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- ファーウェイは世界有数のテック企業。
- 世界最大級の通信機器メーカーであり、スマートフォンメーカーとしては、サムスンに次いで世界第2位。
- だが、ファーウェイのスマートフォンをアメリカで購入することは極めて困難。
- 複数の政府機関はファーウェイの機器にはバックドアが仕込まれ、中国政府はバックドアを使ってユーザーの動向をスパイすることができると考えている。一方、ファーウェイはこうした考えを激しく批判している。
ファーウェイは、副会長兼CFOがイランに対するアメリカの制裁措置に違反した疑いによってカナダで逮捕されたことで、再びニュースになっている(CFOが創業者の娘であることも広く知られるようになった)。
事件は中国、カナダ、アメリカの間の大きな懸案事項となった。
だがアメリカ人のほとんどは「ファーウェイ」という企業名を聞いたことがないだろう。つまり、今回の事件についても、ほとんど関心はない。世界中の多くの地域において、巨大かつ影響力のあるテック企業に関する事件であるにもかかわらず。
なぜ、ファーウェイ製品はアメリカで、ほとんど目にすることがないのだろうか? 経緯を振り返ろう。
ファーウェイは巨大テック企業。世界最大級の通信機器メーカーであり、スマートフォンメーカーとしては、サムスンに次いで世界第2位。
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2017年の売上高は約930億ドル。マイクロソフトと同じくらい。
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だがここ数年、ファーウェイは世界各国からスパイ行為の疑いを持たれてきた。
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2011年、同社はアメリカ政府に公開書簡を送った。セキュリティーに関する疑いについて「根拠がなく、証明されていない」と記した。
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「我々は、ファーウェイに関するすべての懸念について、アメリカ政府による正式な調査が行われることを強く望んでいる」と同社は述べた。
だがセキュリティーに関する懸念は続いた。2012年、2人のドイツ人エンジニアがファーウェイのルーターに重大な脆弱性を発見、そして、なぜファーウェイは「脆弱性について報告しないのか、注意を喚起しないのか、脆弱性はファームウェアのアップデートで解決済みと発表しないのか」と疑問を呈した。
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同社への懸念の一因は、創業者兼CEOの任正非氏が中国人民解放軍のエンジニアであったことも関係している。多くの人が、同社と中国政府の間には強いコネクションがあると考えている。
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ファーウェイは今年はじめ、アメリカで初めてスマートフォンを販売する計画だった。だが、その努力はギリギリで泡と消えた。AT&Tが突然、取り引きを中止した。
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同じ頃、ベライゾンも政府からの圧力で、ファーウェイのスマートフォンを今後も販売しないことに決めたとThe Vergeは伝えた。
アメリカでも、まだアマゾンなどのウェブサイトでファーウェイのスマートフォンを購入できる。だがSIMフリー版のみで、代金を事前に一括で支払わなければならない。しかも、アメリカの90%のユーザーは通信キャリアからスマートフォンを購入しているのが現状。
Amazon
2018年1月、同社コンシューマー・ビジネス・グループのCEO、リチャード・ユー(Richard Yu)氏は世界最大の家電見本市CESで講演し、AT&Tが同社の最新スマートフォン、Mate 10 Proを販売しないと決めたことには大変失望したと語った。
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「私はファーウェイで25年、働いている。我々が最初に製品を作った時、我々は中国のキャリアに信頼されなかった。新参者だったから。困難な道のりだった。しかし、我々はキャリアの信頼を勝ち取った。拡大を続けるマーケットで信頼を勝ち取り、そして世界のキャリアからも信頼を得た。ヨーロッパと日本のすべてのキャリアから。30年かけて、我々は我々のクオリティーを証明してきた」
「我々はとてもハードに仕事をしている。我々は顧客に忠誠を尽くしている。我々は世界中の顧客から信頼を得られるはずだ ── 私は6年前のことを覚えている。我々のスマートフォンはまだ影も形もなかった。誰も我々を知らなかったし、ファーウェイ・ブランドを知らなかった。6年をかけて、ファーウェイは世界のトップ3ブランドになった」
アメリカを含む複数の国がファーウェイを自国の新しい5Gネットワークの構築計画から排除している。8月にはオーストラリア、11月にはニュージーランドが自国の5Gネットワークからファーウェイを排除した。
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サイバーセキュリティーに関する懸念と併せて、アメリカ当局はファーウェイが製品をアメリカからイランに輸出した疑いを持っている。アメリカの対イラン制裁措置に違反する行為だ。
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結論としては、ファーウェイ製品をアメリカで購入することはできるが、簡単ではない。
ファーウェイのMateBook X Pro。
Huawei
過去、そして今も、アメリカに住んでいる限り、ファーウェイのどんな製品も同社のウェブサイトから直接購入することはできない。通常、アマゾンやマイクロソフトのような販売業者のウェブサイトに誘導される。
だがごく限られたファーウェイ製品がアメリカで購入可能だとしても、こうした現状はつまり、実質はほとんど入手不可能ということ。
例えば、アップルの新しいiPad Proに似た「MediaPad M5 Pro」、高性能なスマートフォン「Mate 20」、AirPodsの競合となる「FreeBuds」も購入できない。
将来、ファーウェイ製品はアメリカで買えるようになるだろうか? 同社はアメリカで大きなポジションを得るだろうか?
どんなことでも起こり得る、特に各企業や各国のリーダーが態度を変えたなら。
だが、現時点ではファーウェイを取り巻く環境は厳しい。ファーウェイの製品を手にすることは簡単にはできない。
[原文:Here’s why it’s so hard to buy Huawei devices in the US]
(翻訳、編集:増田隆幸)