楽天出資・自律ドローンのACSLが上場、株価は公開価格を大幅に下回る

ドローンを扱う電力会社の社員

ドイツのヴィルンスドルフで、ドローンを使って高圧電線を点検する電力会社社員(写真は本文とは関係ありません)。

REUTERS/Ralph Orlowski

楽天が出資する完全自律型ドローンベンチャーの自律制御システム研究所(ACSL)が2018年12月21日、東証マザーズ市場に上場した。eコマースを代表するアマゾン(Amazon.com)と楽天が、ドローンによる配送を本格化させようとピッチを上げてその技術開発を進める中、ACSLの上場はドローンを中心とした新たな産業創出に弾みをつける。

21日午前、ACSL株は1株2830円の初値をつけた後、一時2332円まで下落。公開価格の3400円を大幅に下回った。時価総額は、約240億円。ソフトバンクが約2兆6000億円の資金を調達し、過去最大の株式上場を果たした2日後のデビューではあるが、国産ドローン・ベンチャーによる初のIPOとして注目を集めた。

ACSLは2013年11月に元千葉大学教授の野波健蔵氏によって設立されたスタートアップで、同氏の研究開発による独自の飛行制御技術を使って産業用ドローンを開発している。ACSLは、東京大学エッジキャピタル(UTEC)が19.9%、野波氏が14.2%、楽天が12.8%の株式を保有している(有価証券報告書より)。年間売り上げ(2018年3月期)は3億7000万円、営業損失は5億4200万円を計上している。

楽天は、物流におけるドローンの活用を目指す「楽天ドローン」と、ドローンの空域管理システムを開発する「楽天AirMap」の二つの大きなドローン事業を進めている。楽天ドローンでは現在、2020年末までの商用化を目指して、ドローン配送の安全性などを検証している段階だ。

楽天ドローンの可能性

ACSL

ACSLのHPより

楽天は2016年に、ドローン配送サービスを実験的にスタートさせた。第一弾は、ゴルフコースでプレイヤーがスマートフォンアプリを使って、ゴルフ用品や軽食、飲み物などを注文するとドローンがコース内の受取所まで商品を届けてくれるというもの。使用したドローンは、ACSLが開発した機体を、楽天とACSLが共同で改良した。

2017年、楽天はローソンとタッグを組み、福島県南相馬市で約6カ月にわたりドローンを使った商品配送を試験的に行った。ドローン配送とコンビニエンスストアの移動販売を組み合わせた取り組みは、日本では初の試みとして話題となった。

また、都市部におけるドローン配送を可能にする上で、ドローンの着陸地点から配送先の玄関口までの配送手段の構築は大きな課題だ。そこで、楽天は2018年10月に国家戦略特区である千葉市で、ドローンと地上配送ロボット(UGV=Unmanned Ground Vehicle)を組み合わせた配送の実証実験を行っている。

ACSLは、顧客に機体を販売するだけではなく、ドローンを導入する上でのコンセプトを検証し、それに応じたシステムの設計、開発、製造を行っている。同社のドローンは、橋や高速道路、ダムなどの点検作業にも活用されている。三信建材工業(本社・愛知県豊橋市)は、GPS(全地球測位システム)が利用できない環境下で、ドローンを使ってインフラ構造物の0.1ミリレベルのクラック(ひび)の抽出を可能にするという。

アマゾン Prime Airのテストフライト

アマゾン「Prime Air」の配送ドローンのイメージ

アマゾン「Prime Air」の配送ドローンのイメージ。

アマゾン「Prime Air」のHPより

一方、アマゾンは2016年12月、ドローンを使った配送サービス「Prime Air」による初の配送をイギリス・ケンブリッジシャー州で成功させた。飛行時間は13分で、初の民間テストだった。アマゾンは今後、地上を走る郵便トラックのように、Prime Airのドローンが荷物を配送できる日が来ると述べる。

Prime Airは現在、多様のデザインとメカニズムのドローンのテストを実施し、異なる運行環境における配送方法を模索しているという。開発拠点をアメリカ、イギリス、オーストリア、フランス、イスラエルなどに置き、機体の試験運用を続けている。

中国やアメリカにおけるドローンをめぐる開発や規制改革の動きは、日本よりも速いペースで進んでいるという専門家の声が聞かれる中で、ACSLの今後の展開に注目が集まりそうだ。

(文・佐藤茂)

(編集部より:株価を追加して、記事を更新しました)

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