ZOZOvs.ユニクロ ヒートテック戦争 —— PB注力にZOZO取引先からブーイング

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12月7日、ZOZOTOWNの倉庫ZOZOBASEからライブストリーミングで「ZOZOHEAT」を発表。

ZOZOライブストリーミングより

ファッション業界で2018年一番バズった企業を選ぶとしたら、ダントツで前澤友作社長率いるZOZO(旧スタートトゥデイ)だ。

ZOZOSUITは米タイム誌の「Best Inventions 2018」や小学館「DIMEトレンド大賞」の大賞、毎日新聞社の「毎日ファッション大賞」の話題賞も受賞。

前澤社長本人はTwitterを中心にSNSで積極的に情報を発信するとともに、剛力彩芽との交際をきっかけにバラエティ番組などへも露出が拡大。民間人初の月への周回旅行に名乗りを上げ、イーロン・マスク「スペースX」CEOと共同会見を行い、まさに時の人となった。

ZOZO前澤社長

月周回旅行で「時の人」となった前澤氏の会見には、報道陣が詰めかけた。

撮影:今村拓馬

肝心の商売でも、プライベートブランド「ZOZO(ゾゾ)」の発売を開始し、アパレルメーカー化を宣言。4月の決算発表時には中長期目標として「世界のアパレルブランドのトップ10入り」と、「時価総額5兆円」を掲げ、マーケットをざわつかせた。

世界のアパレルブランドトップ10のうち、四天王は次の4社だ。

  • 「ZARA」を擁するスペインのインディテックス社(253億3600万ユーロ、約3兆2936億円、1ユーロ=130円で換算、2018年1月期)
  • 「H&M」を展開するスウェーデンのH&Mへネス&マウリッツ社(2000億400万スウェーデンクローナ、約2兆6000億円、1スウェーデンクローナ=13円で換算、2017年11月期)
  • 「ユニクロ」「GU」を手がけるファーストリテイリング(2兆1300億円、2018年8月期)
  • 「ギャップ」「オールドネイビー」を扱う米ギャップ社(158億5500万米ドル、約1兆7757億円、1ドル=112円で換算、2018年1月期)

「ヴィクトリアズシークレット」を手がけるLブランズやアイルランド発祥の「プライマーク」に続き、しまむら(5651億円、2018年2月期)も10位にランクインしている。

サイズフォーカスで差別化

ZOZOTOWN

PB「ZOZO」のサイトには新商品のZOZOHAETやジーンズ、ホールガーメントで編み上げたニットなどがラインアップされ、「お試し」を促す施策も打ち出している。

ZOZOサイトより

2004年にスタートした「ZOZOTOWN」がファッション専門通販サイトとしては日本最大となり、取扱いショップ数は1183(2018年9月末時点)、年間購買客数が約777万人、2018年3月期に2705億円だった商品売上高は今期、3600億円を見込むところまで成長している。

とはいえ大半が他社商品で、オリジナル商品を製造販売するのは「ZOZO」が初めてとなる。

いまやOEM(相手先ブランドによる製造)の手法などを含めて、服を作ること自体はそれほど難しい時代ではない。また、これまでZOZOTOWNで獲得してきた会員や、顧客の購買データ、物流ロジスティクスなどのプラットフォームの資産を活用すれば、ゲタをはいた状態で商売ができると読んだのだろう。

さらに武器として、前澤社長はサイズにフォーカスすると宣言した。

「S・M・Lといった既存のサイズではなく、『自分サイズ』の服を提供することによってサイズ革命を起こしたい」

ZOZOの前澤社長

7月3日には「新生ZOZOビジョン」を発表し、ビジネススーツの発売や今後のPB、海外展開などについて語った。

REUTERS/Kim Kyung-Hoon

たしかに、通販の購入時の最大のネックといわれていたサイズ問題の一つの解決策ではある。

とはいえ、PB「ZOZO」の売上げ計画は荒唐無稽だった。

3年で2000億円目標という非現実感

初年度目標の200億円という数字は、ジーンズメイトの年商の2倍以上、マルキューの愛称で知られるSHIBUYA109の年間売上高をも上回るほどの数字だ。さらに2020年3月期が800億円、2021年3月期で2000億円とぶち上げたのだ。

2000億円といえばユナイテッドアローズやベイクルーズはもちろんのこと、三陽商会やTSIホールディングスなども抜き、アダストリアと肩を並べる規模だ。各社が何十年もかけて人を育て、モノを作り、仕入れ、店を構え、ブランディングをし、ファンを醸成してきた実績を、たった3年で追いつき追い越すというのは非現実的との声もある。

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「ZOZOSUITをなくす」という方針転換はマーケットにも大きな衝撃として伝わった。

ZOZOサイトより

しかも、ZOZOSUITは伸縮センサー内蔵型の採寸用ボディースーツが生産面や採寸の精度面で技術的な問題が起き、水玉模様の画像認識型に仕様変更しテクノロジー的にはダウングレード。しかも一部を除き配布が9カ月近く遅れるなど混乱をきたした。

さらに、7月に発売を開始したビジネススーツは、計測データに基づいた縫製パターンの自動生成システムに一部不具合が発生。不完全な縫製パターンのまま裁断・縫製して不良品が発生したり、提携工場とのデータの連携の不具合など初歩的なミスもあった。

結局、10月末にはZOZOSUITの国内での配布を原則中止とし、ZOZOSUITなしでPBが買える形に大幅に方針転換を図った。

起死回生の策だった「ZOZOHEAT」

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物流センターのZOZOBASEからZOZOHEATの発売を発表。ビジネススーツの配送遅れを反省し、1000サイズ展開で大量の商品ストックを用意していることをビジュアル的にアピールした。

