携帯4社を直撃した「中国 通信大手の排除方針」 通信設備への採用状況、“5G”への影響を聞く

Huawei ZTE

中国の通信機器大手をめぐり、各国政府の排除方針に関連した報道が加熱している。

国内の報道各社は12月10日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの国内3キャリアが、ファーウェイとZTEの通信設備を事実上排除する方針を固めたと報じた。同日午前に行われた内閣府の定例会見で、菅官房長官は以下のように発言している。

「サイバーセキュリティーを確保する上で、情報の窃取、破壊、情報システムの停止など悪意のある機能が組み込まれた機器を調達しないようにすることが極めて重要」(菅官房長官)

政府の発言は、アメリカやオーストラリアなどのように中国大手2社を名指ししたものではないが、政府調達からの排除が念頭にあると考えられる。キャリア側の対応報道は、この事実上の排除方針を受け、各社が同調した形だ。

中国通信大手の機材採用をめぐっては、今後のサービス構築を考えるうえで2つの懸念がある。1つめは中国の通信大手の浸透度について。基地局設備などが評価され国内キャリアに食い込んでいることは以前から知られるが、それがどの程度なのか。

もう1つは、2019年に試験提供・2020年に本格稼働が始まる見込みの次世代通信「5G」開始スケジュールへの影響の有無だ。

質問状に、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、そして2019年にキャリア参入する楽天を含めた4社は、次のように回答した。

3キャリア中、ファーウェイ稼働は2社。ZTEはソフトバンクでのみ稼働中

アンテナ

現在、3G/4Gサービスを提供するアンテナや交換機などの通信設備にどのぐらいファーウェイとZTEの製品は使われているのだろうか(写真はイメージです)。

現時点でファーウェイもしくはZTEの通信設備がどのぐらい稼働しているのか? 各社広報担当の回答は次の通りだ。

NTTドコモ「当社では使用していない」

KDDI「ファーウェイについては、現状の当社ネットワークにおける主要設備には用いていない。ZTE製のものは採用していない」

ソフトバンク「現在提供している商用ネットワークで、中国ベンダーを採用していることは事実。ただし、欧州ベンダーに比べると、かなり小さいポーションだ」

KDDIはZTEについては採用なし、ファーウェイについては主要装置にはないものの、末端の装置については規模感は明らかになっていないが、利用している可能性があると話している。

ソフトバンクは、2メーカーの設備の採用を認めているものの、欧州ベンダーの採用規模と比較して少ないという表現だ。

ソフトバンクは政府の方針に従う方針、楽天は影響なしと回答

ソフトバンク

12月19日に携帯電話子会社の上場を予定しているソフトバンクは、政府の方針に従う方向と話す(写真は5月9日の決算会見の様子)。

政府の事実上の排除方針を受け、今後、キャリアとしてはどう対応していくのか?

NTTドコモ「現時点で決まった事実はないが、日本政府の状況なども見ながら適切に対応していく考え」

KDDI「今後の動向を注視し、適切な対応を検討する」

ソフトバンク「日本政府の方針を注視する。弊社は政府の方針に準拠する方向だが、今後についてはさまざまな検討をしている」

楽天「ネットワークベンダーとして、ファーウェイおよびZTE社設備の利用はしていない。弊社が準備を進めている携帯キャリア事業において、4Gネットワークベンダーはノキアを中心に、シスコ、アルティオスター、インテルなどと協力している」

いずれのキャリアも今後の政府方針を注視する考えを示しているが、3キャリアの中では唯一ソフトバンクが「政府の方針に準拠する方向」と明言している。

なお、楽天については、そもそも中国の2メーカーの設備を採用していないため、参入計画への本件の影響はないと回答した。

日本の5G導入計画への影響は軽微か

ZTE 5G Device

ファーウェイ、ZTE共に5Gに関する研究・開発を進めている(写真は2018年9月にドイツ・ベルリンで5G機器の展示をしていたZTEのブース)。

最後に、2019年に法人向け、2020年には個人向けの提供が予定されている5G(第5世代通信)の商用利用スケジュールへの影響はないのか?

NTTドコモ「5GにおけるNW(ネットワーク)設備の調達についてだと、現時点で決まったものはないが、価格のみならず品質・納期・安定供給の観点など総合的に判断し、公正な評価をもって調達する考え」

KDDI「5Gの採用ベンダーについては未定。現状への対応と同じく、今後の動向を注視し適切な対応を検討する」

ソフトバンク「5Gの商用ネットワークのベンダーは未定。商用段階では、政府の方針に準じる方向で検討している」

5Gの開発について、NTTドコモおよびソフトバンクの2キャリアが、ファーウェイとの実証実験を実施。ソフトバンクに関しては、ZTEとも実証実験を行っている。だが、いずれのキャリアも現時点で5Gの採用ベンダーは確定していない、という説明だ。

なお、楽天については、12月7日に実施された同社の基地局建設に関する式典で三木谷浩史会長は4Gおよび5Gの基地局整備について「中国製品を使う予定はない」と発言したと日刊工業新聞が報じている。

(文、撮影・小林優多郎)

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