子どもに何を与えるかで迷っている場合じゃない! アメリカの親たちが抱える、より大きな不安とは

親子

子どもには、自分よりいい人生を……と考える親は多い。

Michael H/Getty

  • ニューヨーク・タイムズによると、アメリカでは今、子育てにより多くの時間や労力、お金をかける親が多い。
  • これは、子どもには自分たちよりも経済的に恵まれた —— 最悪でも自分たちと同じくらいの —— 生活を送らせたいと親が願っているからだ。
  • 中でも1980年代生まれは、富の蓄積における「ロスト・ジェネレーション」になるリスクが最も高いと、セントルイス連邦準備銀行のレポートは指摘している。

アメリカでは今日、多くの親が少なくとも1つの目標を共有している —— 彼らは、子どもには自分たちよりもいい人生を送ってもらいたいと願っている。

子どもを経済的に豊かにすることもその一部だ。これがアメリカの「インテンシブ・ペアレンティング(intensive parenting)」とにつながっていると、ニューヨーク・タイムズが2018年12月に報じた

「ここ2、3世代で、親が子育てにかける時間、気遣い、お金は大きく増えた。仕事と家庭を両立させる母親は、1970年代の専業主婦が子どものために割いていたのと同じくらいの時間を自らの子どものために使っている」と、同紙のクレア・ケイン・ミラー(Claire Cain Miller)記者は書いている。

「親にとって、子どものために人生のベストなスタートを切らせるということは、子どもがより上の階級へ上がれる、もしくは少なくとも階級を落とさないよう、親にできること全てをするという意味になっている」とミラー記者は書いた。

メリルリンチのレポートによると、アメリカでは今日、子どもを18歳になるまで育てるのに、平均で23万ドル(約2500万円)かかっている。だが、出費はそこで終わらない。メリルリンチによると、79%の親が成人した子どもを経済的にサポートし続けていて、その額は全体で、年に5000億ドルに達すると見られている。

ニューヨーク・タイムズが2018年に実施した調査の結果、アメリカ人が子どもを持たない、もしくは理想よりも持つ子どもの数を減らす主な理由は「お金」であることが分かっている。

同紙の取材に応じた社会科学者たちは、「インテンシブ・ペアレンティング」の普及が、社会的地位を上昇させることは誰にでも可能だという「アメリカン・ドリーム」をつかむことが次第に難しくなりつつあるという現実に行き着くと指摘する。

「初めて、アメリカの子どもたちは親よりも裕福にはなれない可能性が高い」とミラー記者は書いた。親たちは、子どもの成功のために、その教育や課外活動にできるだけ投資する必要があると感じている。しかし、先立つものがない親たちの不安は高まるばかりだ。

今、最も一般的な子育ては「インテンシブ・ペアレンティング」

家庭と不平等の研究をしているメリーランド大学の社会学者フィリップ・コーエン(Philip Cohen)氏は、「富裕層と貧困層のギャップが大きくなるにつれ、失敗をするコストが高まっている」とニューヨーク・タイムズ語った。親たちは、子どもに人生の十分なアドバンテージを与えられないことを恐れていると、コーエン氏は指摘した。

アメリカでは1990年代以降、音楽のレッスンやスポーツクラブに通わせたり、家庭教師をつけるといった「インテンシブ・ペアレンティング」が白人の上位中流階級世帯の定番になっていると、ミラー記者は書いている。

そして、コーネル大学でジェンダーと不平等の研究をしている博士研究員のパトリック・イシヅカ(Patrick Ishizuka)氏が、アメリカの3642人の親を対象にその子育てについて調査したところ、教育、収入、人種に関係なく、親たちは「人任せにせず、最もお金のかかる選択がベストだ」と答えたことが分かったと、ミラー記者は書いた。

「インテンシブ・ペアレンティングはまさに、"子どもたちはこう育てるべき"という支配的な文化モデルになった」とイシヅカ氏はニューヨーク・タイムズに語った。

これには競争や「周りから後れを取らない」という側面もあり、親たちはさらに自分の子どもにお金をかけるようになる。メリルリンチのレポートによると、子どもが成長するにつれ、一般的に食べ物、服、テクノロジー、エンタメ、学校、移動、スポーツやその他の活動にかかるコストは増える。しかし、そのコストは必要以上に高くなりがちだ —— 調査した親の69%が、自分の子どもに何かを与えるとき、周りが持っているものが気になり、それがプレッシャーになると認めている。

Business Insiderが以前報じたように、1980年代に生まれたアメリカ人は、リーマン・ショックに端を発した深刻な景気後退の影響を受け、"社会的地位の上昇"の崩壊をじかに体験してきた。セントルイス連邦準備銀行が2018年に出したレポートによると、ミレニアル世代の中でも上の世代は、富の蓄積における「ロスト・ジェネレーション(失われた世代)」になるリスクが最も高いという。

[原文:American parents might be agonizing over their kids' piano lessons, soccer games, and SAT scores, but it's hiding a deeper anxiety]

(翻訳、編集:山口佳美)

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