12月20日時点のLINE Pay導入店舗のひとつ「スターバックス 新宿3丁目店」。
スターバックスコーヒージャパン(以下、スターバックス)とLINEは、12月20日から東京・新宿の一部店舗においてLINE Pay(コード決済)の提供を開始。早速、体験してみた。
今回の取り組みは、スターバックスが11月8日に公表し、12月5日に締結された両社の業務提携の一環によるもの。現在は以下の6店舗に絞った試験的な提供になっているが、両社は今後の対応店舗拡大を検討している。
2018年12月20日時点のLINE Pay(コード決済)対応店舗
- 新宿3丁目店
- 新宿南口店
- 新宿ダイアンビル店
- 新宿グリーンタワービル店
- 新宿西口店
- 新宿新南口店
LINE Pay据置端末を世界で初めて導入した店舗
導入した店舗のいくつかで店内を覗いてみたが、LINE Payロゴがあるのはレジ周りだけ。
LINE Pay(コード決済)は、すでにローソンやファミリーマート、ミニストップなどでも利用できるが、今回のスターバックスでの導入はそれらの決済方法とはやや異なる。
コンビニなどでは会計時にユーザーが2次元コード(バーコードおよびQRコード)をスマートフォンで表示し、それをレジの店員が読み取るというフローだが、今回のスターバックスの施策では、「LINE Pay 据置端末」に表示されるQRコードをユーザーがLINEアプリで読み取る“ユーザースキャン式”を採用している。
「LINE Pay据置端末」では、ユーザーがコードを読み取る「ユーザースキャン方式」を採用。
ユーザースキャン式と言えば、100億円あげちゃうキャンペーンで一世を風靡した「PayPay」もビックカメラなどで導入している。だが、PayPayのユーザースキャン式は、ユーザーが自分で金額を入力する必要があるなど、決済フローが煩雑になりがちだ。
しかし、今回のLINE Pay据置端末によるユーザースキャンは、店舗側が端末で金額を入力するため、ユーザー側はQRコードをスキャンし、スマートフォンに表示される内容を確認し、決済確定ボタンを押すだけでいい。
なお、LINE広報によると「LINE Pay据置端末が実際の店舗で利用できるようになったのは今回が初めて」だ。
スタバ店頭でLINE Pay、決済完了まで10秒
実際にLINE Payをスターバックスで利用してみた様子。LINEポイントを支払い額に充てることもできる。
実際に対応店舗で試してみたところ、QRコード読み取りから決済完了までは10秒未満だった。ローソンのような店側がスキャンするタイプに比べると店側の手間がややかかる印象だが、始まったばかりのサービスなので、店員の慣れ次第の部分もありそうだ。
レシートにはしっかり「LINE Pay」と書かれていた。
今回は2店舗で試してみたが、1店舗目では「LINE Payで」と言った後、すぐに端末を操作してくれてスムーズだった。しかし2店舗目では、どうやら筆者が初めての利用者だったようで、マニュアルでフローを確認しつつの作業になったため、約1分ほど時間がかかった。とはいえ、端末さえきちんと動作していれば、特に難しそうな手順はない。日が経てば、コンビニ同様に浸透しそうな手応えはあった。
独自決済「スタバREWARDS」とLINE Pay、どっちがトク? 徹底検証
ヘビーなスターバックスユーザーであれば、利用しているであろう「STARBUCKS REWARDS」。
気になる点は、LINE Payで支払った場合、スターバックスの会員プログラム「STARBUCKS REWARDS」の対象外となるところだ。
スターバックスカードとLINE Pay、どちらがスターバックスユーザーとしてはおトクなのか? 気になるところを計算してみた。
STARBUCKS REWARDSにはさまざまな特典があるが、その中でも一定の利用ごとに700円(税抜)までのドリンクと交換できる「Reward eTicket」の発行特典がメインと言えるものだ。
そこで、スターバックスでの支払いのみを想定し、Reward eTicketでの還元とLINE Pay(コード支払い)のポイント還元を比較したのが下記の表だ。
LINE Payは2019年7月末まで「コード決済」利用時に+3%のポイント還元があるため、一定額までの利用であればSTARBUCKS REWARDSよりおトク。
作成:Business Insider Japan
STARBUCKS REWARDSは、50円(税抜)につき1 Starが与えられ、このStarにはGreen StarとGold Starの2種類がある。最初はGreen Starが貯まっていくが、250のGreen Starを集めると、それ以降はGold Starでの獲得となる。Reward eTicketは250 Gold Starごとに1枚の獲得となるため、1回目の獲得には500 Star(累計2万7000円税込)必要で、2回目以降は250 Star(1万3500円税込)ごとの獲得となる。
一方、LINE Payのマイカラーは、前月の利用実績に応じて、「ホワイト(0.5%)」「レッド(0.8%)」「ブルー(1%)」「グリーン(2%)」というように還元率が変わる。また、2019年7月31日までの間は、スターバックスでも導入されているコード決済の場合、それぞれに+3%の還元となる。
そのため、LINE Payがおトクとなるのは以下のような場合だ。
- 支払い時点のマイカラーが「ホワイト」の場合、累計2万7000円(Reward eTicket 1回分)まではおトク
- 支払い時点のマイカラーが「レッド」か「ブルー」の場合、累計4万500円(Reward eTicket 2回分)まではおトク
- 支払い時点のマイカラーが「グリーン」の場合、累計12万1500円(Reward eTicket 8回分)まではおトク
2018年12月末までの期間で言えば、誰でもコード決済で20%還元となる「Payトク」の対象となるため、圧倒的にLINE Payの方がおトクだ。
出典:LINE
利用する期間などによってこの計算は変わってくるが、ドリップコーヒーのトールサイズであれば1杯345円(税込)なので、累計2万7000円を超えるには79杯ものコーヒーの購入が必要。それ以外のものを頼むとしても1週間当たり約7000円ほど利用している必要がある。つまり、たまにスターバックスで飲む程度の人は、LINE Payで支払った方がおトクと言える。
また、スターバックスカードの残高はスターバックスでしか利用できないのに対し、LINE Payの残高は前述のコンビニ各店やモンテローザ系列の居酒屋などでのコード決済、JCBのネット・リアルの加盟店でのLINE Payカード利用、QUICPay/QUICPay+加盟店など、比較的幅広く使える(かつ、利用することで、マイカラーの昇格にもつながる)ため、汎用性も高い。
スターバックスとLINEの提携は始まったばかり
スターバックスCEOのケビン・ジョンソン氏(左)と、スターバックスコーヒージャパンCEOの水口貴文氏。
撮影:西山里緒
スターバックスとLINEの両社の提携内容は、決済だけではなくリテール(小売り)も含めたものだ。この実験的なLINE Pay対応はその第一歩にすぎない。
例えば、LINEのトーク上でドリンクの注文から決済までができるようになるかは現時点では不明だが、米スターバックスCEOであるケビン・ジョンソン氏は、LINEとの提携を公表した11月8日の会見の際に「お店に来る前にオーダーをして、来店した時にはすでに飲み物ができている、という状態をつくる。店のテーブルでもオーダーができるようになる」と発言している。
PayPayブームのおかげで、キャッシュレス決済への心理的ハードルが下がったのは事実。LINE Payがこの情勢をうまくとらえて、漁夫の利で勢いにのろうと考えていたとすれば、なかなかしたたかだ。
(文、撮影・小林優多郎)