ZOZOライブストリーミングより

起死回生策として12月7日、Tシャツ、ジーンズ、オクスフォードシャツ、ビジネススーツ、ドレスシャツ、ネクタイに続き発売したのが、「ZOZOHEAT」(990円)だ。あったかインナーといわれるものの一つで、ユニクロのヒートテックに明らかにぶつけてきたものだ。

発表当日にはZOZOのコミュニケーションデザイン室長を務める田端信太郎氏が、ZOZOTOWNの倉庫ZOZOBASEからライブストリーミングで告知を行った。

それによると、1000以上のサイズを展開。ビジネススーツの配送遅れの反省から、事前に大量に生産し、ストックを用意。ZOZOSUITで全身を採寸するか、身長、体重、性別、年齢などを入力して注文すると、最適サイズを送り、不満なら返品・交換を受け付ける、と明かした。

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ZOZOライブストリーミングより

日本ではあまり行わない相手を名指しした「比較広告」も実施。ZOZOHEATは定価も値引き時もヒートテックよりも価格を数十円ほど安く設定。ISO認証の検査機関のデータをもとに保温性についても優位性を強調した。

ただし、ユニクロのあったかインナーの中で、一番ロースペックのヒートテックとだけ比較したもので、1.5倍暖かい「極暖」やその1.5倍(ヒートテックの2.25倍)暖かい「超極暖」のシリーズについては全く触れないという状況だった。

あったかインナーは激戦市場

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日本で特定の競合を名指しで比較広告的な紹介をすることは珍しい。左は、ZOZOのコミュニケーションデザイン室長を務める田端氏。

ZOZOライブストリーミングより

ユニクロのヒートテックは東レとの共同開発商品だが、日経新聞によるとZOZOHEATはクラボウが特許を持つ特殊な糸を使用。合繊のヒートテックに対して、ZOZOHEATはメリノウールとモダールを採用。天然コットンを95%使用した「ZOZOHEAT COTTON(ゾゾヒート コットン)」(1290円)と2種類で、2019年3月までに数百万枚の販売を計画していると報じられている。

だが、ZOZOHEATがたった4カ月で数百万枚も売れるとは到底考えられない。

ちなみにヒートテックは2003年に発売して以来、累計売上高が2017年秋冬の段階で10億枚を突破したメガヒットアイテムだ。これまで使用した生地は約70万キロで、地球約17周半に相当するほどだ。

あったかインナーのジャンルは、すでに国民的アイテムだ。しまむらの「ファイバーヒート」、無印良品の「綿混あったかインナー」、グンゼの「ホットマジック」、イオンの「ピースフィット」、セブン&アイの「ボディヒーター」、ベルメゾンの「ホットコット」、ユニクロの妹弟ブランドGUの「ジーユーフィット」など、各社の冬の目玉商品になっている。ユニクロの「ヒートテック」がダントツ強いが、独占しているわけではない。

ウルトラCがあるとすれば、お正月や年明けのセール時などに「無料配布」をして拡散することだろう。ZOZOSUITは今期、1000万枚の配布予定を上限で300万枚に削減。30億円のコスト抑制につなげたという。これを原資に、ZOZOHEATをPBのプロモーションに活用するなら納得だ。

取引先から漏れてくる不満

ZOZOがユニクロを本気で脅かすほどの存在にはなるには時間がかかりそうだ。特にPBに反応しているのはSNSで見ていても男性が中心で、ZOZOTOWNのアクティブユーザーのうち68%を占める女性層の反応が薄いのが大きな問題だ。ZOZOSUITでの採寸を敬遠したり、PBのラインアップがビジネススーツを中心にメンズが先行しワンピースなどの投入が遅れていることなども理由だ。

気になるのは、PBの立ち上げを機に噴出する既存取引先ブランドからの反発だ。ZOZOTOWNは百貨店並みに料率(出店料)が高いといわれている。とくに出店企業から聞こえてくるのは、「ZOZO依存率を下げ、自社ECを強化する」という話だ。ZOZOTOWNに出店しているアパレル企業からは、

「ブランドが増えすぎて自社の商品が埋没してしまった」

「低価格ブランドが大勢を占め、価格志向の利用者ばかりになっている」(実際、平均商品単価は2年前に比べて5~10%低下)

「ZOZOで買い物をしたという記憶は残っても、うちのブランドの商品を買ったという良い購買体験が残らない」

「顧客データを共有してくれない」

という不満が噴出。そこにきて「僕たちの売上げで得た利益でPBの宣伝ばかりしているのは信義にもとる」「僕たちの商品のデータをもとにPBの商売をするなんてけしからん」というのだ。

ユナイテッドアローズのZOZO離れ

12月18日には日経クロステックが「ユナイテッドアローズがZOZO離れへ、ECサイトの開発委託先を変更」と報道。ZOZOTOWN創設時からの有力メンバーで、テナント誘致にも大きな役割を果たしてきた企業がZOZO子会社のアラタナから開発委託先を替えるというニュースは、アパレル界に衝撃を与えた。

前澤社長は常々、「競争が大嫌い」で、社員の賃金は一律に設定。争わなくてもいいように、人がやっていないこと、未開の分野に踏み込んでいくと語っていた。

個人的には、ZOZOのPBはモノづくりのノウハウがあるセレクトショップやアパレルと協業、あるいは、顧客とともにプロトタイプを改良する共創型にしたほうが成功確率が高まるのではないか、と考えている。

今の独り勝ちを狙う姿勢ではパートナーたちからの賛同は得られないだろう。ユニクロを追い、アパレルのトップ10を狙うには、急がば回れ、の姿勢が必要なのかもしれない。

松下久美:ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表。「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。2017年に独立。著書に『ユニクロ進化論』。

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