メルカリがシニア世代を狙う理由——「バズった」チラシ広告の戦略をCMOが語る

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フリマアプリ大手メルカリが12月に、北海道と愛知県限定で配布したチラシ広告が注目を集めている。ファッション、家電、バラエティ商品の3種類が、新聞の折込チラシとして計192万部配布され「スーパーのチラシと思ったらメルカリだった」と、Twitterを中心に全国的に話題に。フリマアプリとしては異例のチラシ広告に乗り出したメルカリの狙いを、担当役員と仕掛け人に直撃した。

シニア開拓と潜在層の掘り起こし

「メルカリといえば、若い人が使っているイメージだと思いますが、40〜50代にもポテンシャルがあります。折込広告はいろんな世代が見る。へえ、こんなの売っているんだ、という親子や夫婦の会話が生まれるんじゃないかと」

メルカリ執行役員CMOの村田雅行さんは、「メルカリがチラシ」に乗り出した広告戦略の真意として、ユーザー層の年代を越えた拡大をまず挙げる。

フリマアプリのメルカリにとって、紙のチラシ広告は初めての試み。まずはテストエリアとして2地域を選び、動向を見て今後の拡大を検討するという。


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メルカリ執行役員CMOの村田雅行さん。メルカリチラシは、驚きや違和感から生まれる会話が狙いだ。

チラシのデザインは、まるで地域の家電量販店やホームセンター、ユニクロのような小売の折込チラシに見える。それがよく見れば、実は店舗を持たないフリマアプリのメルカリだった —— 。

こうした「違和感」や「驚き」から会話が生まれ、ひょっとしたら「メルカリ知らないの?(スマホにメルカリの)アプリ入れてあげるよ」といった親子のやりとりが起きているかもしれない。こうして、オンラインでは届かない層との接点を増やすことが狙いにある。

しかしスマホ全盛期、紙離れ、新聞離れと言われて久しい現代。折込チラシにどれほどのインパクトがあるのか。

「折込チラシって見る?と、実家の母に聞いたら『折込チラシは月、水が少なくて金曜がユニクロで』と、LINEでばばーっと詳しい話が送られてきて。意外とエンゲージメントが高いメディアなんだなと実感しました」

そう話すのは、株式会社GOのクリエイティブディレクター、砥川直大さん。GOは、メルカリの折込チラシのキャンペーンを手がけた。

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メルカリが配布したチラシ3種の一つ、ファッションチラシはまさにユニクロを彷彿とさせる。懐かしい折込チラシそのもの。

もう一つのポイントは「潜在層の掘り起こし」だ「多くの方に名前は知って頂いているが、実際に売ったり買ったりという層については、まだまだ伸びしろがある」(メルカリCMOの村田さん)。現在、メルカリアプリのダウンロード数は7500万、そのうち実際に買い物など取引をしている月間のアクティブユーザー数は1100万人と、巨大なプラットフォームを築きつつある。

この7500万ダウンロードとアクティブユーザー1100万人のギャップこそが「ダウンロードはしているけれど、使ったことがない」という、潜在層のポテンシャルとも言える。

「いかにメルカリの内側を知ってもらえるかが、潜在層を動かすカギだと思っています」(メルカリCMOの村田さん)。

メルカリチラシ5つの注目ポイント

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メルカリCMOの村田さん(右)と、チラシ広告のプロモーションを手がけた、GOのクリエイティブ・ディレクター砥川直大さん。

シニア層の開拓と、メルカリの内側を見せること。2つの課題に応えた、メルカリの折込チラシの戦略的ポイントを見てみよう。

1. “内側”を出しやすい媒体にする

「トイレットペーパーの芯も売れるんだ」「家電カテゴリーならうちの掃除機売れるんだ」など、アプリを開く前に、リアルな”メルカリの中身”を知ってもらえる。

2. 一覧性で伝わるメッセージ

「洋服だけでなく、とにかくなんでも売っている、なんでもあるということを見せるために、平面に置くことは効果的。チラシの一覧性は大事でした」(GOの砥川さん)。

3. 商品は実際の出品物

チラシに使われている写真は、プロが撮影したものではなく、実際にメルカリ上にアップされている、出品者の写真を使っているという。かえって手が込んでいる。結果的に消費者と消費者のやりとりの場である、CtoCならではの「メルカリっぽさが出ている」(メルカリCMO村田さん)。

4. エリアによって変わるチラシの中身

実は配布した北海道と愛知で、チラシの中身は別物だ。地元の球団の選手の名前入りユニフォームやご当地お菓子など、地域性に合った出品物をチラシに入れた。アプリ上の店舗であるメルカリは、住んでいる場所に購買行動が制限されない。地方を取り込んできた実態があり、ご当地カスタマイズは重要な要素だ。

5. 思わず誰かに言いたくなる

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「こんなものが売っているんだ」という発見を、呼び起こすつくりを凝らした「バラエティ」分野のチラシ。

提供:メルカリ

モノトーンのチラシかと思えば、裏はカラーでメルカリアプリの説明をしていたり、お店まで「徒歩0分」と書かれていたり。凝ったつくりが話題を誘う。「メルカリはもともと、クチコミで広がってきた」(メルカリCMO村田さん)こともあり、ユーザー拡大に期待する。

シニア層のもつかくれ資産という市場

現在、ユーザー層は20〜30代女性が最多というメルカリだが、シニアの拡大に力を入れるのには、明白な理由がある。

ニッセイ基礎研究所と共同でメルカリは今秋、一般家庭に眠っている不要品(1年以上利用していない品物)に、メルカリでの平均売買価格をかけあわせた「かくれ資産」について男女約2500人に調査。これを元に、日本のかくれ資産総額は37兆177万円と、独自に推計した。にわかに信じがたい金額だが、“価値ある不要品”が、まだまだ眠っているのは事実だろう。

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メルカリがチラシを出す意味は、競合が変わってきたということ」と話す、砥川さん。

年代および性別でのかくれ資産総額を見ると、60代以上の女性がもっとも多く、資産の所有量は「年齢にほぼ比例」という結論が出た。

つまり、シニア層がフリマアプリを使いだせば、市場は一気に拡大する可能性を秘めているのだ。

メルカリは12月上旬、60歳以上限定でファンミーティングである「メルカリサロン」を開催するなど、シニア層の活性化に余念がない。「終活として身の周りの整理にメルカリを使っている」という人も増えているという。

メルカリがメルカリを超える日

「メルカリのライバルがもはや、アプリの世界にとどまらないということです」

ユニクロや家電量販店を彷彿(ほうふつ)とさせるメルカリチラシのキャンペーンを手がけた、GOの砥川さんは言う。

リアル店舗を構えた大型チェーンのホームセンターや家電量販店、ユニクロで買うのか。それともメルカリで買うのか。消費者が選ぶ時代が来ていることに他ならないとみる。

そうしたメルカリが目指す先は「ライフインフラです。何かを買う時には必ずメルカリをチェックするような、生活の一部になりたい」(メルカリCMO村田さん)。

フリマアプリのメルカリが今冬、折込チラシに着手したことは、メルカリの勝負がアプリの外へと拡張する、次のステージの幕明けといえるかもしれない。

(文・滝川麻衣子、写真・岡田清孝)

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