採用は新卒にこだわらない。2、3割は中途で。危機感募らせる丸紅の取り組み

大手企業

撮影:今村拓馬

世界経済の安定的な回復基調を背景に、2018年3月期決算は純利益で最高益を出した総合商社の丸紅。

しかし、2018年は「既存の枠組みを超える」をキャッチフレーズに、國分文也社長の指揮の下、人材育成と仕事の進め方で、大きな改革に出た。背景には、急速に変化する時代環境への危機感と、変わる若手のキャリア観も影響しているようだ。

「現代の変化はただことではない」

「今の変化はただことではない。既存の枠組みを超えていかねば生き残ることはできない」

最高益の2018年3月決算の一方、前年から國分文也社長が社内に示した危機感は、これまでにないものだった。

その背景にあるのは、「グローバル市場における、世界トッププレーヤーの顔ぶれの変化です」。

そう話すのは、丸紅の鹿島浩二人事部長だ。商社のライバルになり得る世界のトッププレーヤーたちに入れ替えが起きており、グーグル、Uber、Airbnbといった、メガ級のIT企業が台頭している。

市場のライバルが激変する中、「エネルギー」「食料」「プラント」など、商品部門ごとに縦割りで仕事を進めるなど「従来どおりのやり方では生き残れない」(鹿島人事部長)と、時代の変化への対応が急務となりつつある。

さらに追い打ちをかけるのが、次世代を切り開くはずの若手の離職だ。

「若手の流出は、かつてに比べて多くなっているという実感をもっています。(終身雇用のような)就業感が変わったことや、若年世代では共働きがデフォルトということもあるでしょう。もちろん、一生働きますと言って入社してくるわけですが。社会のあり方が変わってきている」(鹿島人事部長)。

トップ企業の他社に社員を送り込む

丸紅

2018年3月期は最高益だった丸紅。しかし、その危機感もまた最高値だ(写真は2016年時点の社屋)。

Reuters/Yuriko Nakano

時代環境の変化と若手の離職増加など、現状に危機感をもった丸紅が、4月に新たに打ち出した制度のいくつかをみてみよう。他社との人材交流や目の前の業務以外に就業時間の15%を充てられる制度など、伝統的な商社としては異例の取り組みが目立つ。

丸紅アカデミア……国内外の丸紅グループ社員の中から、グローバルでのキャリアや実力をもつ社員を集め、イノベーションを思考・議論する場をつくる。

社外人材交流プログラム……金融やコンサル、メーカーなどのトップ企業に1〜2人程度の人材を交流させる。

15%ルール……就業時間の15%を、丸紅グループとしての新たな事業の創出に向けた活動に充てられる。

トライアングルメンター……所属部署・世代・性格タイプの違う3人でトリオをつくり、定期的にミーティングや相談、飲み会などコミュニケーションをとることで、組織や世代を超えたつながりをつくると共に、新入社員の土台作りを助ける。

・アイデアボックス……新たなビジネスアイデアや業務改善につながる案等、全グループ社員が投稿できる窓口をオープン。

事業化ビジネスプランコンテスト……グループ内に年代を問わず広くアイデアを公募し、審査を経て事業化する。

今回の制度の特徴は、入社年次や年齢を問わず「手上げ方式」であったり、商社の特徴とも言える縦割り組織をまたぐ人の動きを生み出したりしていることだ。

横断歩道

丸紅は2018年、社歴や年代を問わずに、手を挙げられる制度を積極的に増やした(写真はイメージです)。

その意図は、組織に多様性を取り込むことにある。

「一番必要なのは多様性。国籍、性別、年齢、全く関係なく、違う考え方、違う発想、違う文化をいかに取り込めるかが、一つのキーだと思っている」(2018年2月の、イベント登壇時の國分社長)との言葉に表れているとおりだ。

採用も新卒にこだわらない多様化を進めている。

「採用に占める中途入社の割合は2〜3割程度です。新卒採用では獲得・育成できないタイプを採用することで、多様化する社会課題に対応したい」(鹿島人事部長)

制度だけつくって終わりにさせないための土壌づくりとして、社長自らが通常の会議とは別に、幹部を集めた合宿を開催。

「昨年春から秋にかけて、社長自らが各部門の部長を集めた異例の合宿を開き、これまでのやり方ではダメだということを徹底的に話し合っています。危機感の共有のためです」(鹿島人事部長)

やりがいやスキルを求めて転職

若めのサラリーマン

大企業にこそ、時代の変化が押し寄せている。

撮影:今村拓馬

こうした制度改革は、何も若手だけを対象にしたものでは、もちろんない。ただ、近年は大企業でも「成長のスピードが遅い」と、転職を検討する若者の動きが目立ち始めているのも事実だ。

複数の転職エージェントによると、2018年、就活人気ランキングでは上位の常連だった銀行から、フィンテックベンチャーへの転職が急増するなど、大企業の先行きを不安視する風潮が生まれている。

ビズリーチの調査「若者の転職リアル」によると、「給与が高い仕事」と「欲しいスキルが身につく、やりたい仕事」とでは、「どちらかといえば、欲しいスキルが身につく、やりたい仕事」を優先する人が半数を占め、もっとも多かった。

世界のトッププレーヤーが入れ替わる中、待遇面では恵まれていることの多い「日本の大企業」も、変化に飛び込み、世代や年次を問わずにチャレンジする道を開いていくことが、働き手にポジティブなメッセージになっていくことは間違いなさそうだ。

(文・滝川麻衣子)

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