「風評被害が心配」「試練乗り越えたい」ファーウェイ日本の社員の本音

中国最大の民営企業・ファーウェイ(華為技術)の孟晩秋副会長兼CFOの逮捕が報じられて2週間。当初、米中、そしてカナダ間の問題に見えた事件の余波は日本にも広がっている。日本政府はファーウェイやZTEなどの中国製品を念頭に、情報漏えいやシステム破壊など悪質な機能をもつ情報通信機器を政府調達から排除すると決定。ソフトバンクなど携帯電話大手3社も、次世代通信5Gの基地局に中国製品を使わない方向で動いている。

ファーウェイが2005年に設立した日本法人「ファーウェイ・ジャパン」は現在約950人(うち現地採用が75%)の社員を抱え、中国勢の日本進出という面でパイオニア企業でもある。日中の架け橋として働いてきたファーウェイ・ジャパンの社員たちはこの2週間何を感じてきたのか、胸の内を取材した。

「排除」の連絡はない。いつも通りのオフィス

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東京・大手町のファーウェイ・ジャパンオフィスには、企業の精神を象徴するアートが多数飾られている。

撮影:浦上早苗

ファーウェイ・ジャパンの広報担当者は、ファーウェイが政府調達や通信キャリアから「排除」されるという報道について、「お取引している日本企業からは正式な連絡は何も受けていません」と説明しつつ、「ただ、日本でファーウェイという企業がかつてないほど注目されているので、ピンチをチャンスに変えていこうと頑張っています」と語った。

孟氏逮捕後のオフィスの様子は普段通りだという。関係者は、「内心思うところはあるかもしれませんが、今やらないといけない業務もたくさんあるので、目の前の仕事に粛々と取り組んでいます」と話した。

社員一人一人はどう思っているのだろうか。20代から50代の社員6人が、質問に文面で答えてくれた。原文のまま紹介する(カッコ内は所属部署、日本人・中国人の両国籍社員が回答)。

1. 今回の一連の問題が自分やファーウェイに与える影響は?

ファーウェイ

ファーウェイの名前が一気に広がったことを、前向きにとらえる声もある。

REUTERS/Aly Song

  • 10 年以上、日本の通信産業の発展と普及に努めてきた会社がこのように言われることはとても悲しいことだと思います。(営業部門、入社2年目)
  • スマートフォンなどの端末製品を取り扱っているだけに、報道だけをうのみにする方が増えるのではないかと風評被害が心配です。個人的には通常業務のかたわら中国人駐在員に少しでも日本の文化や社会を理解してもらうために、社内で日本ビジネスマナー研修などの活動に取り組んできました。積極的にいろいろな質問をしていた駐在員たちの表情を忘れられません。このような努力は決して無駄ではなかったと信じています。(サポート部門、入社7年目)
  • 「ファーウェイとは長年にわたり Win-Win 関係をベースにした信頼関係を築きあげてきた。だから、目の前の状況に左右されるはずがない」と、お客様から仰っていただいたときには心からありがたく感じました。困難である時こそ強く、困難こそチャンスに。(技術部門、入社4年目)
  • 会社からは随時、社内向けの説明や公式ステートメントの発表が行われており、その内容に基づき通常業務に取り組んでいます。(サポート部門、入社9年目)
  • 私達がコントロールできるものではありませんので、今後の影響については考えていません。どういった状況でも、いかに真剣に真摯に仕事に取り組みお客様の満足を得られるか、そこだけに注力しています。(技術部門、入社6年目)
  • 私たちは日本で13年間、事業を展開しています。その間に中国では経験したことのない規模の震災など、大小さまざまなチャレンジに直面し、その都度、お客様、パートナーとともに乗り越えてきました。これまで通り、お客様の予想を超える「顧客価値」を継続して提供できれば、おのずと結果はついてくると思います。(サポート部門、入社7年目)

