「ゴーン逮捕」が最後になるか。平成を揺るがせた最も深刻な経済事件10

東証の「場立ち」。

1990年代の東京証券取引所。当時は手のサインで売買注文を伝える「場立ち」が活躍していた。

REUTERS/Eriko Sugita

自動車販売台数で世界2位の企業連合を率いてきた前日産自動車会長、カルロス・ゴーン氏が逮捕されて2週間余り。この事件の全容はまだ見えないが、平成の30年間の経済事件の歴史をひもとくと、バブル崩壊、デフレ不況、新たなマネーゲームの盛り上がり、といった時代の流れが見えてくる。経営トップらが立件された10大事件を振り返る(肩書きや企業名はいずれも当時)。

暴かれた政官財と裏社会の癒着、首相もクビに

竹下登首相(当時)

1988年、女優のエリザベス・テイラーさんと談笑する竹下登首相。この翌年、リクルート事件の責任を問われ、退陣に追い込まれることになる。

REUTERS/Kimimasa Mayama

1980年代半ばに始まり、空前の好況と言われたバブル景気。その末期、1989年12月29日、平成になって初めての東京証券取引所の大納会で日経平均株価の終値は3万8915円に達した。この史上最高値の記録は今も破られていない。

この時代をリアルタイムで知らない世代でも、「夜の繁華街で、なかなかつかまらないタクシーを止めるため1万円札を振り回す」といったバブリーなエピソードの一つや二つは聞いたことがあるだろう。

バブルは平成に入って間もなくはじけた。この30年の経済事件史はおおむね、政官財や裏社会の人脈が複雑に絡み合ったカネまみれの時代の後始末の歴史だった。

①リクルート事件

リクルートのグループ企業の「値上がり確実な未公開株」が政界の実力者や大物官僚らに配られたことが明るみに出て、「濡れ手で粟」(=濡れた手でつかめば粟粒がたくさんついてくるように、苦労せずに多くの利益を得ること)と強い批判を浴びた。

わいろを贈ったとして、リクルートを創業した江副浩正元会長が1989年に逮捕された。受け取った側では藤波孝生元官房長官や元文部事務次官、元労働事務次官らが立件されるなど戦後最大級の贈収賄事件に発展した。

この年の6月には竹下内閣が総辞職に追い込まれ、「首相のクビが飛ぶ」大問題となった。

②イトマン事件

立件されたのは、バブルがはじけ、日本経済が長期停滞への下り坂を転がり落ち始めた1991年。大阪の中堅商社、イトマンから絵画の取り引きやゴルフ場開発といった名目で巨額のお金が引き出され、そのほとんどが焦げ付いたとされる。

住友銀行出身の元社長や、政財界に幅広い人脈を築き「フィクサー」とも呼ばれた許永中氏らが立件された。

③東京佐川急便事件

東京佐川急便の旧経営陣らが、暴力団系企業に巨額の債務保証(相手が第三者への借金を返せなくなった時、その肩代わりを約束する契約)をしたり、政治家に大規模なヤミ献金をしていたなどとして、元社長らのほか、一時は「キングメーカー」と呼ばれ政界の実力者だった金丸信元自民党副総裁らが、1992年以降、相次いで立件された。

金融大手、深刻な腐敗と相次ぐ破綻

1998年10月、経営破綻し一時国有化されたことを受けて記者会見する日本長期信用銀行の経営陣。

1998年10月、経営破綻し一時国有化されたことを受けて記者会見する日本長期信用銀行の経営陣。

REUTERS/Toshiyuki Aizawa

④二信組事件

1994年に経営破綻した東京協和・安全の両信用組合から、政治家の親族が経営する企業に不正なカネが流れたとして、1995年に立件された。世界各地の有名ホテルなどに巨額の投資をして「リゾート王」と呼ばれ、政官界との交友の広さでも知られた東京協和の高橋治則元理事長や、山口敏夫元労働相らが罪に問われた。

