逮捕されたファーウェイCFO。創業者との親子関係隠し、受付嬢から後継本命に

孟晩舟

中国では結婚しても男女ともに姓が変わらないが、孟晩舟氏は両親の離婚で母方の姓を名乗っているため、任正非との親子関係は長らく知られていなかった。

REUTERS/Alexander Bibik

米中首脳会談で貿易戦争が“一時休戦”したかと思われた矢先、ファーウェイの孟晩舟(Meng Wanzhou)CFOがカナダで逮捕されたことが明らかになり、“ファーウェイ・ショック”が世界に広がっている。孟CFOはファーウェイ創業者・任正非(Ren Zhengfei)氏の長女でもあり、2018年3月に副会長に任命されたことで、後継者候補の筆頭と目されるようになった。

ファーウェイ入社から2011年のCFO就任まで任氏との親子関係を伏せ、一社員として同社の成長を支えてきた“異色の二代目”である孟氏は地味ながらも能力・人柄ともに高い評価を受けており、突然の逮捕に中国では怒りが渦巻いている。

受付からキャリア開始、大学院で会計学学び財務畑に

任正非

創業者の任正非は、「ファーウェイはオーナー企業ではない」と語ってきたが……

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孟晚舟氏は香港子会社のCFOや国際会計部トップなどを歴任し、ファーウェイのグローバル財務の効率化に大きな成果を上げた。現在はファーウェイ副会長のほか、関連会社11社の取締役も兼任している。

だが、孟氏がファーウェイの表舞台に出るまでには「20年の潜伏期間」があり、今も主要な記者会見などは輪番CEOが担当するため、彼女の発言は、大学での講演会などから明らかになることが多い。

孟晩舟は1972年生まれ(誕生日は非公表)で今年46歳。

大学を卒業後、国有銀行の中国建設銀行で1年働き、1993年にファーウェイに入社した。創業7年目のファーウェイは当時、代理店からメーカーに脱皮しようとしていた小さなベンチャー企業に過ぎなかったが、孟氏は高校生のときに両親が離婚し、姓を「任」から母方の「孟」に改めたため、ファーウェイ入社後も長らく“正体”を知られることはなかった。

彼女は受付からキャリアをスタートし、コピー取りや商品リストの作成、展覧会の準備といったOL的な業務に3年間従事。その後いったんファーウェイを離れ、華中理工大学(現・華中科技大学)大学院で会計学を専攻、1997年の復職後は一貫して財務畑を歩んだ。

「結婚4回」の噂も、評価は「謙虚」

孟晩舟氏と任正非氏の親子関係が公表されたのは、彼女がCFOに就任した2011年だ。孟氏の素性が明らかになると、謙虚で同僚たちと同じ目線で働いてきた彼女の人柄と、その実力が大きくクローズアップされると同時に、「高卒の叩き上げ」「4度の結婚歴がある」「夫もファーウェイ幹部」など、さまざまなデマや噂が流れた。

孟氏は2012年の業績予測発表会で初めてメディアの前に登場し、「会社では厳しいCEOだが、家では優しいお父さんだった」など、父への思いを語ると同時に、世間の噂を自ら否定し、2人の子どもがいることなどを明かした。

長男に代わり「本命」急浮上

孟晩舟

2014年10月、モスクワでプーチンロシア大統領と対談する孟晩舟氏。

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中国で孟氏への注目が一層高まったのは2018年3月、彼女が取締役会メンバー入りし、任正非氏に代わって副会長に就任したことがきっかけだ。

圧倒的な権限を持つ任正非氏は今年74歳を迎え、ファーウェイの後継者問題も注視されていた。任正非氏は以前から「ファーウェイをオーナー企業にするつもりはない」と語っており、2011年には権力の集中を防ぎ、変化により素早く、的確に対応するため、2011年に3人が半年交代でCEOを担当する輪番CEO制度を導入した。後継者はこの3人か、任正非氏の長男で、孟氏の兄である任平氏のいずれかになると予想される中、任平氏ではなく、孟氏が取締役に就いたことは、後継問題の大きなメッセージと受け止められた。

孟氏の逮捕は日本では「ファーウェイCFO逮捕」「長女逮捕」と報じられたが、中国ではファーウェイの代替わりが迫る中での、「次期トップ逮捕」というニュアンスが強い。そのインパクトが、「創業者の家族」「企業の財務責任者」とは比較にならないほど大きいのは、言うまでもないだろう。

(文・浦上早苗)

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