転職者に人気企業が非効率でもやっている3つのこと

若手イメージ

人口減少社会で、若手の採用は困難になる中、成功している3社の担当者に聞く。

撮影:今村拓馬

人口減少社会による人手不足で、人材争奪戦が激しくなる中、若手の採用に成功している企業は、何が違うのか?

20代の中途採用に意欲的かつ成功しているというコンサルティングのアクセンチュア、名刺クラウドサービスのSansan、オンラインゲームのバンダイナムコオンラインの3社の採用担当者が、その秘訣を明かした。採用成功のカギを握ると思われる、3つのポイントをみてみよう。

絶対に20代というわけでもない

座談会

3社の採用戦略についてのトークは、ビズリーチ主催の座談会で行われた。

撮影:滝川麻衣子

12月12日、ビズリーチの20代向け転職サイト「キャリトレ」が、3社の採用責任者を集め、都内で座談会を開いた。業界も会社のタイプもまったく異なる3社ながら、若手の中途採用のポイントには共通点が浮かび上がってきた。

そもそも、中途採用する20代に期待していることは何なのか。開発に若手の視点が欲しいという、明解な意見はある。

バンダイナムコオンラインの取締役で経営企画ゼネラルマネージャー品川淳司さん:そもそもターゲット(顧客)が若い方に寄っているので、30〜40代より 20代が、よりターゲットユーザーに近いです。よりユーザーの気持ちが分かる年代で、開発をやってほしいというのがあります。

Sansan

Sansanの中途採用グループリーダーの金明正さん。「あくまで能力採用」だ。

撮影:滝川麻衣子

多様性も理由になる。

Sansanの中途採用グループリーダーの金明正さん:(Sansanは)代表も40代前半で若い会社ですが、絶対に20代がいいというわけでは、実はありません。あくまで能力で採用しています。20代で能力とポテンシャルがあって、(会社の成長スピードに)キャッチアップいただける方に関しては積極的に採用しているという状況です。

能力があれば何歳でも。

アクセンチュアの採用アソシエイトマネジャーのダニエル・ゲルバーさん:「絶対に20代にフォーカスしているというよりは、全面的に採用を強化しています。この3、4年、会社は成長していて、多様性をもった採用をしなければ人材需要が満たせない。年齢も多様性が必要ということで、20代も強化しています。

新卒採用ですら、採用充足できていない企業がほとんどという中で、直近半年でも20代の採用に成功している3社が、採用活動で力を入れているポイントは何なのか。

1.個に合わせてカスタマイズする。

アクセンチュアケルバーさん

アクセンチュアの採用アソシエイトマネジャーのダニエル・ゲルバーさん。個に合わせた採用の必要性を感じているという。

撮影:滝川麻衣子

アクセンチュアのゲルバーさん:20代の人たちを見ると、個を大事にしているという印象があります。パーソナライズ、カスタマイズされた対応を求めている人が多い。20代のうちはとことんがんばりたい人もいれば、子どもの送迎をしたい人もいる。それぞれのニーズに合わせて、ワークライフバランスや人事制度の説明をしています。

知名度が上がって入社希望者も増えたとはいえ、競合も多く「最終的に入社を決めてもらうのは簡単ではない」と話すSansanも、個のニーズの深掘りをするという。

Sansanの金さん:データでも出ているが、(採用の)候補者は「どこで働くより、何をするか」が大事。フィット感というか、自分が楽しく働けるのかなということを20代は大切にしているなと。面接でも何をしたいか、入社後何ができるのかを深掘りしていきます。

知名度の高い大企業の子会社という看板は、必ずしもメリットだけではないからこそ、個別のケアが必要という。

バンダイナムコオンラインの品川さん:(バンダイナムコオンラインは)バンダイナムコグループの中では、コアに寄ったターゲット層の会社で、そういう開発陣を抱えています。バンダイナムコだけのイメージで来ても、ズレが生じてしまうことも。コアターゲットと合っているか。ミスマッチが起こらないように、当社のことを正しく知ってもらえるよう、面談を徹底しています。

2.効率よりも、手間を惜しまない。

アクセンチュアのゲルバーさん:数十人を呼んで一方的に採用側が話すのではなく、採用担当者も増やして、一人ひとり(の候補者)と話せる時間を設けています。平たくいうと、採用目標もありますので、それぐらいしないと(笑)。効率がよくないかもしれないが、効果的ではあります

採用は全社でやる勢いだ。

Sansanの金さん:面接の後も必ず、人事が候補者のフォローに入りいます。思ったような話ができたか、できなかったとしたら何を話したかったのかをヒアリングして、キャリア・コンサルティングに近いことをしていますね。

月イチの社員交流の場に候補者をお呼びして、社員に会ってもらったり。面接以外でも、みんなで採用しようという意識をもっています。手間はかかりますが結局、それが、一番採用できます

バンダイナムコオンライン

バンダイナムコオンラインの取締役で経営企画ゼネラルマネージャー品川淳司さん。採用候補者には、いろんなレイヤーの人に何回も会ってもらうという。

撮影:滝川麻衣子

バンダイナムコオンラインの品川さん:社内の食堂やラウンジで、カジュアル面談を徹底しています。いろんなレイヤーの人間が泥臭く関わっていますね。同じ年代の社員がいいのか。経営層がいいのか。候補者の希望に応じて、いろんなレイヤーの人に何回も会ってもらいます。

3.採用後のフォローを大切にする。

採用は入り口であって、肝心なのは入社後だ。入社後のフォローも各社、余念がないのが印象的だ。

Sansanの金さん: 経験や素地を持った人を採用しているので、これまで入社後の活躍は個人に任せていたが、直近は、(中途入社の人が)いかに早く軌道に乗れるか、ベテランならどう生産性高められるかを考える組織を作った。全然違う業界から来た人でも(Sansanの企業理念やカルチャーに合った)マインドセットがあれば、活躍できるので、スムーズに軌道に乗る支援をしている。

若手が活躍できる素地がある。

バンダイナムコオンラインの品川さん:ゲーム開発のプロジェクトは20〜40代までさまざまで、若手だから発言しにくいということは、そもそもありません。若手でも、本人の頑張り次第でプロジェクトの中で発言して、開発や運営に大きな影響力もつことは、たくさんの社員ができている。

入社後数カ月が肝心だから。

アクセンチュアのゲルバーさん:入社後、2〜3カ月が肝だと思っています。面接の段階で入社後に担当してほしいプロジェクトを(面接官に)書いてもらい、内定者にも、こういう仕事が待っていますよと説明しています。研修やトレーニングも重ねて、早くキャッチアップできるようにするのがポイントです。

「結局、採用は人と人の接触が重要」(Sansanの金さん)というように、①個への対応②手間を惜しまない③入社後のフォローと、いずれも手間暇やコストを惜しまないのが、一見、非効率に思えても、最終的には近道なのかもしれない。

(文・滝川麻衣子)

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