業績の見通しを大幅に下方修正したことで株価も大きく下げたRIZAP(ライザップ)グループ。瀬戸健社長が2018年12月3日、グループの立て直しについて、Business Insider Japanの取材に対し、「1年、2年もかけるのではなく、可及的速やかに終わらせる」と述べ、今期中に一定のめどをつける考えを示した。
「福利厚生改革」を打ち出した、RIZAPグループの瀬戸健社長。
撮影:小田垣吉則
一方で、中核企業のライザップの社員の子どもたちについては、グループ会社が運営する保育園を6歳まで会社負担で利用できるようにし、育児による時短を小学校卒業まで利用できるようにするなど、「福利厚生改革」も打ち出した。
この2年ほどは相次ぐM&Aで肥大化が進んだ同グループだが、本来は、ダイエットを目指す人に徹底して「コミットする」ことで、短期間で減量に成功させるビジネスモデルで急成長した。
今後、個々の社員のパフォーマンスを向上させることで、生産性を向上させる施策に力を入れるという。
保育園は会社が負担
グループ再生に向けて真価を問われるRIZAPグループ。
撮影:今村拓馬
同グループによれば、保育園の利用料については、グループ会社が運営する保育園「カメリアキッズ」を利用した場合、0〜6歳は全額を会社が負担する。この保育園は現在、東京都内に9カ所、神奈川県内に1カ所あるという。
その他の道府県で生活する社員については、契約先の保育園を利用すれば、最大で月に3万円を会社が補助するという。
また、子育て中の社員については、子どもが小学校を卒業するまで、育児時短を利用できる。有給休暇についても、年に10日を確実に消化させる。
買収したグループ会社の中には、給与が低いことで知られる会社もある。社員の給与についても今後は、グループ会社を含め、成果主義を徹底させる。「頑張った分だけ社員に還元しようと、(グループ各社の)トップに確約を取っている」(瀬戸氏)という。
買収した企業の立て直しに苦しむ中、むしろコスト削減が求められる時期とも思われるが、このタイミングで社員の福利厚生の充実を打ち出した狙いは何か。瀬戸氏は「少数精鋭で一人ひとりが価値を提供できる仕組みをつくる。一人あたりの売り上げが上がれば、生産性は上がる」と説明する。
RIZAPグループの瀬戸健社長。グループ企業の売却には「多くの引き合いがある」と話す。
撮影:小田垣吉則
グループ企業の売却には「多くの引き合い」
業績の下方修正の原因となったのは、買収に伴う「負ののれん」の計上だ。この会計手法で瀬戸氏は批判を浴びた。
企業を買収する際に、受け入れる純資産(=企業が持つ資産の総額から借金などの負債額を差し引いた残り)の額を下回る価格で買収した場合、「負ののれん」が計上される。この安く買えた差額分は、収益として計上されるため、一時的に業績が向上する。
負ののれんについての瀬戸氏自身の認識はどうか。
「負ののれんは、持参金みたいなもの。普通の会社であれば、『のれん代として30億ください』。その代わり毎年3億、4億円の利益が出る。そういった会社を買うのが一般的だ。われわれは逆に、『30億円あげますよ、その代わり毎年3億、4億円の赤字が出ます』と。こういった会社を買っている。この30億円を使って変えていかなければならなかったが、当初の計画から大きく遅れていることが問題だ」
グループは現在、本業との相乗効果が見込めない企業の売却をめぐる交渉を進めている。
瀬戸氏は「決算発表以降、非常に多くの会社から引き合いをいただいている。提示いただいた条件は、取得時の価格を下回る提示はあまりない」と説明する。
瀬戸氏は今期末までに、グループ企業の売却や、再生に一定のメドをつける方針だ。来年3月末までの約4カ月で、どこまで、RIZAPの立て直しは進むのだろうか。
(文・小島寛明、写真・小田垣吉則)