2018年12月12日、都内で記者団に説明するコインチェック社長の勝屋敏彦氏。
撮影:小島寛明
仮想通貨取引所コインチェックの勝屋敏彦社長が2018年12月12日、メディア各社の取材に対して、「仮想通貨をペイメント、送金で活用したいというニーズがかなり出てきている。来年あたりは、単にアセットクラスとしての魅力だけではなくて、フィンテックを使った決済、送金のニーズが高まってくる」との見通しを示した。
1月末に580億円相当の仮想通貨が流出したハッキング事件を受け、コインチェックは4月にネット証券大手マネックスグループ入りし、事業の立て直しを進めてきた。
年初来、仮想通貨の代表格であるビットコインの価格は下落が続き、現在は1年前の5分の1以下にまで落ち込んでいる。しかし、勝屋氏は「中長期的には仮想通貨のニーズはアップしてくる。その過程の中で、去年は上がり、今年は下がったということだと思う」と、あくまで強気だ。
12月12日、マネックスグループは事業戦略説明会を開いた。同グループの松本大社長ら、各事業領域を担当する役員らが出席し、事業の現状と今後の戦略について説明した。同グループの常務執行役とコインチェックの社長を兼務する勝屋氏は、「クリプトアセット(暗号資産)ビジネス」について話した。
巨額の流出事件後、コインチェックはほとんどの業務を停止し、ハッキングなどのリスクに備える態勢の構築を進めてきた。同社が抱える大きな課題は、正式な仮想通貨交換業者としての登録だ。これまでは、正式な登録が認められず「みなし業者」として運営を続けてきた。
勝屋氏は「ハッキングを受け、社会的な要請を代弁している金融庁の期待に応えるべく、計画書をつくり実行してきた」と説明する。
10月以降、段階的に新規の口座の開設を再開し、扱っている仮想通貨の入出金も再開した。仮想通貨の種類ごとに、ハッキング対策などが異なるからだ。
グループの戦略について説明する、マネックスグループの松本大社長
撮影:小島寛明
こうした動きの背景には、当然ながら監督当局である金融庁の意向がある。
業務の再開を金融庁が認めたことから、仮想通貨業界内では、コインチェックの正式な登録が近づいているとの観測が強まっている。別の取引所の幹部は「登録済みの業者を含めても、トップクラスに体制が整備されているようだ」と話す。
アプリのダウンロード件数が「170万件に近い」(勝屋氏)など、コインチェックには強力な顧客基盤がある。それだけに、同社の正式な登録が認められれば、淘汰が進む国内の仮想通貨業界で、さらに競争が激化しそうだ。
メディアから、2019年の業界について質問された勝屋氏は「新しいプレーヤーが参入し、競争が激化する一方、相場の状況次第というところもあると思う」と話した。
(文・小島寛明)