PayPayの100億円あげちゃうキャンペーンスタートと同時にPayPay対応を果たしたビックカメラグループ。各店舗でかなり“PayPay対応”を推していた。
撮影:小林優多郎
12月4日からスタートした、PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」。日本の決済をキャッシュレス化したい各企業の中では後発のPayPayとしては、インパクトのあるスタートを切ったと言える。
初日の活況を見る限り、おそらく、終了予定である2019年3月31日よりも前に100億円に到達し、キャンペーンが終了する可能性は高いが、能動的な利用体験が伴うコマーシャルとしては安く済んでいる部類だろう。
人気のジャンルや発生したサービス障害などは既報の通りだが、本稿では実際に店舗での様子や、新しい決済手段に対応する店員の声などを含めたレポートをお送りする。
定番の活用場所はコンビニと家電量販店
ファミリーマートでPayPayを試してみたところ。20%の残高付与が小さく画面下に書かれているのがわかる。
キャンペーン開始は朝9時からで、まず同日からPayPay対応を開始したファミリマートで試してみた。とくに問題なく決済は完了したが、スマートフォン側から割と大きなボリュームで「ぺいぺい!」と再生されることが意外だった。
店員側も初対応で「スマホから鳴るんですね」と筆者と同様の反応をしたが、店員側がマニュアルをチェックしたのは約30分前。操作的には既存の決済処理と変わらずと語った。コード識別方式は店舗側から見ても、あまり負荷ではないようだ。
開店前のビックカメラ新宿西口店。
では、キャンペーン開始前から話題に挙がっていたビックカメラはどうだろうか。
PayPayで支払うと、ビックカメラポイントは8%(通常時10%の商品の場合)になるものの、ネットで公開されているクーポンの利用で+3%、さらにPayPayのキャンペーンで+20%と、実質還元額は大きい。
通常時はビックポイント対象外もしくは還元率が低い商品であっても、PayPayの20%は関係なく適用される。想像にたやすいと思うが、多くのニュースからも判明している通り、開店前から待機列の出来る店舗がいくつもあったほか、ビックカメラ系列や従来のポイントも加味してお得な店舗も似た展開だったようだ。
ビックカメラでは、PayPay利用時の注意点をホームページに掲載。PayPayキャンペーンの20%還元と同時にビックポイントの付与もアピールしていた。
出典:ビックカメラ
今回は新宿を拠点として選び、ビックカメラ新宿西口店、新宿東口駅前店、ビックロビックカメラ新宿東口店を見て回った。わかりやすい待機列を確認できたのは、ビックカメラ新宿西口店だった。
開店直前の朝9時50分頃のビックカメラ新宿西口店の待機列は約30人。店員が取り置きをしているのか確認をするシーンもあったが、整列している人のほとんどが生返事でスマホに表示されたPayPayの画面を見ていたのが印象深い。
ゲーム機が6割、アップル製品などが4割
Business Insider Japanの小林記者も新型Mac miniをPayPayで購入。
撮影:小林優多郎
開店と同時に6割ほどがゲームフロアへ向かい、その様子を追ってみたところ、「Nintendo Switch」を買う人 ── おそらくは月末の「サンタさん」が多くいた。
また、若い利用客は12月7日発売のSwitch対応タイトル「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」に備えてだろう。ただ、ひとりだけ複数台を抱える人がいたのも付け加えておく。子だくさんかもしれないのだが。
キャンペーン開始前は転売目的の購入が多いのではないかと話題だったが、年始の福袋などのような混沌とした雰囲気はなかった。3万円以上の購入の場合は本人確認があるほか、ネット通販は対象外であるといった制限が効果的だったのではないだろうか。客層についても出勤直前のサラリーマンや、自営業者、学生風といった顔ぶれだった。
とはいえ、メルカリなどのフリマアプリに並ぶアップル製品のこのタイミングでの増加ぶりは、100億円あげちゃうキャンペーンとの連動性は感じる。露骨な「買い占め」は難しいキャンペーン仕様であるため、ある程度は抑制することができた、とも言えるのだが。
さて、ゲームフロア以外に向かった残る4割の利用客は白物家電とカメラ、アップル製品といった具合で、比較的単価の高い製品に集中していた。平日開店直後としては妙に客数が多く、総じてスマートフォンにはPayPayアプリが表示されており、マーケティングとしては成功と言えるし、店舗内でのアピールも目立っていた。
ビックカメラが採用したユーザースキャン式はかなり煩雑
