ありがたい変化だ。
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- 世界中の多くの企業では、従業員は自らが最もパフォーマンスを発揮できる時間に合わせてスケジュールを調整できる。ニューヨーク・タイムズが伝えた。
- これは「クロノタイプ」と呼ばれ、朝型、夜型、あるいはその中間など、生物学的な体質を表す。
- だが専門家は、ほとんどの企業ではまだ、従業員全員を同じ時間帯に働かせ、難しい仕事を間違った時間帯に行わせており、そのことが成功を遠ざけていると指摘した。
ニューヨーク・タイムズは世界中の企業における最新トレンドを伝えた。
従業員は自らが最もパフォーマンスを発揮できる時間に合わせてスケジュールを調整できる、というトレンドだ。
コロラド大学ボルダー校の准教授で同大学の概日リズム・睡眠疫学研究所(circadian and sleep epidemiology lab)のディレクター、セリーヌ・ヴェッター(Céline Vetter)氏は、80%もの人々の就業時間は体内時計に合っていないとニューヨーク・タイムズに語った。
体内時計は「クロノタイプ」と呼ばれ、朝型、夜型、あるいはその中間など、生物学的な体質を表す。
クロノバイオロジー(時間生物学)が研究されるようになってしばらく経つが、最近はより多くの関心を集めるようになった。
例えば、心理学者で睡眠の専門家、マイケル・ブレウス(Michael Breus)博士は著書『The Power of When』で、さまざまなクロノタイプを4つに分類した。イルカ、ライオン、クマ、オオカミだ。
ブレウス博士によると、人口の約半数はクマに分類され、体内時計は日の出と日の入りに合わせて動き、夜は8時間しっかり寝る必要がある。
自分のクロノタイプが就業時間に合っているかどうかを知りたいなら、シンプルな質問で分かる。
起きる時にアラーム時計を使っているかどうか? もし使っているなら、「体質と合っていない」とニューヨーク・タイムズは記した。
従業員がみな同じ厳密な就業時間で働く企業では、つらい思いをしている人もいるだろう。
だが多くの企業は、仕事のパフォーマンスにおけるクロノタイプの重要性を理解し始めており、従業員に自身のクロノタイプを知るよう勧めている。
例えばニューヨーク・タイムズは、ドイツの鉄鋼・工業製品メーカー、ティッセンクルップ(ThyssenKrupp)はクロノタイプに基づいてシフトを組んでいると記した。
研究者によると、同社の従業員はより長い(そして質の高い)睡眠時間を確保している。
また製薬企業アッヴィ(AbbVie)のデンマークオフィスでは、難しい仕事をするのは何時が良いかを見極めるために9時間にわたるトレーニングを受ける。そしてその結果に従って、各自の就業時間を設定している。
ほとんどの企業はクロノバイオロジーの捉え方が間違っている
だが、こうした取り組みはまだ一般的ではない。
実際、2014年にJournal of Applied Psychologyに掲載された論文によると、企業のマネージャーは一般的に朝型の従業員を好ましく感じる。
つまり、職場に早く来る従業員は一般的に誠実と見なされ、遅く来る従業員よりも高く評価される ── 早く来て、早く帰ったとしても。
ワシントン大学フォスター・スクール・オブ・ビジネスの准教授、クリストファー・M・バーンズ(Christopher M. Barnes)氏は2015年、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に、ほとんどの企業はクロノバイオロジーの捉え方が間違っていると記した。
「多くの従業員は午前中ずっと、多くのメールの返信などに追われ、それはランチまで続く。ランチから戻ってきた頃にはすでに集中力の最初のピークは過ぎている」
バーンズ氏は、ほとんどの人にとって集中力とエネルギーのピークは午前中の半ばに来ると述べた。
また、2017年に「Academy of Management Review」に掲載された論文は、ビジネスにおける「クロノタイプの多様性」、つまり、朝型の人と夜型の人が混在するグループのポテンシャルに注目した。
さらに論文では、仕事の性質によってクロノタイプの多様性はプラスにもマイナスにもなり得ると指摘。ニューヨーク・タイムズは、同じ時間に集中力を発揮しないといけない手術チームと、誰かが常に集中している必要がある原子力発電所のチームを比較した。
確かに、クロノタイプの多様性が果たす役割について明確に意識していない組織でさえ、柔軟なスケジュールのあり方を支持するだろう。
例えば、アプリ制作を手がける37シグナルズ(37signals)は、従業員は自分にとって最適な場所や時間で仕事できる。自分の仕事をしっかりやり遂げている限り。
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)