ケガ泣き寝入りに日報改ざん、精神疾患で労災認定された佐川急便ドライバーが訴えるパワハラの実態

佐川急便の男性セールスドライバー(38)が精神疾患で労災認定を受けた。うつ病、不安障害、不眠症を発症したのは、上司とのトラブルと、月100時間をこえる時間外労働が原因だと認められたという。

「死亡以外の労災認定は私たちに知らされることがない」。今も自宅で療養を続ける男性が記者会見を開いた理由は──。

けがの申請に収入下がる職種変更を要求

佐川急便

人手不足が叫ばれる運送業界で、深刻なパワハラが起きているという。

shutterstock/StreetVJ

男性と、会見に同席した代理人の増田崇弁護士の説明によると、事実関係は以下の通りだ。

男性が佐川急便に入社したのは2009年。うつ病や不安障害を発症したのは2016年、36歳のときだった。発症までは以下のような経緯があった。

2013年12月に自転車で通勤中に転倒事故を起こし、約1カ月間の自宅療養に。通勤災害の申請をしようと上司に相談すると、想像もしていなかった言葉が返ってきたという。

「配送業務からはずして事務所での荷物整理の係にする」

荷物整理は残業を申告していい時間がドライバーより短いため、収入が約2割ほど減ってしまうこともあるそうだ。結局、男性は申請を断念。

2016年8月に膝のけがが悪化し、入院して手術することになった際も「お前、以前も休んだよな」。会社を訴えた場合は「それなりの対応をするから覚悟しとけよ」と言われ、 再びドライバーからの配置転換を迫られたという。

増田弁護士は言う。

「荷物整理の仕事は1日中、荷物を上げ下げするのでドライバーよりも力仕事。けがをした被害者にこうした配置転換を迫るのはパワハラです」(増田さん)

残業100時間超、車から降りられない精神状態に

佐川急便

会見中の男性。

撮影:竹下郁子

男性によると、その後ドライバーに復帰したが、12月のお歳暮の時期に入り残業が増えるにつれ、体調も悪化していったという。

不眠や不安感が続き、楽しみにしていたクリスマスコンサートに行っても車から出ることができず、帰宅したことも。

仕事中は決められた時間内に営業所に帰らないと上司から「なにしてるんだ?」と電話があるため、がむしゃらに働いていたが、家に帰るとイライラしたり急にふさぎ込むことが多くなっていた。

自身も異変を感じていたが、妻からも精神科の受診を勧められるように。

2017年の4月、体調の異変を感じて仕事を早退し、その足で病院に行って、うつ病だと診断を受けた。

男性が働いていたのは佐川急便の埼玉県・児玉営業所。管轄する熊谷労働基準監督署が精神障害による労災認定をしたのは2018年の10月30日だ。職種変更の強要などの上司とのトラブル、そして月100時間以上の残業が原因だとした。労基署が認定した、男性の発症に影響したとみられる2016年12月の時間外労働時間は116時間にのぼる。

男性によると、休憩時間もとれず、タイムカード打刻後の残業も常態化していた。実際に働いた時間でタイムカードや残業時間を申告すると、虚偽の報告をするように圧力をかけられたり、日報を改ざんされたりしていたという。

精神疾患でも申告を

増田崇

代理人の増田崇弁護士。「佐川急便全体で埋もれている被害者は多数いるのではないか」と話した。

撮影:竹下郁子

男性は現在は佐川急便を休職して精神科に通院している。会社からは書類を出すために出社するよう言われるが、上司に会うと動悸やめまいがするため、出来ていないと話した。通院と犬の散歩以外はほとんど外に出ない生活を送っているという。

男性はリスクを負って記者会見を開いた理由を問われ、こう答えた。

「人手不足と長時間労働は佐川急便、そして運送業界全体の体質です。人が足りない営業所にドライバーを貸し出すことがよくあるんですが、結局、貸し出した営業所も仕事がさばけずドライバーにしわ寄せがいっている。

佐川急便の労災は死亡事例しか私たちは知ることが出来ない。でも、こうした長時間労働や精神疾患で苦しんでいる人は全国にたくさんいると思うので、申告していい、声を上げていいんだと伝えたいです」(男性)

2016年10月には、佐川急便の男性社員(当時22歳)が自殺したのは上司のパワハラでうつ病になったのが原因だとして遺族が起こした訴訟で、 労災だと認める判決が仙台地裁で出ている。

増田弁護士は男性と同じ児玉営業所の他の従業員からも労災申請の依頼を受けているという。

佐川急便は働き方改革の一環として、初めて 2019年元日の一部業務を中止すると発表しているが、もっと抜本的な改革が必要だろう。

(文・竹下郁子)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中