世界的な好景気が続く昨今。写真は2017年末の年末商戦に沸くメキシコ第三の都市・モンテレイ。日本のネット通販も今年は盛り上がりそうだ。
REUTERS/Daniel Becerril
日本の景気回復は戦後最長の73カ月に達し、内閣府の景気動向指数は1980年代後半から90年代初頭のバブル景気に匹敵する値を示している。
アメリカの景気も(不安をいろいろ残しながらいまのところ)順調で、11月後半からのいわゆる年末商戦では、ネット通販が過去最高ペースで売り上げを増やしつつ、リアル店舗も含めた全体としても堅調な伸びが続いているという。
日本でもネット通販が伸びており、楽天とヤフーの取扱高、アマゾンの日本事業の売上高を足した額は、2017年に初めて百貨店の販売額を上回った(日本経済新聞2018年2月17日付)。年末商戦でもアメリカ同様、売り上げを大きく伸ばすと予想されている。
楽天市場にデータ提供を依頼してみた
ヤフー、アマゾンと並び、日本のネット通販大手の一角を占める楽天のECサイト「楽天市場」。
出典:楽天市場サイトより編集部キャプチャ
市場拡大を続けるネット通販で、いったいどんな商品が売れているのか。具体的に想像してみたことはあるだろうか。
国内ネット通販大手の一角である楽天(市場)の協力を得て、2016年末〜2017年始、2017年末〜18年始という直近2年の需要集中期に、「ほぼミレニアル世代」(20歳〜39歳)にどんな商品が売れたのか、振り返ってみた。
(集計期間は、2016年12月26日~2017年1月4日と、2017年12月25日~2018年1月6日)
全商品を対象にした「総合」ランキング(トップ20)だけでなく、多くの人にとって身近な「食品・飲料」「日用品・生活雑貨」「家電」というジャンル別の詳細ランキング(同)も見ることで、2018年末〜2019年始に売れそうな商品も、何となく見えてきた。
食品部門:「たらば蟹」「ずわい蟹」
楽天、ヤフー、アマゾン、いずれも年末年始の売れ筋にランクインするカニ。
出典:楽天市場サイトより編集部キャプチャ
まずは「食品・飲料」部門。
時節柄、圧倒的な存在感を見せるのは「カニ」(たらば蟹・ずわい蟹)だ。2016年末〜2017年始は上位20商品のうち11商品が、2017年末〜2018年始も12商品が、カニで占められている。タイやイセエビなどと並んで縁起物の代表格ではあるが、売上高ランキングの過半数を占めるほどにネット通販で買われているというのは意外だった。
また、定番の「クリスタルガイザー」やテレビ番組で話題になった「KUOS炭酸水」といったミネラルウォーターのパッケージ(500ミリリットル×24本)も、2年連続で3商品が20位以内にランクインした。
参考まで、2018年12月25日時点のアマゾンの「食品・飲料」売れ筋ランキングを見てみると、上位はミネラルウォーターが独占。飲料が上位を独占したあとにぽつぽつ登場するのは、やはりカニだ。楽天もアマゾンも、年末年始はとにかくカニと水なのだ。
ちなみに、農林水産省「国内外における農産物流通等の状況に関する調査について」(2018年9月公表)によると、食品販売業態のシェアはスーパーが27%、コンビニ21%、通販・宅配はわずか8%に過ぎない。
生鮮食品などネットスーパーの規模拡大がさまざまなメディアで報じられているものの、まだまだ近所のスーパーやコンビニが食卓を支えているのが実情だ。ネット通販が非日常的なニーズの受け皿になっているのは、ある意味当然の結果とも言えるだろう。
日用品:育毛剤「リアップ」
年末年始にまとめ買いする理由は不明だが、日用品ジャンルでは圧倒的なシェアを誇る。
出典:楽天市場サイトより編集部キャプチャ
続いて「日用品・生活雑貨」部門。
こちらも圧倒的な存在感を誇る商品がある。大正製薬の育毛剤「リアップ X5 プラス」だ。2016年末〜2017年始は上位20商品のうち11商品、2017年末〜2018年始も7商品をリアップが占める。食品部門のカニ並みのシェアだ。
他にもロート製薬の排卵検査薬「ドゥーテスト LHa」が2商品ランクインしており、薬局などの対面販売ではなかなか買いにくい商品が売れていることが分かる。「一年の計は元旦にあり」と言われるように、毛活にせよ、妊活にせよ、年の変わり目をきっかけに一念発起しようということ?
