【緊急レポート】ソフトバンク大規模障害は他キャリアでも起こりうる ── その原因にユーザーが学ぶべきこと

ソフトバンク

12月6日の約265分間、ソフトバンクの通信網において全国規模の通信障害が発生した。

撮影:小林優多郎

12月6日午後に発生したソフトバンクの通信障害について、日付が変わろうとする23時過ぎ、その詳細が分かってきた。

発生時刻は6日午後1時39分ごろから午後6時4分まで。影響を受けたサービスはソフトバンクおよびワイモバイルの4Gサービス、同回線を使った固定電話サービス「おうちのでんわ」、同じく回線を使っているWi-Fiルーター「SoftBank Air」となっている。また、同社の回線を使う格安SIMを提供する事業者(MVNO)である、LINEモバイルやmineo、日本通信なども影響を受けている。

ソフトバンクの説明では同日午後1時39分ごろ、全国のユーザーをカバーする東京センターおよび大阪センターに設置してあるエリクソン製パケット交換機全台数でソフトウェアの異常が発生したという。

このソフトウェアは9カ月前から運用しており、このソフトウェアによる通信異常は同じタイミングで海外11カ国の通信事業者でも発生していたとのことだ。

前代未聞の世界同時多発通信障害

エリクソン 製品

エリクソンは全世界で様々なキャリアに対し自社の通信製品を提供している。

出典:エリクソン

なお、エリクソンは今回の問題に対して以下のような趣旨の発表を行っている

「コアネットワーク内のSGSN–MME(Serving GPRS Support Node – Mobility Management Entity)に問題が生じた。初期段階での根本原因の解析結果では、今回影響を受けたソフトウェア証明書のバージョンの齟齬が示されている。今回の障害を引き起こした問題のあるソフトウェアは、現在廃棄処理を進めている」

筆者は通信業界を20年近く取材しているが、これだけ長時間かつ世界的に通信障害が起こったというのは記憶にない。日本では、KDDIが2013年の4月と5月、同様のMMEに起因する大規模障害を起こしているが、世界同時多発は初めてではないか。

エリクソンは世界でも有数のネットワークベンダーだ。基地局やネットワーク管理など、キャリアの裏方として、世界中の通信事業者に設備を納入、また運営などを行っている。アップルとも仲が良く、iPhoneやApple Watchの通信面での進化は、エリクソンとの共同開発が多いとされている。

毎年2月にスペイン・バルセロナで開催されている、世界最大級の通信関連見本市「Mobile World Congress」では、中国・ファーウェイとともに巨大なブースを設置。世界の通信事業者に向けて、ネットワーク設備を売り込んでいるのだ。

設備以外にも通信障害の原因はある

スマートフォン利用者

つながりにくくなるのは、設備側だけの問題ではない。

撮影:今村拓馬

今回の通信障害で、ソフトバンク関係者からは「単に通信障害が発生しているだけでなく、輻輳(ふくそう)も起きている」とのコメントがあった。

輻輳とは、ものが1カ所に集中して混雑する状態をいう。ネットワークの輻輳と言えばかつては、大晦日から年が明けた瞬間に「あけましておめでとう」の電話やメールが集中することでつながりにくくなることが有名だった。

今回は、通信障害自体はパケット交換機に発生したもので、4Gでの通信やVoLTEでの通話ができなくなり、行き場に困った通信や通話が3Gネットワークに集中。輻輳が起こり、3Gネットワークもまともに使えなくなったようだ。

ネットワークが快適に使える時にはまったく問題なくスムーズに通信や通話が流れるものだが、一度どこかで止まってしまうと、ユーザーの多くが何度も発信し直したり、データを送ろうとリロードや再送信を繰り返してしまいがちになる。

結果として、余計なデータや発信がさらに継続して大量に流れようとすることになり、輻輳が発生してしまうのだ。

ソフトウェアの証明書の期限切れという初歩的なミスながら、通信障害がここまで長時間化したのは、ソフトバンクが購入しているエリクソンの通信設備で発生し、また世界同時多発的に通信障害が起こったために、ソフトバンクだけではどうしようもなかったことが背景にあると思われる。日本国内だけではなく、海外11カ国でも発生となれば、解決はエリクソンに委ねるしかなかったはずだ。

仮に早い段階で改善したとしても、日本は真昼間。仕事の電話や通信が大量に発生していたタイミングでもあり、輻輳が解消するのには時間を要した可能性がある。

NTTドコモやauで起きてもおかしくない

ウェブ非表示

ネットがつながらなくなったときのために、どう備える?(写真はイメージです)

撮影:小林優多郎

今年、ソフトバンクは何度か通信障害を起こしているのだが、こればかりは「ソフトバンクだから」という問題ではないような気がする。通信障害が発生している最中、他キャリア関係者と会話する機会があったが、彼らは「明日は我が身。他人事とは思えない」と口にした。つまり、NTTドコモでもKDDIでも、いつ起こってもおかしくない問題なのだ。

我々が今後、通信障害に遭遇した時のために備えておきたいのは、大切な人との連絡手段は1つだけにしないということだ。今回、電話やセルラー通信が使えなくなった。理想は複数のキャリアを契約しておくことだが、それはお財布的にも難しいだろう。

それならば、Wi-Fi環境がある場所まで移動し、LINEやFacebook Messenger、Skypeなどを駆使して連絡できるように準備しておけば安心だ。

通信障害はいつ、どこで起こるかわからない。「いざという時のために複数の連絡手段を用意しておく」のが肝心だ。

(文・石川温)


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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