オハイオ州アクロンのローリングエーカーズモール
Nicholas Eckhart
店舗閉鎖の波到来——それでも小売店舗数は“飽和状態”という不思議
小売業者たちは、新年早々にやってくるであろう店舗閉鎖の波に備えている。
アナリストによると、オンラインショッピングへの移行やショッピングモールの客足減少などから、小売業界は店舗スペースがあり余る状態へ突入しているという。
「2017年は厳しい年となるだろう」とモーニングスターのRJ・ホットビー(Hottovy)氏は指摘する。
多数の店舗閉鎖に加え、2017年は多くの小売業者が破産申請をするだろうと彼は予測する。
Macy's、Kohl's、ウォルマート、シアーズなど、ほぼすべての大型百貨店がここ数年間で何百店舗も閉めた。
それでも、店舗閉鎖のトレンドはまだ続きそうだ。
Macy'sはすでに、2017年には100店舗または輸送網の約15%を閉鎖する予定であると発表。シアーズは4月までに少なくともシアーズとKマート30店舗を閉めることになっており、さらになる追加発表も予想されている。CVSも今月70カ所での閉店を予定していると発表した。
5月に破産申し立てをしたエアロポステール(Aeropostale)や、アメリカンイーグル(American Eagle)、チコス(Chicos)、フィニッシュライン(Finish Line)、メンズウェアハウス(Men's Wearhouse)、チルドレンズプレイス(The Children's Place)などのショッピングモール系の店舗も閉鎖計画を進めている。
今後、数カ月間でこのような閉鎖報告がさらに増えると推測される。
年始めにはよく店舗閉鎖が発表される。2010年以降、年間の閉店発表の半分近くが第1四半期に行われていると、CNBCは報告する。
店舗に加え、小売業者たちは展開範囲の縮小も見据えている。
「賃貸借契約の都度、所有面積が少ない店舗へ徐々に転換していくだろう」と、ホットビー氏は言う。しかし、昨今の閉鎖騒ぎにもかかわらず、驚くべきことに、全米の小売店舗数は実はまだ“飽和状態”だ。
モーニングスターの10月の報告によると、カナダの16.4平方フィート(約1.5平方メートル)とオーストラリアの11.1平方フィート(約1平方メートル)に比べ、アメリカは23.5平方フィート(約2.2平方メートル)である。これは国民1人あたりの売り場面積の割り当てスペース。アメリカは依然として世界一の小売店舗大国である。
「アメリカの小売業界は売り場スペース、店舗数ともに多すぎるのだ」と、小売業向けコンサルティング会社「Conlumino」のCEO 二ール・サンダース(Neil Saunders)氏は語る。
「消費者の買い物のスタイルは昔と随分、変わった。全米の小売店舗の多くはその規模が時代に合わなくなってきている。しかも(店舗がある)場所さえ、見当違いになろうとしているのだ」
ショッピングモールの苦況
小売店舗の相次ぐ閉店により、ショッピングモールの多くも閉鎖を余儀なくされている。
シアーズやMacy'sのような大型店の閉店は、全米のショッピングモールの業績が悪循環に陥る引き金となるとモーニングスターのアナリストは10月のレポートで指摘している。
大型店の撤退という現象は、ショッピングモールとっては、テナント収入と顧客を失うという結果だけではすまない。大型店の撤退は、他のテナントが「co-tenancy clauses」(共同テナント条項)に関わる権利行使を訴える機会を与えることになる。つまり、撤退した大型店によって確保されていたショッピングモール内の顧客の交通量の損失を補うために、テナント料の削減を要求できるわけである。結果的に、ショッピングモールにとっては、さらに収益が圧迫されることになる。
損害を減らすためにもショッピングモールは、大規模店が陣取っていた巨大スペースを埋められる「代わりのテナント」を早急に見つけなければならないが、どこの大手百貨店も売場面積を縮小する中、財政状況が厳しいショッピングモールにとっては、新しいパートナー探しはかなりの無理難題である。
空きスペースをアパートや駐車場など小売り用途以外の空間に転換することが難しいビジネスにおいて、空きスペースの放置は“死の結末”に直結する深刻な問題だ。
モーニングスターのレポートは、シアーズが閉店を続ければ全米のショッピングモール約200店が閉鎖の危機にさらされるという、最近のクレディスイス(Credit Suisse)のレポートからも裏付けられている。
[原文:A giant wave of store closures is about to hit the US]
(翻訳:バーミンガム 昌子)