「30歳になったら転職」と考えている人に読んでほしい。30歳でスカウトが激減する理由

信号を待つ男性

30歳になってスカウトが激減した(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

今年、筆者は30歳になった。

最初は大手金融機関に入社し、3回の転職を経て今はHRベンチャーの経営企画室で働いている。今年の12月で2年となる。今年は節目にふさわしい多くの貴重な経験を積むことができた。

実力も今までのキャリアの中では、最も身についた2年間だったと思う。ベンチャーの経営者や役員の方から直接ありがたいお誘いをいただくことも増えた。

一方で、不安になったことがある。

登録しているダイレクトリクルーティングサービスの企業やエージェントからのスカウトが激減したのだ。

Twitterで何となくその気持ちを書くと、予想以上に反応があった。

30歳になったらセカンドキャリアを考えてみようという人も多いのではないだろうか。とりあえず3年、とりあえず30歳。もしその「とりあえず〇〇」に根拠がないのであれば、今から書くことを情報として知っておいてほしい。

明らかにできることは増えた。一方ダイレクトリクルーティングスカウトはなぜ減ったのだろうか。気になった筆者は、最近まで中途転職サービスの営業をしていた後輩に聞いてみた。

「そうなりますよ。人材データベースを使う人が、スカウト送る前の検索画面で29歳以下を検索することはよくありますから」

よく考えたら当たり前のことだった。

年齢で区切るなんてとボヤく前に

例えば、サッカーゲームの監督を体験できるプレイモードで自分が選手を探すときも、若手有望選手を探すときは年齢やポジションなどで検索して一覧から探している。ベテランの選手はバイネーム(名指し)で検索している。

若手有望株を探すときに、確率論的にまずは一次フィルタで20代に区切って検索するのは、人を探す側からすると自然な行為だ。あなたが「とりあえず30歳」と考えるのと同じで、企業や人材会社も「とりあえず20代」と考えているかもしれない。

35歳になると履歴書すら見てもらえないなんて話も聞く。情報としては知っていたが、実際に自身もスカウトが半分ほどになるとリアリティが湧く。

働く男性

“機械的なマーケット”にいられるのは20代までだ(写真はイメージです)。

shutterstock / tuaindeed

「年齢で機械的に切るなんて、見る目がないよな」

そうぼやくのは簡単だ。

ただ、ちょっと落ち着いて考えてみると、大量の転職希望者と大量の採用したい企業が効率的に出会ううえでハード情報で区切って検索するのはごく自然なことだなと思う。

個人側の希望条件で地区や希望年収〇〇万円以上のチェックボックスがあるように、採用する側の画面にもチェックボックスがあるかもしれない。これだけみると相互に同じことをしているし、フェアである。

それが本当ならば、僕たちは30歳からその機械的なマッチングのマーケットからは「卒業」しないといけないのかもしれない。

バイネームで検索がかかるような人になるか、専門的なスキルや需給が需要によっている経験をレジュメに残しておかないと、いわゆる20代以下の機械的なマーケットでは現実問題として検索画面にすら自分のレジュメが出てこない。

入社1日目で転職サービスに登録も

Business people discussing the charts and graphs showing the results of their successful teamwork

「すぐ転職するとは限らないが、常に情報と選択肢を持って働きたい」というニーズ。

shutterstock / PORTRAIT IMAGES ASIA BY NONWARIT

今年は自身の周りで「マーケットバリュー」という言葉を聞くことが多くなった。

労働市場における自身の現在価値を知っておくことが大事だと。マーケットバリューについて論じている『転職の思考法』が2カ月で10万部のベストセラーとなったのもそういった「すぐ転職するとは限らないが、常に情報と選択肢を持って働きたい」というニーズが背景にあるのだろう。

あって当たり前と思っていた会社がいきなり潰れ、知りもしなかった会社がいきなり脚光を浴び始めることもある。1社に全てをかける生き方をリスクと感じ、いつでも転職できるよう、社員が常にマーケットバリューを意識するようになるのも無理もない。

事実、入社1日目でダイレクトリクルーティングサービスに登録する新卒の新入社員もいる。話を聞いてみると、「すぐ転職する気はないが、自分が労働市場でどれくらい求められているかはちゃんとモニタリングしておきたい。その会社でしか使えない人材になると辞めたくても辞められない。仕事は頑張りたい。ただ、ぶらさがり人材になりたくない」という。健全な考え方だと思う。

有能な人が採れない時代へ

電車を待つ男性。

新卒でも1000万円のオファーがある。現代は、優秀な若手の確保が、これまでになく困難だ(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

以前も、投資と消費の記事で書いたが、企業側にとっても入社させてしまえばとりあえず安心だという考え方は、だんだんと通用しなくなっている。

あなたの会社で毎日当たり前のように頑張って働いている社員も転職エージェントに登録し、常に自分の価値を、「残留した場合」と「移籍した場合」に天秤にかけているかもしれない。組織に消費されて他で通用しなくなると気づいたらある日、ふっと退職届を出してくるかもしれない。

事実新卒でも1000万円以上の年収提示もあるし、有能なコンサルタントや有能なエンジニアの採用フィーは相場の3倍を超しているケースもある。年収1000万円の人材を雇うために1000万円の紹介料を支払っているのだ。

「あいつは金に釣られた」「うちでは務まらなかった」と強がりを言っても会社としての損失を生んだ事実は変わらない。経営課題がモノが売れない時代から有能な人が採れない時代へシフトしていることに対し、経営に近い人間は危機感を持っている。

「最近の若者は我慢ができない」と年配の方が漏らしていた。これは恐らく我慢ができなくなったわけではなく、働く人が「我慢のための我慢は、する必要がない」と気づいただけなのだろう。

自分の時間の投資対効果を考えるようになり、その時間を在籍している会社以外に投資すればどうなるかを考えられるようになった。投資のやり方の選択肢が増えただけなのだ。投資のリターンはその会社での名ばかりの役職ではなくマーケットバリューに変わった。

逆説的かもしれないが、マーケットバリューを上げられるような会社ならば、当面の転職の必要はなくなるというわけだ。スカウトが激減し、いよいよマーケットバリューが問われる30歳からはなおさらだ。

どうなる2019年の働き方

ガラスに反射して映るサラリーマン

やりたいことをやるために(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

当然だが、これは「焦って転職しろ」という話ではない。

ただ、世の中の仕組みについて確りと事実を認識し、労働市場に自分をさらして、選択肢を持ちながら働くことはすでに当たり前になりつつある。やりたいことをやるために、手段として自分の労働市場での価値を算出す。そうすることで、選択肢を持って目の前の仕事を真剣に楽しんでほしい。

30歳を超えて悩んでいる人も、これから30歳になる人も、毎日仕事に行くことが楽しくなりますように。

2019年はそんな人が増えますように。

人に投資する企業と、時間に投資する有能な個人が出会っていい関係を築けますように。

そう願っている。

寺口浩大:ワンキャリアの経営企画 / 採用担当。リーマン・ショック直後にメガバンクに入行後、企業再生、M&A関連の業務に従事。デロイトで人材育成支援後、HRスタートアップ、ワンキャリアで経営企画/採用を行う。社外において複数HRに関わるコミュニティのデザイン、プロデュースを手がける。3月よりライターとしても活動を開始。https://note.mu/telinekd

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