⑤総会屋利益供与事件

株主総会でのトラブルを避けるため、大物の「総会屋」(株主総会に出席して議事進行を妨害したり、あるいは議事進行に協力する代わりに金銭の要求をしたりする人物)に不正融資をしていたなどとして1997年、第一勧業銀行と野村、大和、日興、山一の「4大証券」の元トップや幹部らが立件された。金融業界の深刻な腐敗ぶりが明るみに出た。

⑥長銀事件・日債銀事件

バブル崩壊で抱えた損失の重荷に耐え切れなくなった北海道拓殖銀行や山一証券が相次ぎ経営破綻し、金融危機が深刻化するなか、日本の高度成長を資金面で支えた日本長期信用銀行(長銀)と日本債券信用銀行(日債銀)も1998年に破綻。その後、抱えていた損失をごまかす「粉飾」をしていたとして元頭取らが立件された。

ただ、長年にわたる裁判の末、両行の元頭取らには「当時は違法ではなかった」として無罪判決が出ている。そもそも、後に不良債権となる融資をバブル期に大きく膨らませた経営トップらは、時効のため罪に問われていなかった。

粉飾の果て、堕ちた名門企業

旧カネボウから分離され、再出発した「カネボウ化粧品」の経営陣らによる2005年の記者会見。

旧カネボウから分離され、再出発した「カネボウ化粧品」の経営陣らによる2005年の記者会見。

REUTERS/Toru Hanai

⑦カネボウ粉飾決算事件

明治創業の名門企業で、繊維や化粧品で知られたカネボウ。損失を隠して決算をよく見せる不正経理が1970年代から横行していたとされるが、2000年代初めごろの粉飾について元社長らが2005年、立件された。現在のカネボウ化粧品は、化粧品部門のみを切り離して生まれた新会社だ。

⑧オリンパス事件

バブル崩壊に伴って抱えた損失を長年にわたり隠し続けてきた粉飾が、イギリス出身の社長によって暴かれた。会社側はこの社長を解任して対抗したが、最後は日本人の元社長らが2012年に立件された。

ITベンチャーのM&A、仮想通貨…盛り上がるマネーゲーム

2006年9月、東京地裁でライブドア元社長の堀江貴文氏の到着を待つ報道陣。

2006年9月、東京地裁でライブドア元社長の堀江貴文氏の到着を待つ報道陣。

REUTERS/Michael Caronna

一連の事件や、有力企業の経営破綻といった形での「バブルの後始末」は2000年代半ばには一段落しつつあり、景気も緩やかな回復が続いていた。

時流に乗って富を築いたIT企業経営者らが「ヒルズ族」などともてはやされ、「格差問題」があらためてクローズアップされたのもこのころだった。

⑨ライブドア事件

この時期、新時代の旗手としてもてはやされたITベンチャーの代表格の一つがライブドア(現在LINEが運営する同名のポータルサイトとは別)だった。プロ野球球団やテレビ局買収の試みは失敗したが、「旧体制への挑戦」と話題を呼んだ。その余韻も冷めやらぬ2006年、創業者で社長だった堀江貴文氏らが、急成長の裏で決算を粉飾していたとして立件された。

2008年に起きたリーマン・ショックのあおりで日本経済は再び失速するが、2012年末からの「アベノミクス景気」で息を吹き返す。株などへの投資で成功する「億り人」(億単位の利益を得る人)が続出するなか、仮想通貨ブームが盛り上がった。

⑩マウントゴックス事件

仮想通貨の私設交換所だったマウントゴックスが、顧客から預かったビットコインなど数百億円分が消失したとして2014年に経営破綻。翌年、社長が不正流用や着服の罪に問われた。その後、2018年1月のコインチェックをはじめ仮想通貨の流出問題が相次ぎ、一時のブームは失速している。

ポスト平成時代には、どんな経済事件史が刻まれていくのだろうか。

(文・庄司将晃)

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