2. ファーウェイを巡る報道について思うこと

孟晩秋

孟晩秋副会長兼CFOの逮捕で始まったファーウェイ問題。同氏は保釈され、カナダで次回の審理を待っている。

Reuters Pictures

  • 心配して電話やメールで励ましてくれる人や、この話題に触れないようにそっとしてくれる人など友人たちはさまざまな形で気遣ってくれているなか、個人的には普段と変わらず日々の仕事に取り組んでいます。関係者だけに事実にそぐわない報道も多々あることに気づき、あふれる情報との付き合い方の今後の指標になったように思います。(サポート部門、入社7年目)
  • ニュースに反応するのではなく、お客様に価値あるサービスを継続して提供することに専念した方が有意義だと考えています。(技術部門、入社4年目)
  • 今回は残念な話題から始まりましたが、当社の世界市場における実績などを知っていただくきっかけにもなりました。スマートフォンのメーカーとして認識していた方々にも、別の面からファーウェイを見ていただく機会になったのではないかと思います。曖昧な表現での批判のみで根拠を出さない報道については信憑性がないと捉える方も多く、逆に応援してくれるファンの方々の存在を改めて認識し、社員として嬉しく思いました。(サポート部門社員、入社9年目)
  • 良識的で冷静な判断をしているコメントや、弊社製品やサービスの良さに対するコメント等に励まされ、そう言ってくれている方々の思いにも応えるべく、より一層頑張ろうという気持ちになっています。非難の声が聞こえる一方、支持してくれる方が増えてきていると感じています。これからもよい製品、サービスを提供していき、やれることを粛々とやるにつきるのでは考えています。(技術部門、入社6年目)
  • 連日の報道でお客様やパートナーにご心配をおかけしておりますが、こうした時だからこそ、直接お会いして安心していただけるように心がけています。(サポート部門、入社7年目)

3. ファーウェイ(・ジャパン)への思い

オフィス

ファーウェイ・ジャパンで働く社員は約950人。日本人と中国人比率は半々という。

撮影:今村拓馬

  • 今回の件で、初めてファーウェイを知ったという声を多く聞きました。これからは、これまで以上に日本を理解し、同時に自分たちについても広く、深く情報発信していく必要があると思いました。(営業部門、入社2年目)
  • ファーウェイは中国で生まれ、グローバルに事業を展開する多国籍企業です。また、ファーウェイ・ジャパンは日本に根ざし、日本ならではの色を濃く出している企業だと認識しています。このような企業で働き、さまざまな経験をさせてもらっていることは貴重だと感じています。今回の出来事を一つの試練として、どんな事があっても、しっかりと信念をもって、お客様のことを第一により優れた製品・サービスを提供するための努力を怠らないこと、そして逆風の中ながら、より一層お客様の信頼と安心を得るようにしなければならないと考えています。(サポート部門、入社7年目)
  • 任さん(ファーウェイ創業者兼 CEO の任正非氏)は最近、「相手国の価値観を理解し、相手の立場で物事を見る必要がある。日本企業との共存共栄が一番大事」と言っていました。この理念を通して、ファーウェイ・ジャパンのこれからの 10 年、20 年、そして 50 年が見えてきました。(技術部門、入社4年目)
  • ファーウェイは中国を起点としたグローバル企業として、世界で活躍していますが、その背景には社員たちの計り知れない苦労や努力があるのは、日本そして世界の大手企業と変わらないと思います。(サポート部門、入社9年目)

4. 日本への思い

ファーウェイの創業者は日本が大好きで、桜が咲けば、その下で花見をしながら日本酒を飲み、日本人のように日本の四季折々の景色を楽しんでいるとか。またラーメンが大好きでいたる所にラーメン屋がある日本人はなんて幸せなんだと、いつも口にしているそうです。日本が好きすぎて中国人は誠実で真面目な日本人を見習わないといけない、日本人の職人気質を見習うべく、豆腐屋なら一番おいしい豆腐にとことんこだわりなさい、と常々社員に語っています。

会社の経営理念にもそのような創業者の気持ちが現れていると感じます。自己アピールを好まず、表に出ることが少ない創業者ですが、彼の気持ちが少しでも日本の皆さんに伝わっていれば、と悔やまれます。

また軍の背景などがとかく話題に取り上げられますが、少しでも中国事情に詳しければ、これを問題視することもなかったのではないでしょうか。

ビジネス交流も重要ですが、そのベースにある両国の相互理解がもっと深まることを願ってやみません。(サポート部門、入社7年目)

(文・浦上早苗)

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