写真はPayPayのユーザースキャン式の決済方法。自分のスマートフォンのカメラで店舗のQRコードを読み取り、金額を入力し決済する仕組み。
撮影:小林優多郎
ユーザースキャンの場合、金額を自分で入力する必要がある。
筆者も実際にビックカメラで取材備品を購入しつつ、PayPayを試してみた。
12月4日現在、ビックカメラでPayPayを使用する場合は、いわゆる「ユーザースキャン方式」となる。関係者の話によると、本来はコード識別でスタートを切りたかったそうだが、間に合わずしばらくはユーザースキャン方式なのだそうだ。
ユーザースキャンは、まずユーザーがレジ脇にあるQRコードを読み、それからレジに表示されている金額を入力。決済処理が終了してから、店員が決済番号を確認する……というように、従来の決済方法と比べて煩雑だ。
このとき、スマートフォンを店員に渡して決済番号を確認してもらう流れで、心理的な抵抗を強く感じた。
単純に決済番号のフォントサイズが小さいことが原因なのだが、この点は検討しなかったのだろうか。店員側も決済番号の確認が手間のようだった。
PayPayアプリで決済番号を確認するには、フォントサイズも小さく、またフォントカラーも視認性がいいとは言えない。
別のビックカメラでも購入をしつつ店員に話を聞いてみたところ、開店からPayPayの使用率はほぼ100%となっており、店員側としては独特の決済フローには慣れたが、ユーザーが入力に戸惑うことが何度かあったそうだ。
この時点で同店員は夕方以降と週末の心配をしていた。スマートフォン自体の操作に不慣れな人の割合が増えるだろうという点からだ。ビックカメラのアプリでバーコードを表示、次にクーポンのバーコードを表示、それからPayPayアプリにタスクを切り換え……といったフローはスマートとは言えないし、意外とユーザー側への負担も高い。
PayPayポイントは処理中と表示され、約1カ月を目処に付与される。
ちなみに、お買い物は検証用のSSD 1TBとSDカードにした。
12月4日のサービス障害は少なくとも2回発生
PayPay広報からの回答では単に混雑解消している時間のはずだったが、画面上部にアナウンスが表示されていた。
現場(売り場)の混乱は何かと耳にしているハズだが、PayPay側でも問題は起きていた。12月4日12時45分頃から13時56分頃までアクセスが困難な状態になったほか、18時14分頃から18時31分頃までのサービスダウンもあった。
障害規模についてPayPay広報に問いあわせたところ「調査中」との回答。「障害発生要因は決済トランザクションの集中が一因と思われる」とのことだった。
14時過ぎからしばらく、スクリーンショットの通り、オフィシャルサイト上にはアナウンスが表示されていた(画面左)。サービスダウンから復旧したという時間以降のスクリーンショット。18時45分付近まで、まともに表示されなかった(画面右)。
また障害発生中、およびその前後では多重決済も起きており、多重決済については公式サイトならびにTwitterなどで案内しているカスタマーサポート窓口で対応するとのことだ。
店舗向けの管理画面である「PayPay for Business」も上記障害の影響を受けていたのかは、「調査中」(PayPay広報)とだけ回答があったが、PayPay for Business側もダウンしていたとの情報もある(実際、公式ページではそのようにアナウンスされている)。
例外的なものとしては、個人経営の飲食店でまだアクティベーションを済ませていないケースとも遭遇した。地図上に対応店舗と表示されるのは、アクティベーション時点(利用開始できる状態)ではなく、サービスにエントリーした時点のようだ。まずは、近所で試してみようという場合はファミリーマートが無難だろう。
週末の利用者急増にPayPayは耐えられるのか
決済トランザクションの集中による影響がとくに目立った印象だが、週末にかけて、さらに利用者は増加すると思われる。
ビックカメラのようにユーザースキャン方式はエラーの起きうるフローがあり、人が集中するとなると騒動となる可能性も高い。PayPayがどう対応していくのか。過去の類似マーケティング同様にやるだけやりっぱなしでいくのか。分かりやすい利用体験を提示するだけで終わらせてほしくないものだ。
(文・林佑樹、撮影・林佑樹、小林優多郎)
林佑樹:1978年岐阜県生まれ。東京在住。ITサービスやPC、スマートフォンといったコンシューマから組み込み、CPS/IoT、製造、先端科学までに適応するほか、ゲームやゲーム周辺機器のライティングも行なう。フォトグラファーとしては、ドラマスチルや展示会、ポートレートをこなしつつ、先端科学研究所の撮影をテーマとしている。