ヤフーグループのLOHACOなど、ネット通販で日用品を買う人は増えている。楽天やアマゾンでは口コミが強いようで、スーパーの店頭では見かけない商品が数多くランクインしている。
出典:楽天市場サイトより編集部キャプチャ
また、年末年始に大掃除をする家庭が多いことや、年末年始に実家を離れていた子どもたちが帰省して洗濯物が増えることもあるのだろう、小売店ではあまり見かけない種類の洗剤や除菌剤が上位にランクインしているのが目立つ。
年末年始2年連続でトップ20入りの消臭除菌水「サライウォーター」や業務用洗剤「緑の魔女ランドリー」、2017年末〜2018年始にリアップを抜いてこの部門のトップに立った洗濯用洗剤「オキシクリーン」などがそれだ。アマゾンの「ドラッグストア」売れ筋ランキングでも上位20商品は同様の洗剤が多くを占めることからも、この時期のトレンドと言っていいだろう。
家電部門:ダイソンの掃除機、シャープの空気清浄機
普段はちょっと手が出ない……価格帯の商品が多いダイソンだが、年末年始は財布の紐もゆるむ。家電量販店だけでなくネット通販でも人気。
出典:楽天市場サイトより編集部キャプチャ
次に「家電」部門。「家族が一堂に会する年末年始は、大物家電を買う決断がしやすい。家電量販店でも、この時期はお年玉セールなど毎年の書き入れ時です」(ネット通販関係者)と言うように、数万円、十数万円の買い物が集中する時期。
家族会議でいろいろ悩んだ末に……と思いきや、楽天市場の年末年始は2年連続、上位にほとんど動きがない。ダイソンの「サイクロン掃除機」全般、シャープの「加湿空気清浄機」、「脱毛器ケノン」。この3商品が鉄板だ。とりわけ、ダイソン製品は2016年末〜2017年始に上位20商品のうち3商品、2017年末〜2018年始に20商品のうち6商品を占めた。
ダイソンについては、お年玉シーズンといえども、必ずしも最新の上位機種が売れているわけではなく、実売価格5万円台の「V8 Fluffy」や、通販限定で3万円台の「DC62MO モーターヘッド」など、お手頃感のあるモデルが2年連続ランクインしている。シャープの加湿空気清浄機についても、ダイソンの掃除機と同様のことが言える。
総合:年末年始ランキング(ほぼ)2連覇は、なんとアレ
楽天市場やヤフーで実売7万円ながら圧倒的な支持を受けている「脱毛器ケノン」。本記事はその効果や性能を評価する趣旨ではないが、カニや育毛剤、空気清浄機を凌駕する実績を積み上げてきたことは間違いない。
出典:楽天市場サイトより編集部キャプチャ
ここまでご紹介した3つの部門で、圧倒的な存在感を誇るのは、カニ、リアップ、ダイソンだった。「総合」ランキングを見ると、この3商品はいずれもトップ20に入ってくる。そうした人気商品を押さえて、楽天市場の年末年始トップランキングをほぼ2年連続制したのは、「家電」の鉄板の一つとして挙げた「脱毛器ケノン」だ。
2016年末〜2017年始ではランキング第1位、2017年末〜2018年始は関ジャニ∞の初回限定盤DVD発売とバッティングしたにもかかわらず、第2位の座を確保した。
「SNSを通じて情報が爆発的に広がっています。インスタグラムでも数万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーの女の子が宣伝していて、『#ケノン』で検索するととんでもない数の投稿が出てきます。年末年始はお年玉をもらってふところが潤うので、バイト代を足して買う学生も多いと聞きます」(金融関連企業に勤務する20代女性)
年末年始に限らず、年間通じて売れ続ける大ベストセラー商品となっているようだ。
学生になってもお年玉をもらえるという事実にまずは驚いた記者だが、日本のネット通販大手の一角を占める楽天市場で、年末年始に最も売れる商品が、脱毛器、カニ、育毛剤、掃除機だったとは。この事実を知り、多少なりとも驚愕したのは記者だけではないのではないか。
さて、今年はどんな商品が売れるのか。いや、多少は予想できそうな気がする。
(文・川村力、データ協力・楽天)