外資系フィットネスクラブでマーケティングマネージャーを務めたのち、フライウィールに参画した古渡奈々子もその一人だ。

古渡は、2008年に新卒でグーグル日本法人に入社した1期生。同期には、のちにネット広告のフリークアウトを創業し、上場させる佐藤裕介をはじめ、ユニークかつ優秀な人材が揃っていた。

YouTubeがまだまだ「怪しい動画サイトと思われていた時代」(古渡)に、YouTubeの広告営業を担当した。その後、上司もチームメイトも本社の外国人しかいないマーケティングチームに、英語が得意ではないにも関わらず、一人で飛び込んだ。

スマホ

Chinnapong / Shutterstock

グーグルには9年ほど在籍したが、次のステップへ進むことを選んだ。周囲からは「やめる必要ないのに」と不思議がられた。しかし古渡は、グーグルが拡大していくにつれて芽生えてくる“違和感”を拭うことができなかった。

「会社が大きくなってくると、個人ができることは限られてくる。私はやっぱり(スタートアップの)立ち上げがやりたい」。

グーグルで働いていれば、GAFAからLinkedinなどを通じてポジションオファーがくることは日常茶飯事だ。過去にグーグルで働いていた人が転職し、一緒に働かないかと持ちかけることも多い。

それでも、巨大IT企業やメガベンチャーへの転職に心が動かなかった理由は、やはり「黎明期のスタートアップに感じたワクワク感」を古渡が忘れられなかったからだった。

そんな時に話を持ちかけたのが、横山だった。聞いてみて「これはすごいイノベーションだと、心が踊った」と古渡は振り返る。

共通点は「データを信じている人」

flywheel

フライウィール公式サイトの企業情報ページに並ぶ主なメンバー一覧。出身企業はIT業界の時価総額上位企業ばかりという顔ぶれだ。

世界をリードし続ける巨大IT企業で働いていた人たちが集まるフライウィール。人材に何か共通点はあるのか、と古渡に聞いてみると、「みんなデータを信じている人」というギークな答えが返ってきた。

「こんなデータがあるんだ!と分かると、キャッキャッて(テンションが上がる)。これを置くことによって人の動きはこう変わるんだとか、仮説の検証を楽しめる人が多いですね」

その根底には、データを活用すれば人々の暮らしが良くなっていくという、GAFAで培われた「信念」が通底している。

現在、フライウィールのサービス導入企業は、オフィス用品販売のアスクルが運営する通販サイト「LOHACO」をはじめ「片手に収まるくらい」(横山)だが、今後さらに拡大していくという。

「エース級のエンジニアが入りたいと思う会社を、日本のスタートアップから作りたい」と意気込む横山。

キラキラの「GAFA人材」で固められたフライウィールは、日本のベンチャー界に新しい風を吹かせることができるだろうか。

(文・写真、西山里緒)

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